認知症の早期診断 介護並びに回復と予防のシステム

アルツハイマー型認知症は、廃用症候群に属する老化・廃用型の生活習慣病なので、発病を予防でき、早期治療により治せるのです

ナイナイ尽くしの単調な生活が始まる「キッカケ」(A-32)

2012-04-25 | アルツハイマー型認知症の原因

第一の人生を自分なりに頑張って生きてきて、第二の人生に入っていきます。何事も起きてこなければ、脳は「正常な老化のカーブ」を描きながら、それなりに目標がある生活を送る中で、生きがいや喜びが得られる日が時々はあり、静かに毎日が過ぎて行くはずなのです。そうした平穏で安定した日々を過ごしているお年寄りが、知らず知らずのうちに脳の老化を加速させていき、「アルツハイマー型認知症」を発病する訳ではないのです。この点がとても重要なのです。

「加齢による脳の老化」という「アルツハイマー型認知症」発病の(第一の要件)は第二の人生を送っているお年寄り全員に共通のものなのですが、ナイナイ尽くしの「単調な生活」の継続という(第二の要件)は「アルツハイマー型認知症」を発病するお年寄りだけに特有なものなのです。

      

私たちの「二段階方式」を活用するときは、「アルツハイマー型認知症」を発病した「小ボケ」及び「中ボケ」レベルのお年寄りたちの全員を対象として、発病の前後の期間の数年間についてどのような脳の使い方をしてきたのか、言い換えるとどのような「生活習慣」のもとで毎日を過ごしてきたのかという「生活歴」を、本人とその家族から必ず聞き取ることが様式化されています。なお、「アルツハイマー型認知症」を発病する「キッカケ」となった「生活状況」の発生時期と単調な生活が継続した期間については、本人の現在の脳の機能レベル及びMMSの下位項目のデータ並びに「脳の老化のスピード差」(N-34)の指標から明確に特定されるので、それを基礎として聞き取りを行います。この場合、脳の機能レベルが「中ボケ」だと、現在の自分の状況(「中ボケ」レベルの生活の自立度)に対する認識さえないので、家族からの聞き取りが不可欠となります。

脳は正常な老化のカーブを描きながら、それなりに目標がある生活を送る中で、生きがいや喜びが得られる日が時々はあり、静かに毎日が過ぎて行く。そんな第二の人生を過ごしているお年寄りが、脳の老化を速める原因となるナイナイ尽くしの「単調な生活」が始まる「キッカケ」となる「生活状況」の発生に遭遇することになるのです。「アルツハイマー型認知症」を発病した極めて多数のお年寄りを対象とする「生活歴」の聞き取りの結果、脳の老化を加速させる原因となるナイナイ尽くしの「単調な生活」が始まるには、発病した全員について、「キッカケ」となる「生活状況」の発生が必ず存在することが確認されたのです。但し、或る「生活状況」の発生が「単調な生活」が始まる「キッカケ」となるかどうかは、遭遇した「生活状況」に対する「本人の受け止め方次第」だということに注意が必要です。

     

脳の老化を速めるナイナイ尽くしの「単調な生活」が始まる「キッカケ」となる「生活状況」の発生とは、どんなことを言うのか。要約すると、次の2点に集約されます。分かりやすくするために、ここでは典型的な事例をとりあえず3例ずつ挙げておきます。

1.  生きる意欲を支えてきた「核となる生活」が継続できなくなってしまうこと

○ 趣味も遊びも交友もなく、仕事一筋の人生を送ってきた人の「定年退職」

○ 趣味だけが生き甲斐の人が、その「趣味を中止」せざるを得なくなること

○ 親や兄弟、子や孫、友人、ペットなど大事な人や動物との「別離」

2.  生きる意欲をなくしてしまうような「問題や状況」が発生し継続されること

○ 自身の重い病気や大きなけがなど肉体的精神的に「困難な状況」

○ 子供の失業や借金問題、孫の不登校など家庭内の「重大な問題」

○ 夫(妻)が重度の認知症や重い病気を患い、「介護に追われるだけ」の毎日

         

同じような「生活状況」が発生しても、状況の発生に対する個人ひとりひとりの受け止め方が異なるので、「生活状況」発生後の「生活習慣」(日々の脳の使い方)は、それぞれに違うのです。或る人は、「生活状況」の発生が「キッカケ」となって、ナイナイ尽くしの「単調な生活」が始まるのに対し、或る人は「生活状況」の発生があっても「キッカケ」とはならないで、日々の生活をそれなりに楽しんでいくことができるのです。このことは、以下の例示のように、具体的に考えると理解しやすいと思います。

「定年退職」で仕事を取り上げられてすることもなくなり、3年もたつと見る影もなく衰えボケてしまう人もいれば(この段階では、未だ「小ボケ」)、「定年退職」で自由な時間がいっぱいできたのをきっかけに、自分なりに趣味や遊びや人づきあいを楽しんで、生き生きと生活していく人もいます。或いは、世間でよく言われるように、「夫を亡くしたおばあさん」は半年もたつと楽しげに生活をエンジョイするようになることが多いのに対し、同じように「妻を亡くしたおじいさん」の多くは次第に元気をなくしていきます。

上述の「生活状況」が発生しても従来どおり生活をそれなりに楽しめて元気を失わない人と、「生活状況」の発生を契機に生活を楽しめなくなり元気をなくしていく人との違いを生じさせる「理由」を理解するためには、「生活状況」が発生した前後数年間のその人の「生活習慣」(脳の使い方)を、その人の目線に沿って、具体的にチェックしてみる必要があります。前者と後者とを分けるキーポイントは、発生した「生活状況」を当の本人がどのように「受け止めたのか」にあるからです。どのような「受け止め方」が、それなりに「生き甲斐や目標」があって楽しめる生活から、ナイナイ尽くしの「単調な生活」へと「生活習慣」を変化させることになるのかを理解することが、指導する「生活改善」の内容を組み立てる上で大切なのです。

       

「アルツハイマー型認知症」を発病することになるかならないか、それは「生活状況」の発生に対する「本人の受け止め方」次第ということになるのです。

人生の大きな出来ごとの発生や生活環境の大きな変化という「生活状況」の発生に対して;

1. 「大きな障害」と受け止めて負けてしまい、そのため意欲をなくしてしまって、「目標」となるものがなくなり、「前頭葉」を使う場面が極端に減った生活に変わってしまった(「キッカケ」になった人);又は

2. 「大きな障害」と受け止めず負けないで、そのため意欲を失わず、「目標」となるものがあるので、「前頭葉」を使う場面がそれなりにある生活が従来通り継続している(「キッカケ」にはならなかった人)のです。

これまでの説明で理解していただけていると思いますが、「アルツハイマー型認知症」の発病を回避するには、ナイナイ尽くしの「単調な生活の継続」という第二の要件の充足を回避しなければならないのです。

第二の要件の充足を回避するには、上述した事例に見るような「生活状況」が発生した時、その「生活状況」に本人が負けないことが必要不可欠となるのです。「アルツハイマー型認知症」の発病を左右する直接の原因は、脳の委縮でも、アミロイドベータでもタウタンパクでもないのです。その時遭遇した「生活状況」を「キッカケ」として、ナイナイ尽くしの「単調な生活」に入っていったことが原因となるのです。

第二の人生を送っているお年寄りは、このことを深く心に留めておいて欲しいのです。「生活状況」の発生に遭遇した時は、その状況に対して自分が取るべき脳の使い方(「生活習慣」)に十分注意して欲しいのです。ナイナイ尽くしの「単調な生活」が始まる「キッカケ」とならないよう、是非とも頑張って欲しいのです。本人の頑張り、踏ん張りが第一なのですが、家族からの支えも必要なことは言うまでもありません。

注)本著作物(このブログA-32に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

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