Light in June

文学やアニメ、毎日の生活についての日記。

「メロスって馬鹿じゃん?」

2013-08-02 02:01:57 | アニメーション
EL EMPLEO / THE EMPLOYMENT - OPUSBOU


このアニメーションを見て、人がどのように感じようがぼくの知ったこっちゃないはずなんだけども、でも「自分は使われる側よりも使う側になりたい」というような感想を目にすると、一種の絶望に陥る。

先の選挙で国民は「原発」や「憲法改変」よりも「経済」を選んだという事実。

かつて教職課程の授業でこんな話を聞いたことがありました。中学の授業で『走れメロス』を読むと、クラスに必ず一人は「メロスって馬鹿じゃん?」と言い出す生徒がいると。

漫画『ナウシカ』において、皇弟ミラルパはいつまでも愚かなままでいる土民たちをやがて憎むようになったと、皇兄ナムリスは語ります。

先日テレビ番組に、現行の憲法は日本人が作成したものではないからよろしくない、(日本人の作った)大日本国憲法の方がむしろ望ましいと真顔で話す一般人が出演していました。

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頭がよく優秀である人ほど、人間の能力など大したことはないのだ、才能の個人差など些細なものだ、と言って諦観しているものです。しかしぼくには、人間の能力は個人差が非常に大きいという気がしてなりません。

「メロスって馬鹿じゃん?」と言う生徒をいかに「指導」すべきか。どのような感想・主張をも許容する、解釈の多様性という話を出したりすれば、あるいは少数者の意見を掬い取るべきだという話に耳を傾けたりすれば、「教育」は立ち行かない。「メロスって馬鹿じゃん?」という考えに至った思考回路を分析して、その誤りを正すこと。・・・ぼくには、それはできななかった。自分が尊大にも生徒に「正しい」知識を教え、彼らをよき方向に導こうとする意思はない。少数意見も含めて多様な考えを多様なまま伸ばすことができればいい、そう考えていた。

けれども、それは理想論だ。信じられないくらい優れた人間がいるということは、その逆も然りということではないか。途方もない無知、恐るべき愚昧。

このアニメーションのテーマを端的に言葉で表現できる人はきっと頭がいい。できない人は愚かだと自覚した方がいい。しかしながら、頭が切れることが必ずしもよいとは限らないとも思う。むしろ、愚かである方がより多くのものを感じ取っているかもしれない。問題は、端的な言葉で愚かしい内容を表現してしまう人だ。

感想に正解はない。でもある種の感想を目にすると、ひどく気が滅入ってしまう。

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本当は今回の記事のようなことは書かない方がよいのでしょうけれども、ひどく衝撃を受けたので、思い切って開陳してみました。