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かぜねこ花鳥風月館

出会いの花鳥風月を心の中にとじこめる日記

蜜蜂と遠雷

2019-11-12 09:49:41 | 日記

広瀬川のカモの飛翔

NHKBSプレミアムの再放送「特別編『蜜蜂と遠雷』若きピアニストの18日」を観た。若手の登竜門として世界的レベルの浜松国際ピアノコンクール2018に、あの天才少年だった牛田智大(うしだ ともはる)さんが昨年19歳の時に同コンクールに挑戦し、彼の一次予選突破から本選で2位受賞までの経緯が主流となっているドキュメンタリー。

世界の天才たちがしのぎを削る迫真の演奏と舞台裏が克明に描かれており、故中村紘子さんの「タレントにならず真のピアニストをめざせ」の教えを忠実に守り、才能と甘いマスクから、マスコミや女性ファンのチヤホヤというプレッシャーに耐え抜いて、優勝こそ逃したが、世界の天才88人中トップ2の地位を得たのだから、間違いなく「真のピアニスト」になっているので、安心した。コンクールのものすごいプレッシャーある中、NHKの取材を拒否せず、にこやかに受け流している優しい性格に感銘し、女性ならずともファンになった。まだ、20歳、日本を代表するピアニストとして、ますます高く飛翔し、輝き続けてほしいな。

この番組つながりで、このコンクールを小説化した直木賞作家・恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」が、映画化されて現在上映されているとのことで、観に行く。小説は、まだ読んでいないのでストーリーを全く知らないで、観に行く。いい映画だった。

そうしたら、映画で(小説もそうだろうが)、二次予選の課題曲が、宮沢賢治の「春と修羅」(オリジナル曲)のピアノ曲の独奏だった。このピアノ曲が、またいい。スクリャービン的な幻想感にあふれていて、粉雪やダイアモンドダストが、日に照らされて舞っているようだった。BGMにして詩を朗読したくもなる。誰が作曲したかというと、世界的にな著名だという藤倉大というお方。課題曲の後半は、カデンツァとなっていて演奏者の自由演奏に任せられているが、中でも二次で敗退した高島赤石(映画では、松坂桃季が演じていた。松坂さんは、今年の夏に新聞記者という映画にも出ていた。疲れぎみで、味が出ていた。)のカデンツァが「永訣の朝」の「あめゆじゆとてきてけんじや」の言葉に符合するリズム、音符で作られており、「永訣の朝」を読みながら、この演奏を聴くと、もう、この詩の世界が目の前に現れて、美しさと哀しさが、より一層深みを増してくる。(涙)

NHKのドキュメンタリーから、思わぬ経緯をたどって、しばらくぶりに牛田智大さんの元気な活躍ぶりを目にした。そうして、今読んでいる「春と修羅」に行きついた。「永訣の朝」をあらためて読んでみた。そうして、いま関心を寄せている敦煌・莫高窟の天女像や旅する水鳥と賢治の妹トシ子が重なり、彼女が北国の初冬の空を白鳥や天女となって舞っているのではないかという幻想に囚われた。

音楽、映像、言葉・・・「心象風景」、すべて何らかの縁(えにし)で結ばれているのだと思う。

12歳の牛田さん

敦煌莫高窟172窟の天女飛翔の壁画

映画「蜜蜂と遠雷」の春と修羅の明石バージョン

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