一身二生 「65年の人生と、これからの20年の人生をべつの形で生きてみたい。」

「一身にして二生を経るが如く、一人にして両身あるが如し」

スワンの恋

2018年09月22日 | 社会
19世紀の末、美術に造詣の深いスワン(ジェレミー・アイアンズ)は、ユダヤ人株式仲買人の息子で社交界の花形的存在である。彼は、ある瞬間から一人の女性への恋の妄想にとりつかれていた。馬車の上で、その女性オデット(オルネラ・ムーティ)が胸につけていたカトレアの花を直すために彼女に触れた瞬間から彼女にとりつかれたのだ。それまで彼の日常の全てだった音楽会、サロンでの時間も今は関心をひかない。音楽会が催されたゲルマント公爵(ジャック・ブーデ)の家を訪れた彼は、親しい友人シャルリュス男爵(アラン・ドロン)に、早速、オデットの様子を聞いた。昨日は、彼女はシャルリュスと一緒だったのだ。男色家の彼となら何の心配もいらない。演奏が終わりに近づいた時、帰ろうとしたスワンは、そのヴァイオリンの音色にめまいを覚えた。ジャッキー・クラブのあるバガテルへオデットを迎えに行くと、彼女はフォルシュヴィル子爵(ジュフロワ・トリー)と共に現われた。オデットは、実は高級娼婦なのだ。彼女と共にラ・ペルーズ街の彼女の家に行くと、明らかに女衒と判る女性が彼女を待っていた。オデットを待つ間、スワンは胸の中で、彼女が女性と関係したことがあるのだろうかと自問した。そして、そのことをオデットに追求する。意味ありげな笑みをもらし「二度、三度、ずっと昔に…」と答える彼女。やがて、スワンは匿名の手紙を受けとった。それは、オデットの素姓を知りたければブドゥルー6番街に住むクロエを訪ねなさいというものだった。クロエを訪ねたスワンは、しかし何も聞き出せずに邸に戻った。そして、初めてオデットがやって来た日のことを想い出していた。ボッティチェリの版画に描かれているゼフォラの像に似た、そのオデットの姿を……。オペラがはねる頃、ヴェルデュラン夫妻(ジャン・ルイ・リシャール、マリー・クリスチーヌ・バロー)と共にオペラ座に出かけたオデットの姿はなく、やっと捜しあてたレストランでは、彼女はフォルシュヴィル子爵と一緒であった。さらに帰り際、オデットは、フォルシュヴィルの馬車に乗り込んでいった。スワンが苦悩をつのらせて、カルーセル凱旋門近くを馬車で通り過ぎる頃、若いユダヤ青年に捨てられたシャルリュス男爵と出くわす。シャルリュスと別れたスワンは、いつの間にかラ・ペルーズ街へ来ていた。ついにオデットを腕の中に抱くスワン。翌朝、スワンは、彼を訪れたシャルリュスに、もう心がオデットから離れたことを告げた。それから、十数年後、シャルリュスと共にベンチにすわるスワンに、誇らしげに歩み寄る女性がいた。今はスワン夫人となったオデットであった。