映画『道頓堀川』(1982年)
原作:宮本輝
監督:深作欣二
主演:松坂慶子、山崎務、渡瀬恒彦、
佐藤浩市、真田広之
原作は戦後の大阪が舞台だが、
映画では製作時1981年を舞台
としている。
大阪道頓堀に暮らす人々の悲哀
をビリヤードに生きる男たちを
通して描いた文芸作品。傑作。
この映画作品の中で、物語の最
大の山場となるビリヤード場が
ある。
千日前の紅白という玉突屋で、
女主人を加賀まりこが演じている。
まだ10代の頃に、撞球師の祖父と
二人で暮らしていたが、祖父が
他界し、浮浪児のように街をさ
まよっていたところを撞球師の
若き山崎務に助けられる。
そして、口に出せない苦労の末、
撞球場の店を大阪に持つように
なった。
ここで山崎努演じる武内鉄男と
玉田ゆき(加賀まりこ)は再会
する。
そして、薄幸の苦学生安田邦彦
(真田広之)と高校時代の友人
にして武内鉄男の息子の政夫は
この店で不幸な運命を迎える。
映画作品でロケとしてビリヤード
「紅白」に使われた場所は、現在
では1泊2800円の木賃宿のレア
ホステル道頓堀の建物が建って
いる。
これ、ここはもしかすると建て
直しではなく外装リフォームか
もしれない。
店内は松竹のセットなので、ここ
に1981年時点も玉屋はない。
この映画作品、安岡邦彦(真田
広之)がバイトしている武内鉄男
の喫茶店リバーの店内も、道頓堀
を挟んで向かいに見えるコーヒー
の青山も、そして3軒出てくる
ビリヤード場も、すべてセットだ。
喫茶店リバーがあった場所は、
道頓堀の戎橋のたもとで、今は
コンビニになっている。川沿い
の看板のみ現地貼りで、店内は
完全に松竹のセット。
ビリヤード場などは、セットとは
思えない時代付けが施されており、
どう見ても戦後からずっと経営
していた撞球場のような雰囲気
をどれも出している。松竹映画
での深作組、さすが。
「玉突紅白」があった場所の現在。
お隣は鰻屋「江戸焼き うなぎ
うお卯」が40年過ぎた現在も
営業している。
なお、慶應義塾大学のある横浜の
日吉にもビリヤード場があり、
「紅白」という店名だった。
そこも「玉突」という看板が出て
いた。「玉撞」ではなく「玉突」。
昔はよく使われた漢字だ。
そこから「玉突き衝突」という
言葉が生まれた。
この1981年撮影時の道頓堀界隈
で一番変わったのは、この作品
のオープニングで出てくる大黒橋
だ。
この作品撮影当時には、橋の上に
はジャングルジムや吊り輪等の
子ども用遊具がある小公園だった。
それが撤去されて、階段のある
展望公園になり、さらにそれも
取り壊されて、現在はただの歩道
付きの橋になっている。
また、コーヒーの青山は閉店した。
ニューハーフのカオル(カルーセル
麻紀)が働いていたショーパブの
建物はここの階段のある東山ビル。
現存。
階段2F部分は現在は目張りが
されている。
この映画作品には、とても重要な
場所が三か所出てくる。
それは
・喫茶店リバー
・ビリヤード紅白
・大黒橋
だ。
上二つは店内は松竹のセット。
道頓堀川にかかる大黒橋はロケ
だが、現在では橋自体が全く
様子が違っているので、1981年
当時の風情は作品の映像の中で
しか感じ取れない。
本作品『道頓堀川』の原作は
宮本輝(兵庫県出身)の「川
三部作」のうちの一つとされる。
三部作のうちの『泥の河』の
映画化作品は、名作中の名作と
して存在する。