
女優鹿沼えりさんが好きである。
これは1973年夏に『子連れ狼』
の「八門遁甲の陣」で出演した
鹿沼さん20才の時から。
別式女(べっしきめ)と呼ばれる
女武芸者の役だった。
別式女集団が拝一刀を暗殺しよ
うとするのだが、鹿沼さんは
門外で即拝一刀に斬り伏せられ
てしまった。
セリフもとんでもない大根だっ
たが、なぜかしら印象に深く残
り、好きになった。
その後、ゴレンジャーでは桃色
役をやっていた。

鹿沼さん主演作の映画を昨日たて
続けに4作観た。
何なのだろう。
やっぱり、かなり大根だ。
それなのに独特の存在感がある。
石井隆原作の『天使のはらわた』
の映像化『天使のはらわた 赤い
教室』(1979/にっかつ)は公開時
に劇場で観た。
しかし、石井が脚本を書いた映画
であるのに鹿沼さんのは土屋名美
ではない。石井の描く名美ではな
い。
やはり、演技力は薄い。
なのに、なぜか惹かれる。
不思議な女優さん。
全然役が憑依しない。
どの役をやっても、鹿沼えりさん
になる。
男優でも時々そういう俳優がいる。
高倉健さんなどは典型だろう。
健さんが役を演じるのではなく、
役が健さんに合わせて来る、み
たいな。
健さんの台詞回しは最高に巧いが、
演技としてはすべて金太郎飴だ。
ジョン・ウェインやトム・クルー
ズなども同系統の俳優だ。すべて
同じ役になってしまう。

不思議な魅力を持つ人。

夫の晩年にはかなり苦労をした
みたいだ。


現在、息子が父の芸名で俳優に
再デビューしている。
