サッカー狂映画監督 中村和彦のブログ

電動車椅子サッカーのドキュメンタリー映画「蹴る」が6年半の撮影期間を経て完成。現在、全国で公開中。

電動車椅子サッカー の選手たちが 10kmか6kmルールに専念出来ることに

2017年01月16日 | 電動車椅子サッカー

今週末の1月21日土曜日、横浜F・マリノス主催の電動車椅子サッカーの大会『横浜F・マリノスカップ』が開催される。
会場は日産スタジアムにほど近い障がい者スポーツセンター『ラポール』。
今回で14回目となる大会が昨年までと大きく様相を異にするのは、電動車椅子サッカーの制限速度が10kmと6kmの2カテゴリーで開催されることだ。

日本の電動車椅子サッカーは、この10年ほど2つのルールでおこなわれてきた。電動車椅子の制限速度10kmと制限速度6kmである。
前者が国際ルール、後者が国内ローカルルールである。この2つは別の競技かと思えるほどの違いがある。
別の競技に例えるなら硬式野球と軟式野球、あるいは硬式野球とソフトボール。硬式テニスと軟式テニスのような違い?
それよりも「走ってもいい通常のフットサル」と「走行禁止のフットサル」をイメージしてもらうとわかりやすいかもしれない。通常のフットサルではスペースに出したパスに追いつくことができるが、走ってはいけないというルールがあるならばパスは足下に出すしか無い。
観戦する側からすると前者は迫力があり、後者は迫力にかけるだろう。しかしプレーする側からすると、後者はより緻密さが求められるという面もある。
このことはまさしく10kmルールと6kmルールにもあてはまる。

また国際ルールは10kmであるため、当然日本代表は10kmでプレーすることになる。ということは日本代表を目指す選手達は10kmでプレーする必要がある。
これまでも各地区の代表が対戦するブロック選抜大会や、電動車椅子サッカー協会の公式的な大会ではないがクラブチーム同士が争うドリームカップなど10kmでおこなわれる大会はあったものの、クラブチームの日本一を決める『日本電動車椅子サッカー選手権大会』が予選を含めて6kmで開催されてきたため、日本代表を目指す選手達は10kmと6kmの両方をプレーする必要に迫られて来た。
極端な言い方をすれば日本のプロ野球が普段軟式で行われていて、時々カップ戦で硬式野球も経験、そんな選手達が WBCに出場し硬式野球をやるようなものだ。
あるいはマラソンでオリンピック出場を目指す選手が普段は競歩もやらなくてはならない。
例えれば例えれるほどわかりにくくなったかもしれないのでこのあたりでやめておくが、電動車椅子サッカー日本代表を目指す選手達が2つのルールをプレーすることを余儀なくされ、強化という面ではとてもマイナスに作用してきた。
そういった意味で、彼ら彼女らにとって10kmルールに専念できる環境作りが望まれてきた。

しかしながら仮に10kmに統一してしまうと、電動車椅子の性能の問題や身体的な理由、あるいは考え方の相違でついていけない人たちがいる。むしろ全体の数で言えばそちらのほうが多いだろう。
日本における電動車椅子の法定速度が6kmであることも関係しているし、日本代表になるためにはストライクフォースというアメリカ車に乗らないと実質的には無理であるといったことも関係しているだろう。
当然「6kmで楽しくプレーしたい」という人も多いだろうし、「6kmを突き詰めたい」という人もいるだろう。
いずれにせよ、普及という観点から6kmルールは欠かせない。

 ということはプレーヤーが2つのルールのどちらかに専念したうえで共存していくしかないわけだが、それはそれで簡単ではなかった。
例えば審判の確保の問題や2つのルールを同一大会で運営する難しさもあっただろう。
クラブチームの立場からすればチームごとすんなりと10kmか6kmを選ぶことができれば問題はないだろうが、意見が分かれてしまえば悩ましい事態になる。
チームが多いエリアであれば移籍もあるだろう。しかしチーム数が少ないエリアではそうもいかない。

といった簡単ではない様々な課題を日本の電動車椅子サッカー界は抱えてきたわけだが、どうやら今年の全国大会から6kmと10kmの2つのカテゴリーに分かれて開催されるようだ。予選も2つのカテゴリーに分けて行われ、選手達は10kmあるいは6km、どちらかのルールに専念できることになる。
7月に世界大会を控える日本代表候補の選手達にとっては遅きに逸した感も否めないが、朗報であることは間違いないだろう。 
6kmを選択したチームは、これまではむずかしかった全国大会出場、そして上位進出が現実的なものとして立ち上がってくるかもしれない。
もちろん10km、6kmの選択の際、各チームで容易ではない選択もあるだろう。 前述した移籍もあるかもしれないし分裂もあるかもしれない。
簡単ではない課題も立ち上がってくるかもしれないが、進むべき方向に歩を進めていることは間違いないだろう。 


前述した『横浜F・マリノスカップ』は全国大会と比べると小さな大会であり電動車椅子サッカー協会の公式的な大会でもなくローカルな大会であるが、変革の序章として、2つのルールで開催されるという意味でエポックメーキングな大会と言えるかもしれない。
これまでも6kmの大会でデモンストレーション的に 10kmが行われるなど、同時に観戦出来る場が皆無なわけではなかったが、正式な形で両ルールでの試合が行われるのは初めてではなかろうか。
そういった意味でも今年の『横浜F・マリノスカップ』は、観て損はない大会だろう。


私も当然行きます。 


詳しくは
http://sp.f-marinos.com/news/detail/2017-01-14/100000/183322

開催日時 1月21日 10時〜19時(試合開始は11時50分〜) 両カテゴリーの決勝が行われる夕方近く(6km決勝16時10分〜、10km決勝17時20分〜)の観戦がお得かもしれない。


追記 わかりにくいようだったのでアップした後、少し訂正しました。 



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