再び原点回帰なり!

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日本のエネルギー政策を考える(12):どうする再生可能エネルギー#3・政策論1

2011-06-18 10:27:45 | 日本のエネルギー政策を考える!

わが国の再生可能エネルギーの普及促進策は、1997年の新エネ法(新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法)の施行に始まる。ここで新エネルギーと再生可能エネルギーとは、多少その定義範囲が異なるものも含まれているが、ここではほぼ同義として話を進める。

新エネ法の主たる普及策は、初期投資への補助金付与である。太陽光発電や風力発電を導入する初期費用の1/3から1/2程度の補助金を政府が支給することによって、発電コストを抑制し、費用対効果等の経済性を多少なりとも良くしようというもの。

普及が進めば、導入費用も安くなり、しばらくすると補助金も不要となる。というシナリオであったが、ある程度の導入は進んだものの、なかなか急激なコストダウンにはつながらなかった。

そこでさらなる普及促進策として打ち出されたのが、2002年に施行された通称RPS法(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法)と呼ばれる新法である。

私自身は、この法律の主旨が経済原則の理にかなった普及策であると大いに評価し、いち早くこの法律の活用によるビジネスモデルを世に問うた。それが総額120億円規模の3基のバイオマス発電所であるが、今回はその話には言及しない。

さてこのRPS法の特徴は、電力会社に対して、その電源構成の中において一定割合の新エネルギー比率を義務付けるものである。そして、その比率は中長期的な年度毎の数値目標として法律に明記された。

そして導入数値目標を決められた電力会社には、3つの選択肢が用意された。

第一に、自ら新エネ発電所を建設すること。第二に、第三者の建設した新エネ発電所から電気を購入すること。第三に、これがユニークであるが、第三者が新エネ発電所で発電した電気から生まれる環境価値(これをRPS証書と呼ぶ)を購入すること。このRPS価値は、政府の認定によって質と量が担保されるもの。

電力会社は、それぞれの方法の組合せによって、最も経済的な義務履行をする。新エネ発電事業者は、その電気のみならず、環境価値であるRPS証書を電力会社に売却することができ、それによって投資回収を早めることができる。つまり、新エネ発電ビジネスが今よりも魅力的となる。

ただし、RPS価格はあくまで電力会社との交渉により決まるため、電力会社の年度毎の義務量の達成度によって、その価格が上下する。つまり、義務量を需要とすると、RPSは供給となり、需要と供給によって、このRPS価格が決まる。

RPS法は、ある意味市場原理に則ったおもしろい制度であり、かつ新エネ導入量をあらかじめ政府が決める点にも特徴があり、確実に新エネ普及につながる政策であると、私は今でも評価している。

ただし、このRPS法には大きな欠陥が二つある。第一には、電力会社に義務付けをしながらも、その費用負担を電力会社の経営努力とした点である。つまり、電気料金等への転嫁の議論を避けたことにある。本来であれば、国民負担の仕組みも含むべきではなかったか。そうすれば、電力会社ももっと義務量アップに積極的になれたのではないか。

第二には、本来RPS価値を生み出す新エネ発電所は、新設に限定すべきだと思うが、既設の発電所でも認定を受ければRPSを確保できることとなった点である。例えば、廃棄物発電所などは、その燃料である廃棄物の中に含まれるバイオマス比率分だけ、RPS価値を確保でき、それを電力会社に売却できることとなった。

実際に既設の発電所から、相当量のRPS証書が発生し、結果として新設の新エネ発電所への投資意欲と経済性が削がれることとなった。

こうして2009年夏の民主党への政権交代までは、新エネ補助金とRPS法によって、新エネルギーの普及が進められてきた。それまでの地道な積み上げを一挙にひっくり返したのが、民主党の掲げる環境政策の一環である「固定価格買取制度」である。

実は、その後の2年間は、新エネルギーの補助金もストップし、RPS法も機能せず、新しい制度も決まらず、日本の新エネルギーにとっては、まさに暗黒の時となってしまった。そして、大震災が起こり、まだ、新エネ普及復活の目途すら見えない。

再生可能エネルギー分野においては、今回の政権交代は、まさに「政権後退」となってしまった。このことを民主党は分かっているのだろうか。国民の選択したこととはいえ、本当に不幸なことであり、日々憤りに堪えない。


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