
クロアチア旅行から2ヵ月が過ぎて、既に記憶もアヤフヤになりつつあるが、
未だに何となく気に掛かる一人の青年がいる。
旅の5日目、イストラ半島の街リエカで見かけた20代後半くらいの青年だった。
普段は朝寝坊の私だが、旅に出ると早起きしホテル周辺を散策するのが楽しみ。
その朝も一人で早々と散策に出掛けた。リエカ・ボナヴィアホテルは街の中心地、
繁華街にも港にも近い最高の立地条件だった。首都ザグレブ、国際港湾都市の
スプリットに次ぐ大きな街で、造船業や交易、観光が主な産業とのことだった。

まだシャッターが開いていない街通りのショーウインドーを覗いたり、コンビニを
ウォッチング。人の姿も疎らな通りを写していると、小路から一人の青年が出てきた。
出勤途中でも無さそうだし、観光客の街歩きでも無さそう。
小さなショルダーバッグを肩に白いビニール袋を提げて、所在なさげに歩いている。
すれ違いざま、私を見て何か用ありげな顔で近寄ってきたのでドッキリ

私、道を尋ねられたって分かんないよぉ

その青年は、私の後ろから歩いて来た中年男性に声を掛けた。
難を逃れた

通り過ぎたが、考え直したふうに足を止めポケットから何かを出して青年に与えた。
幾許かの小銭だったのだろう。青年は表情も変えずそれを受け取り、また歩き出した。
ただそれだけの光景だが、浮かれた気持ちで観光地の朝を楽しんでいた私は厳しい
現実に少したじろいてしまった。
以前にイタリアやモロッコでも見掛けたことはあったが、人々に喜捨を求めていたのは
ジプシー母子だったり老女だったので、若い青年の姿は意外だった。
旅の途中で旅費が尽きたのかも知れない。失業中のクロアチア青年かも知れない。
たまたまカメラに写っていたあの若者は、今頃どうしているのだろうか…。
時折り頭をよぎるリエカの、ちょっと切ない思い出の一コマです。
普段は見過ごしてしまう些細な出来事が、いつまでも気に掛かるのは
多分に旅情って心理状態が、プラスされているからでしょうね。
あの青年が心から離れないのは、同じ異郷にあって難儀している風に思えたから…
でも不思議なものですね、そんなことが何時までも忘れられないとは…。
今頃は何処かで元気にやっていることを、遥かに祈ることにしましょう。
でも、あの時のドッキリ
これって私の優しさ