記念すべきディズニー長編第一作にして、世界アニメーション史上カラー長編第一作。ちなみに長編アニメーション第一作は1926年の『アクメッド王子の冒険』(ロッテ・ライニガー監督)。『白雪姫』は1937年です。カラーで且つ長編のアニメーションとしては『白雪姫』世界初だったということです。よく『白雪姫』は世界初の長編アニメーションだと勘違いをしている人がいるので、お間違えのなきよう。
ご存知『白雪姫』のストーリー。
白雪様がそのあまりの美しさゆえに継母である女王の嫉妬を買い、毒リンゴで眠らされてしまうが、やがて王子様のキスで目を覚まし、王子様といつまでもいつまでも幸せに暮らしましたとさ、というお話。
こんな単純な話で80分強ももたせます。映画の主な舞台となるのはドワーフの家。白雪姫が女王の魔手から逃れ、森の中で動物たちに案内されて見つけたのが7人のドワーフたちの家です。その家はものすごく汚れていて、蜘蛛の巣、ほこり、ほったらかしの食器、と今まで誰も片付けたことがないかのようなところなのですが、白雪姫はこの家にはお母さんがいなくて、子供たちばかりが暮らしているのだと思い込んで、勝手に掃除を始めます。家が小さかったので、子供たちが住んでいるのだと思ったわけですね。リスや亀や小鳥などと一緒に部屋をきれいに掃除するのですが、この描写が異常に長い。
やがてドワーフたちが仕事から引き上げてきます。あの有名な歌「ハイ・ホー」を歌いながら。♪ハイ・ホー、ハイ・ホー、仕事が好き…。彼らは部屋がきれいに片付いているのに仰天し、怪物が二階で寝ているのだと思い込みます。わざわざ人の家をきれいにする怪物なんて、おかしいですけどね。それはそうと、二階で眠っている白雪姫を見つけて、すっかり仲良くなってしまうドワーフたちと白雪姫。白雪姫はドワーフたちに食事を作ってやり、食べる前に手を洗いなさいと言いつけるのだが、今まで手なんて洗ったことのないドワーフたちは反対して、でも結局洗うことになり、そして食後は歌とダンス。この過程がもうドンちゃん騒ぎで、やっぱり異常に描写が長い。
女王が老女に変身して白雪姫に毒リンゴを食べさせてからは、あれよあれよという間に話は進みます。仕事に出かけたドワーフたちは、危険を察知した動物たちに家へ引き戻されます。老女が白雪姫に毒リンゴを勧めるシーンと動物の背に乗ったドワーフたちが家に急ぐシーンとが交互に挿入され、緊迫感を高めます。老女は仕事を済ませた後、家の前でドワーフたちに見つかり、崖の上まで追いつめられ、落雷のショックでそこから転落します。眠り続ける白雪姫をドワーフたちはガラスの棺に納めて時が過ぎてゆく…というナレーション。やがて王子がやってきて、白雪姫は目覚めます。再びナレーションが入り、終幕。いつまでも幸せに暮らしましたとさ。
どう考えても、物語の進行の時間配分がアンバランス。たぶん普通の作劇法であれば、ドワーフの家での描写(掃除をしたり手を洗ったり)はもっともっと削減されるはずです。変わりに重きを置かれるのは王子の描写。白雪姫が眠りについた後、主役の座をいったん王子に譲り、彼にカメラを合わせるはずです。彼が白雪姫に恋焦がれていること、白雪姫が眠りについているとの情報を知るところ、それから白雪姫の元へ馳せ参じるまでの旅、そうしたくさぐさを描写するはずです。しかし、それがない。その理由の一つはたぶん王子のアニメートが困難だったからでしょう。特典映像で語られていましたが、男性のアニメートの困難さゆえに王子パートはかなり削られたそうです。白雪姫が眠りについた後の「王子編」が存在しないのは、そういった事情があったからかもしれません。
現在の商業映画で見られるようなハイ・テンポなストーリ展開は『白雪姫』にはありません。だから今の観客は飽きてしまう可能性もあります。それに、どうせ誰でもよく知っている話です。では、どこを楽しむべきか。恐らく、白雪姫とドワーフのアニメーション表現です。分かりやすく言えば、「動きのおもしろさ」です。本当に奔放な動きをする、少し滑稽なドワーフたちと、滑らかで優雅な白雪姫。そのアニメーションは、いま見ても古びていないどころか、アニメーターの目標足りえています。すごいですね。
ところで、この映画にはのろまな愛すべき亀が登場しますが、これは手塚治虫の漫画に登場するやつとそっくりです。ディズニーファンだった手塚治虫はここから採ったのですね。彼の未完のアニメーション『森の伝説』などを観るとその影響は明らかですが。
1937年にこれほどの技術があったというのは正直驚きです。その頃の日本のアニメーションなんて、ほんとにつまらないものが多かったですからね。観るのにはかなりの忍耐を要しましたよ。かつて、確かにディズニーは偉大だったのでしょう。完全に群を抜いており、圧倒的ですね、これは。
特に感心した点。
1、鏡の主(?)の表情。炎がめらめらと鏡の中で燃え上がり、緑色の不気味な仮面のような顔が現れて、真実を告げる。あのゆらめき、CGがないのにすごい。
2、井戸の底から白雪姫を撮るカット。意表をつくカットですね。それに溜まった水の表現が秀逸で、水溜りなどもそうなのですが、じんわりとやはりゆらめいている。ああいうのは特殊な撮影技法で出せるのかな?専門家の解説を聞きたいところ。
ご存知『白雪姫』のストーリー。
白雪様がそのあまりの美しさゆえに継母である女王の嫉妬を買い、毒リンゴで眠らされてしまうが、やがて王子様のキスで目を覚まし、王子様といつまでもいつまでも幸せに暮らしましたとさ、というお話。
こんな単純な話で80分強ももたせます。映画の主な舞台となるのはドワーフの家。白雪姫が女王の魔手から逃れ、森の中で動物たちに案内されて見つけたのが7人のドワーフたちの家です。その家はものすごく汚れていて、蜘蛛の巣、ほこり、ほったらかしの食器、と今まで誰も片付けたことがないかのようなところなのですが、白雪姫はこの家にはお母さんがいなくて、子供たちばかりが暮らしているのだと思い込んで、勝手に掃除を始めます。家が小さかったので、子供たちが住んでいるのだと思ったわけですね。リスや亀や小鳥などと一緒に部屋をきれいに掃除するのですが、この描写が異常に長い。
やがてドワーフたちが仕事から引き上げてきます。あの有名な歌「ハイ・ホー」を歌いながら。♪ハイ・ホー、ハイ・ホー、仕事が好き…。彼らは部屋がきれいに片付いているのに仰天し、怪物が二階で寝ているのだと思い込みます。わざわざ人の家をきれいにする怪物なんて、おかしいですけどね。それはそうと、二階で眠っている白雪姫を見つけて、すっかり仲良くなってしまうドワーフたちと白雪姫。白雪姫はドワーフたちに食事を作ってやり、食べる前に手を洗いなさいと言いつけるのだが、今まで手なんて洗ったことのないドワーフたちは反対して、でも結局洗うことになり、そして食後は歌とダンス。この過程がもうドンちゃん騒ぎで、やっぱり異常に描写が長い。
女王が老女に変身して白雪姫に毒リンゴを食べさせてからは、あれよあれよという間に話は進みます。仕事に出かけたドワーフたちは、危険を察知した動物たちに家へ引き戻されます。老女が白雪姫に毒リンゴを勧めるシーンと動物の背に乗ったドワーフたちが家に急ぐシーンとが交互に挿入され、緊迫感を高めます。老女は仕事を済ませた後、家の前でドワーフたちに見つかり、崖の上まで追いつめられ、落雷のショックでそこから転落します。眠り続ける白雪姫をドワーフたちはガラスの棺に納めて時が過ぎてゆく…というナレーション。やがて王子がやってきて、白雪姫は目覚めます。再びナレーションが入り、終幕。いつまでも幸せに暮らしましたとさ。
どう考えても、物語の進行の時間配分がアンバランス。たぶん普通の作劇法であれば、ドワーフの家での描写(掃除をしたり手を洗ったり)はもっともっと削減されるはずです。変わりに重きを置かれるのは王子の描写。白雪姫が眠りについた後、主役の座をいったん王子に譲り、彼にカメラを合わせるはずです。彼が白雪姫に恋焦がれていること、白雪姫が眠りについているとの情報を知るところ、それから白雪姫の元へ馳せ参じるまでの旅、そうしたくさぐさを描写するはずです。しかし、それがない。その理由の一つはたぶん王子のアニメートが困難だったからでしょう。特典映像で語られていましたが、男性のアニメートの困難さゆえに王子パートはかなり削られたそうです。白雪姫が眠りについた後の「王子編」が存在しないのは、そういった事情があったからかもしれません。
現在の商業映画で見られるようなハイ・テンポなストーリ展開は『白雪姫』にはありません。だから今の観客は飽きてしまう可能性もあります。それに、どうせ誰でもよく知っている話です。では、どこを楽しむべきか。恐らく、白雪姫とドワーフのアニメーション表現です。分かりやすく言えば、「動きのおもしろさ」です。本当に奔放な動きをする、少し滑稽なドワーフたちと、滑らかで優雅な白雪姫。そのアニメーションは、いま見ても古びていないどころか、アニメーターの目標足りえています。すごいですね。
ところで、この映画にはのろまな愛すべき亀が登場しますが、これは手塚治虫の漫画に登場するやつとそっくりです。ディズニーファンだった手塚治虫はここから採ったのですね。彼の未完のアニメーション『森の伝説』などを観るとその影響は明らかですが。
1937年にこれほどの技術があったというのは正直驚きです。その頃の日本のアニメーションなんて、ほんとにつまらないものが多かったですからね。観るのにはかなりの忍耐を要しましたよ。かつて、確かにディズニーは偉大だったのでしょう。完全に群を抜いており、圧倒的ですね、これは。
特に感心した点。
1、鏡の主(?)の表情。炎がめらめらと鏡の中で燃え上がり、緑色の不気味な仮面のような顔が現れて、真実を告げる。あのゆらめき、CGがないのにすごい。
2、井戸の底から白雪姫を撮るカット。意表をつくカットですね。それに溜まった水の表現が秀逸で、水溜りなどもそうなのですが、じんわりとやはりゆらめいている。ああいうのは特殊な撮影技法で出せるのかな?専門家の解説を聞きたいところ。