バイオマス発電事業への進出(1)
2003年の初頭から、徐々にそれまでの省エネESCOから、会社を一層発展させるため、新しい動きを開始した。FESCOの企業理念である「環境と経済の両立する社会づくりへの貢献」を前提として、その理念実現のためには、FESCOは「総合エネルギーサービス会社」を目指すという新しい「企業ビジョン」を打ち出した。
このビジョンは、以下の3つの柱から構成している。①デマンドサイドESCO、②サプライサイドESCO、③トレーディングESCOの3つである。①は、創業来進めてきた省エネESCOであり、これは顧客(需要家)を対象としたビジネスモデルであり、デマンドサイドESCOである。
ここで新しく②のサプライサイドESCOとしたのは、エネルギー供給側に立ったビジネスモデルということであり、端的に言えば、発電事業である。
ただし、単に発電事業と言っても、信用力や資金力に乏しいベンチャー企業に何ができるか。そこで出された発想が、「グリーンエナジー」である。
さっそく、グリーンという付加価値を伴った事業分野で何ができるか検討するために、「グリーンエナジー事業部」を創設し、そこから出された新たな構想が「GEI(Green Energy Initiative)構想」というもの。
この構想によって、FESCOにおける第二の事業の柱を創りたい。そして、総合エネルギーサービス企業への第一歩を踏み出したいと願ったのであった。その時代背景には、国がRPS法というグリーン電力へのプレミアムを認める法律を制定したことも、背中を押してくれた。
この構想を発表した時、FESCO社内での反応を今でもはっきりと記憶している。特に、既存の省エネESCO事業を担当していた人間は、極めて懐疑的かつ冷やかなものであった。
そこで私は社長として、ベンチャー企業とは何たるかという趣旨の次のようなメッセージを全社に発信し、全社員を鼓舞したのである。
ベンチャースピリットとは何でしょうか?「道無き道を進むこと」「暗闇にも臆せず、手探りでもとにかく前に進むこと」「困難なことや大きな壁にひるまず果敢に乗り越えようと挑戦すること」などなど、いろいろな表現ができますが、一言で言えば「変革への意志」である。私はFESCOが存続する限り、「ベンチャー企業」で在り続けたいと願っているので、理解と協力をして欲しいと。
私は今でもこの時の社長としての決断は、間違っていなかったと信じている。しかし、今だからそこ言えることでもあるが、企業がそれまでの事業領域を拡大する時には、単にベンチャースピリットという威勢の良い掛け声だけでは駄目であり、そこには向かおうとしている新領域におけるビジネスリスクというものをもっと真剣に検討すべきであったと反省している。
顧客の存在するビジネスモデルと、自らが供給者となるビジネスモデルでは、まったく事業のリスク要因が異なっており、それら両方を進めるということが、将来会社にとってどういう意味を持つのかという想像力が欠如していたのかもしれない。
このようなビジネス判断の瞬間というのは、経営者として大いに勉強になった点であり、後進にもぜひとも伝えたいところであるが、なかなか言葉で語るのが難しい暗黙知なのである。
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