Hobo's File by KINO

道の向こうへ歩いて行けば 違った空が見えてくるんです

空の下の違った風景を見ていたら 色々感ずることもあるんです

旅人のバイブル

2020-04-12 13:59:00 | 
小説を一休みして蔵書の中から沢木耕太郎の「旅する力 深夜特急ノート」を読了。
沢木の書いた「深夜特急」は言わずと知れた旅人のバイブルとして長く親しまれている。
ワタシも何時読んだのかははっきりしないが、かなり影響を受けている。
マカオのリスボア・ホテルのカジノでは大小ではないがブラックジャックを楽しみ、
今年カリフォルニアへ行った時の旅日記に「ワレ カリフォルニア オ ホクジョウセヨ」と
記したのも彼のエッセイ集「一号線を北上せよ」が頭の隅にあったからに違いない。
この本は「深夜特急」の副読本的に後日出されたもので、旅に至る自伝的意味合いもある。
ワタシより11歳年上の沢木は26歳の時に旅立ち1年ほど旅を続けている。
1986年に最初の2冊が刊行され、3冊目を6年後の1992年に刊行して完結した。
ワタシが初渡米したのが20歳の1978年で約40日、2年後に再渡米して30日程旅している。
従って「深夜特急」は社会人になってから読んだのだろう。
その前の旅人のバイブルは小田実の「何でも見てやろう」で、これも読んでいるのだが
ほとんど印象に残ってはいない。その当時の自分とシンクロする所が少なかったに違いない。
「深夜特急」はャ泣gガルで終えているが、実際にはゴールとしていたロンドンへ向かい、
その後オランダやドイツも訪れ、パリから帰国している。
この「旅する力」にもその辺りの記述がある。他人名義の安いアエロフロートの片道切符を買い、
ウェイティングの最後で搭乗できたが、その後の3人の日本人は乗れなかったと。
それが何と藤圭子だった。沢木は藤が引退の際にインタビューし、本になるはずだったが、
それが世に出たのは藤が自死を選んだ後だった。「流星ひとつ」も興味深く読んだものだ。
鈴木カツさんが女子医大に入院した際、お見舞いとして数冊の本を持って行ったが、
その中の一冊が「流星ひとつ」だった。
「ありがとう、借りておくよ」というのが、結局はカツさんとの最後の会話になってしまった。
その本が返って来る事はなかったが、最初から進呈するつもりだったので問題はない。
ただそんな事があったことを思い出させてくれた。

「旅もまた思いもよらないことが起きる可能性のある場のひとつなのだ。
それに対処していくことによって、少しずつその人の背丈が高くなっていき、
旅する力が増していくように思われる。」

「目的地に着くことよりも、そこに吹いている風を、流れている水を、
降りそそいでいる光を、そして行き交う人をどう感受できたかということの方が
はるかに大切なのです。」

沢木の言葉は今でもワタシを勇気づけてくれる。


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