川本ちょっとメモ

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「後方支援部隊」は「前方戦闘部隊」と繋がっている、故に攻撃を受ける覚悟が必要だ(3) ジョミニ

2015-07-07 22:48:27 | Weblog



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今回は、このジョミニ著「戦争概論」の『第6章 兵站 部隊移動の実技』から、約3ページ分を転記して紹介します。「後方支援」というものが軍事作戦の大切な部分を構成していることがよくわかります。引用元は、中公文庫『戦争概論』、ジョミニ・著、佐藤徳太郎・訳、2001年12月20日発行、です。

ジョミニ「戦争概論」は同時代人のクラウゼヴィッツ「戦争論」と共に、兵書の古典として知られています。ジョミニはフランス革命後のナポレオン軍で実戦経歴を重ねた人です。スイス出身で、1779年生まれ。スイス革命後の共和国軍大尉で大隊長。1805年、ナポレオン軍のネイ将軍のもとで、ウルムの戦いやアウステルリッツの戦いに参加。1806年27歳でナポレオンの幕僚とネー将軍の幕僚長を兼務。1810年、少将に昇進。1814年35歳、フランス軍を去り、ロシア皇帝アレクサンドル1世のもとで侍従武官・陸軍中将の職に就きました。1828年49歳、ロシア皇帝のもとでトルコとのヴィルナ包囲戦に参画。1853年74歳、クリミア戦争でロシア軍顧問。1858年79歳、ナポレオン3世の委嘱でフランス軍の作戦計画を立案しました。


戦争概論 第6章 兵站・部隊移動の実技
軍の移動についての基本事項を考察する

1 軍を行動につかせるため、いいかえれば会戦をはじめるため必要な一切の
 データの準備、すなわち軍を集結し、引続きこれを作戦地に向って進発させ
 るための、命令、指示および行軍計画を起案すること。
2 予期する戦闘における各種の企図並びに攻撃の計画のため、総司令官の命
 令を適当な方式で起案すること。
3 軍の作戦を容易にする見地から、補給処並びに設堡補給処として用いられ
 る駐屯地の安全対策について砲工兵の指揮官と十分打合せること。

4 各種の捜索偵察について命令指示し、これらの手段を通じて、(間諜用法
 を含む)敵の配置行動についてできる限り正確な情報を得ること。
5 司令官から命ぜられた移動の実行を適切ならしめるための一切の措置をと
 り、各縦隊の行進をして斉整に、かつ相互の連絡を失わぬようこれが移動に
 ついて部署し、行軍の容易と安全とが保証されていることを確認し、かつ休
 止の方法と時間とを規整すること。
6 前衛、後衛、側衛その他一切の派遣隊の編組を適切にし、かつ彼等の行動
 の準拠となるべき教令と、その任務完遂に必要な手段との双方を準備してお
 くこと。
7 敵の特性と地形の性質に応じ、敵と衝突時および戦闘間の双方におい
 て、部隊をいかに戦術的に用うべきかについての制式と教令とを部下指揮官
 またはその幕僚に示しておくこと。
8 前衛その他の派遣部隊に対し、彼等が優勢な敵の攻撃を受けた場合の再集
 結点(よく選択された)を示し、そして必要の場合、彼等の希望でどんな支
 援が受けられるかにつき予め知らせておくこと。
9 縦隊間およびその後方を続行する行李、弾薬、糧食および衛生縦列の行進
 を、主動部隊の行動を妨げず、かつ近く手許に掌握できるようなやり方で部
 署監督し、しかも行軍中はもとより、休止および駐軍中にあっても、秩序と
 安全保持の措置に遺憾ないようにすること。
10 補給品常続輸送のための用意を整え、地方および軍の一切の輸送手段を
  かき集め、かつその使用について規整しておくこと。
11 設営を指揮し、その安全保持、秩序の維持、および取り締りについて規
  定しておくこと。
12 作戦線と補給線、並びに派遣部隊のこれらの線への連絡線を設定組織
  し、軍後方地域を組織し統轄し得る将校を任命し、派遣隊と輸送隊の安全
  に留意し、彼等によき指針を与えておくこと。そしてまた軍とその作戦基
  地との適切な連絡手段の維持についても留意しておくこと。
13 恢復期にある者や、戦傷病者の溜り場、移動病院、および修理工場を組
  織し、その安全を図ること。

14 側方か、あるいはまた後方にある派遣部隊全部の正確な記録をもち、彼
  等の移動に注目し、その派遣の用がもはや必要でなくなるや否や、直ちに
  主力縦隊に復帰させるよう準備しておくこと。彼らに行動のためのいくら
  か核心になるものを与えて、そしてこれを戦略予備に形づくること。
15 軍と作戦基地との問で、何れかの方向に移動しつつある落伍兵および小
  部隊を集めるため、落伍者収容線を設けること。
16 要塞攻囲にあっては、塹壕内にある部隊の用法について指導監督し、そ
  の実施すべき工事と、出撃または攻撃のための用法につき、砲工兵の長と
  緊密に調整しておくこと。
17 退却に際しては、秩序維持のための事前策を講じ、後衛を援助救出する
  新鋭部隊をを配置し、情勢を知悉している将校に、後衛が有利に停止し、
  敵と戦いを交え、その追撃を抑えて、よって以て時間の余裕を得ることの
  できる陣地を予め調べ選択させ、前以て段列の移動のための準備を整え、
  (後方に何も残さず斉整と秩序正しく後退できるように)安全確保のため
  のあらゆる適当を処置とること。
18 舎営に際しては、それぞれの部隊に各別の場所を割り当て、軍の主要区
  分毎に警急の場合の集合場を指定し、あらゆる命令指令および諸規定が暗
  黙の中に守られているよう監視する方策を講ずること。
    ※青字は直接に「補給」に言及している部分です。


海外派遣先は危ない所
自衛隊の海外派遣が「絶対に安全」というわけがありません。これまでに「犠牲者が出なかったから」という理由では、危険な環境の中で必死の努力を続けているであろう派遣中の自衛隊員があまりに可哀そうです。

そもそも絶対に安全なところでの海外協力ならば、これまでから政府の海外協力機構(JICA)から多くの技術者が派遣されてきています。青年海外協力隊員も派遣されてきています。海外援助資金の投入にともなって日本企業も海外に出向いています。……それなのに、たとえPKOであっても、なぜ、自衛隊の海外派遣が必要なのでしょうか? 海外派遣先が、「安全・平和な環境ではない」からです。


「防御戦闘」の覚悟
外国軍への「後方支援」があたりまえのように議論されています。私たちは改めて、「後方支援」が戦争行為そのものの一環であることを、再認識しておかねばなりません。戦闘部隊を支える後方支援作戦に従事することは、相手方にとっては敵対行為なのです。こちらに正義があるかどうかは関係ありません。

したがって、「攻撃戦闘」に関わらない後方支援作戦にあっても、「孫子 火攻篇」にあるように、補給線への攻撃を受けて応戦する「防御戦闘」に巻き込まれる覚悟だけはしておかねばなりません。

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<私のアピール>
2012年末の安倍政権成立以後の短年月、武器輸出3原則を廃し、特定秘密保護法の新設、憲法9条解釈変更の7・1閣議決定(集団的自衛権ほか)と、先行き不安な政策ばかり急激に推進されています。安倍内閣はデモクラシー日本を食い破りつつある危険な内閣です。その政治手法は民主主義下の独裁と見えて、危険です。安倍総理退陣まで、来年7月参院選で自民党に“No”を!


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