連合本部の労働相談に「内定取消」された学生からの相談が増えてきた模様だ。
まだ連合静岡にはそういう相談が寄せられてはいないが、その問題について考えてみた。
企業が新卒者を採用する場合、1年以上前から選考を行い「卒業後に採用する」という合意をして、採用内定通知を出す。
(その選考時期があまりに早いので“青田刈り”などと批判された時代もあった)
翌春の卒業を待って正式に採用し入社させるのだが、今回は急激な景気悪化を受けて「内定取消」のトラブルが多発しているらしい。
この際に争われるのは採用内定から入社までの労働者(学生)の地位についいてである。
「採用内定」が労働契約以前の関係なのか、それとも「採用内定」は労働契約があったと解釈するかの違いである。
法的には当事者の意思や、従来からの慣行によって定まるとされているが、裁判などで争われた場合には具体的な個々の事情、採用内定通知の文言、会社の就業規則などで定められている採用手続きに関する定めなどにより総合的に判断されるという。
企業側の論理に立てば、「採用内定」は採用手続きの一部であり、やむを得ないときには「内定取消」が認められるべきだと主張する。
一方、労働者側は「採用内定」は労働契約の締結そのものであり、内定によって労働契約の効力が生ずるとして「内定取消」はすなわち解雇であり、解雇権制限の法理を適用すべきと主張する。
「内定取消」事件の裁判例として“大日本印刷事件(S54)”がある。
下級審では分かれていたが最高裁で、「解雇権を留保した労働契約が成立していた」との判決が下された。
その後の“日本電信電話公社事件(S55)”においても同様の判決だった。
しかし実際にこの問題が発生したときどう対応するかは非常に難しい。
交渉によって「内定取消」を撤回させるのか、それとも「賠償金」を請求するのか。
相談者(学生)にとってはこれから一生働くかもしれない企業との関係である。
あまり揉め事にすることも考えものだ。
さりとてこの時期に採用を取り消されたら、新しい就職先を探すことは難しい。
わずかばかりの賠償金をもらってもなんの足しにもならない。
連合本部や民主党などがこの問題について大きく取り上げて警鐘を鳴らし、「内定取消」企業を公表するような対応策を講じてもらいたい。
そうなれば安易な「内定取消」は出来ないだろう。
「内定取消」も大きな問題だが、これから数年は続くであろう就職氷河期を考えると早急に労働者派遣法を見直さねばならない。
景気はいつかは必ず回復するが、その時に今のような不安定労働者を増やしてはならない。
たとえ賃金がダウンしても法定労働時間を週40時間から35時間に短縮して、日本全体でワークシェアリングを行い、正規雇用を原則とする労働法制にChangeするような大胆な政治決断を期待したい。