渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

バラブシュカ

2023年04月26日 | open
 

ジョージ・バラブシュカ本物。
 
タイトリスト・コンバージョン
である。

2005年撮影。

この実物バラブシュカを手に
取ってまじまじと鑑賞してい
ると、ある事が推測できた。
バラブシュカが至高の撞き味、
究極の性能、と呼ばれていた
のにはある背景による理由が
あったのでは、と。
それは、バラブシュカは、ガス・
ザンボッティのように一から
木材の角材からキューを作る
人ではなくて、出来上がった
パーツを組み合わせて仕上げ
をして完成させる人だった事
に起因する、と。
ブランズウィックのメーカー
ューであるタイトリス
切断して、ジョイントさせる
ネジ切りをして、エンドキャ
ップを装着してキューを作っ
たのがバラブシュカだ。
その後は、バートン・スペイン
やガス・ザンボッティからハギ
ブランクを仕入れて組み立て
た。アメリカ企業だった日本
のアダムからも仕入れたとの
説もある。
有体にいえば、バラブシュカ
はキュービルダーではなく組み
立て屋だ。
 
だが、使ったタイトリストは
新品ではなかった。
使い込まれた物をリペアして
仕上げた。
最初から使い込まれて育ち切っ
たシャフトを使ったのだ。
これこそが、バラブシュカが
最高の性能を持ち得た秘密だ
った事だろう。
 
日本のプロでもよく見られる
傾向に、使い込んで古くなっ
たシャフトは、チョークの粉
や手の脂で真っ黒になってい
る。
だが、上級プレーヤーはそれ
をエタノール等で清拭したり
軽く削って肌を白くしたりは
しない。
何故か。
彼らは、手のシリコンが染み
込んだ使い込まれた古いシャ
フトが「育ったハードロック
メープルのシャフト」である
を知悉し切っているからだ。
程よく枯れ切って、安定して
いる。反発力や振動収束性も
削り出して出来上がった直後
よりも格段に向上している。
なので、その状態を崩すような
見かけの綺麗さなどはプロや
上級プレーヤーは求めない。
中身を取る。
ソリッドシャフトの「キュー
を育てる」「育つ」とはそれ
の事をいう。
勿論、プレー後には乾拭きし
たりして清潔さは保つ。
だが、使い込むとメープルの
シャフトはどんどん黒ずむ。
キューとして育って来ている
のだ。
 
数十何使い込んで黒ずむ私の
シャフト。


バラブシュカは、極言するな
らば、出荷段階でいわば使い
込まれて育った逸品をリプロ
によって新品にさせたキュー
作りだったといえる。
それゆえ、他のメーカーの新
品キューがまだ育ち過程の段
階でバラブシュカのみは最
から高次元な能力を発揮
した
のではなかろうか。
 
状況証拠だけからの推察だが、
そうした背景がバラブシュカ
の突出したプレーアビリティ
を担保していたのではと思う。
一つの現象として、完成した
キューは使わずにただ寝かせ
て時間経過を待っていても、
性能向上となる「育ち」は見せ
ない。使い込む事によりどん
どん能力が向上する。
これは、多くの経年プレーヤー
が感知しているところだろう
し、這界でも喧伝されてきた
ところだ。
単純な時間経過ではなく、打撃
と振動を与えて動かし続ける
と、手のシリコン浸透が木材
何らかの「良性効果」を付与
せる働きがあるのではと私は
んでいる。
演繹法ではなく、帰納法として
考察ではそうなる。
 
レーシングマシンでいうなら、
ナラシを終えた段階でどうぞ
とプレーヤーに渡していたのが
バラブシュカ。
ピストンもシリンダーもタイヤ
も。
当然、最初から全開ぶっちぎり
が可能となる。

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