来年までの最大の目標として掲げた「もう一度、南アルプス南部の山々再訪」を構想するにあたって、わが心の師、深田久弥さんはどのように南アルプスに向き合っていたのか、を改めて確認する。
「深田久弥選集 百名山紀行 下」(ヤマケイ文庫)所収 「南アルプスの印象」から抜粋する。
私は自分の性質からして、北アルプスよりは南アルプスのほうが好きである。そして南アルプスの好きな人には、どこか共通点がある。鷹揚で、野暮ったく、辛抱強い。それは山の性格からきている。北アルプスは手っ取り早く収穫があるが、南アルプスは度重ねて登っているうちに次第にその滋味が分かってくるというふうである。そしていったんその味が分かると。すっかり惚れ込んでしまうのである。
深田さんは、このように「南アルプスが好きだ。」と端的に記している。そして、南アルプスの3000m峰を豪傑になぞらえ、
北岳を高潔な鉄人とすれば、間ノ岳は茫漠とした大人、農鳥は俊敏な智者に譬えられるかもしれぬ、赤石岳には王者の風格があり、悪沢岳は野性的な雄々しさを持っている。聖岳はその名の通り世俗を遠く離れた聖者、塩見岳は孤高の隠者とでも言おうか。中でも私の好きなのは仙丈岳で、その男性的な雄渾さの中に、気品のある調和を示している。
と最大限の美辞麗句をもって南の高峰たちを賛美しているのである。
二十代前半にこんな文章を読ませられて、深田信者たるオイラも南アルプス信者になりかけていたのだが、どういうわけか、六十代にいたるまで南アルプスに足を向けてこなかった。還暦を過ぎて、ようやく鳳凰三山や白峰三山や仙丈ケ岳など北部の山々を再訪する機会を得たが、塩見、悪沢、赤石、聖といった南部の豪傑たちを訪ね損ねていて、なかばあきらめかけていた。
昨日から、深田さんの南アルプスに関す文章を再読し、再び二十代前半の「こころ」がよみがえりつつある。もう一度この巨大な豪傑たちが居並ぶ「南アルプス南部」に分け入ろうという「生きる目標」が芽生えたのだ。もう来年の旅行計画をたてよう。
グーグルアースによる聖岳の立体映像
かぜねこ三百名山未踏峰・空想(共有)登山
高塚山(たかつかやま)・1621m・日本三百名山№260
南アルプス三百名山のなかでは、もっとも無名な山なのかもしれず、Youtuberも少ない。山犬段、大礼山登山口にいたる林道が24年現在通行止めとあるから、寸又峡温泉からのロングルートをたどるしかなく、ヤマケイによれば山犬段山小屋に一泊する必要があるとのこと。山頂に展望もないことから、ますます歩く人は少なくなるだろう。三百名山ハンターのヒトには登頂困難な山に数えられるのかもしれない。ただ、展望がよくなくても、南アルプス深南部はどこも雰囲気があるよね。針葉樹とシロヤシオなど広葉低木のバランスがいいからだろうか。静かな山歩きを好むものにはお勧めかも。
「ま横」さん提供
【登山】日本三百名山に登ってみた76 高塚山編
7年前は頂上まで2時間ほどの山犬段の駐車場まで車で行けたので、気持ちよさそうな動画でした。新緑がいいですね。
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