川本ちょっとメモ

★所感は、「手ざわり生活実感的」に目線を低く心がけています。
★自分用メモは、新聞・Webなどのノート書きです。

「後方支援部隊」は「前方戦闘部隊」と繋がっている、故に攻撃を受ける覚悟が必要だ(1) 孫子

2015-07-05 18:35:45 | Weblog



関連記事
2014/06/23 イタリア憲法第11条の姿が日本国憲法第9条の近未来を映す
2014/06/24 ドイツも解釈改憲――どうなったか? ドイツ26条、日本9条、イタリア11条



外国軍への「後方支援」があたりまえのように議論されています。私たちは改めて、「後方支援」が戦争行為そのものの一環であることを、再認識しておかねばなりません。したがって、「攻撃」という戦闘でない後方支援作戦にあっても、「防御」という受け身の戦闘の覚悟だけはしておかねばなりません。戦争行為に鈍感にならぬよう、政府にしてやられぬよう、知覚・感覚を研ぎ澄ませておきましょう。

ここでは誰でもが知っている世界の古典、兵書「孫子」から、「後方支援」に係るところを拾います。引用元は、講談社文庫『孫子』、天野鎮雄・訳注、1975年7月15日発行、です。

軍争篇 二

 ここで「輜重」とは食糧・軍需品の輸送・補給のことであり、それを集積することがなければ、軍が亡ぶ、すなわち敗軍となると述べています。輸送・補給・集積とは、「後方支援」のことです。それがなければ軍が亡ぶというように、「後方支援」が戦争行為の内側にある一連の軍事行動であることを示しています。そして、それら後方支援は司令官の指揮下のもとで実施されます。日本の自衛隊が外国軍の後方支援活動は、作戦準備あるいは戦闘作戦中の外国軍司令官の指揮下で、作戦行動の一翼を担って実施されるわけです。

<本文読み下し>
 故に軍争は利の為(ため)にせば、軍争は危為(きた)り。
 軍を挙(あ)げて利を争へば、則(すなは)ち及ばず、軍を委(す)てて利を争へば、則ち輜重(しちょう)捐(す)てらるればなり。
 是(こ)の故に甲を巻きて趨(はし)り、日夜處(を)らず、道を倍して兼行し、百里にして利を争へば、則ち三将軍を擒(とりこ)にす。勁(つよ)き者は先んじ、疲るる者は後(おく)れ、その法十が一にして至ればなり。
 五十里にして利を争へば、則ち上将軍をたふす。其の法半ば至ればなり。
 三十里にして理を争へば、則ち三分の二至る。
 是の故に軍、輜重無ければ則ち亡び、糧食無ければ則ち亡び、委積(ゐし)無ければ則ち亡ぶ。

<通釈> それ故、軍の争いが、利を得ることにあるとするならば、その争いは危険である。
 全軍が利を得んとして、一斉に争うならば、利を得ることがきないからであり、また送れる兵を見捨てて、利を得んとして争うならば、輜重車を捨ててしまうからである。
 このような訳で、よろいを荷物として、丸めて小走りし、日夜休息することなく、倍の道のりを強行軍し、百里の遠方において、利を得ようと争うならば、上軍・中軍・下軍のそれぞれの大将が、敵の捕虜となってしまう。体の丈夫な者は先になり、疲労した者は遅れて、強行軍の法則上、半数の兵のみが、その目的地に到着するに過ぎないからである。
 もし三十里の遠方において利を得ようと、強行軍して争うならば、三分の二の兵がその目的地に到着する。
 その結果、軍にその物資を補給する輜重車がないならば、軍は持久できずにほろんでしまい、食糧がとだえてしまうならば、軍はほろんでしまい、物資の蓄えがないならば、軍はほろんでしまう。

<語釈> ○委軍 遅れる兵を棄てる。「委」は棄と同じ。すてる。  ○輜重 食料・軍需品を輸送する車  ○委積 食糧などのたくわえ。「委」も「積」もたくわえ。


火攻篇 一

 火攻篇は、要するに火攻によってわが軍の攻撃を側面から援助し、その攻撃の効果を十分にあげることによって、戦争を短期間に終結させることを説く。

 ここで言う「火攻」とは、文字通り、火矢・放火による火攻めのことです。現代では、空爆、ミサイル攻撃、ロケット砲撃なども、孫子の「火攻」の範疇に入ります。

 後方支援作戦では必ず、後方に当たる主基地があり、補給物資の集積主基地があり、戦闘部隊の展開に応じた前進集積拠点があります。それら基地・拠点、走行中の輸送車、飛行中の軍用機、航行中の艦船、休止中の輸送隊列、味方兵など、すべて攻撃対象になることを「火攻篇一」が示しています。

 2千年以上前の『孫子』の時代から、後方支援作戦のすべてが、攻撃対象になっています。現代でも、支援作戦の相手方、すなわち敵国あるいは敵武装勢力の側に攻撃余力があれば、後方支援作戦中の自衛隊への攻撃もあり得ます。攻撃を受ければ応戦せざるをえません。戦闘に巻きこまれて深入りすることになります。そう考えておかねばなりません。

<本文読み下し>
 孫子曰く、
 凡(およ)そ火攻に五有り。一に曰く、人を火(や)く、二に曰く、積(し)を火く、三に曰く、輜を火く、四に曰く、庫(こ)を火く、五に曰く、隊を火く、と。
 火(ひ)を行ふに必ず因(いん)有り。

<通釈> 孫子は次のように言う。
 およそ、火攻めによって敵を攻撃するのに、五種類ある。すなわち、第一は、敵兵を火攻めにすることである。第二は、敵軍の集積物を、火攻めすることである。第三は、敵の輜重車を、火攻めにすることである。第四は、敵の貯蔵庫を、火攻めすることである。第五は、敵の部隊を、火攻めすることである。
 敵への火攻めは、必ず作戦上のいろいろな理由によって行われる。

--------------------------------------------------------------------------------

<私のアピール>
2012年末の安倍政権成立以後の短年月、武器輸出3原則を廃し、特定秘密保護法の新設、憲法9条解釈変更の7・1閣議決定(集団的自衛権ほか)と、先行き不安な政策ばかり急激に推進されています。安倍内閣はデモクラシー日本を食い破りつつある危険な内閣です。その政治手法は民主主義下の独裁と見えて、危険です。安倍総理退陣まで、来年7月参院選で自民党に“No”を!

コメント