1976年に北海道にミグ戦闘機が着陸したときは、ほんとうに驚きました。まだソ連が強大な軍事力を誇っていた米ソ冷戦時代のことでした。核戦争の偶発を恐れていた時代でもあり、日本は今と同じようにアメリカの核の傘の下にいました。
そんな時代のこと、冷戦の敵方親玉であるソ連の戦闘機が、わが国防衛戦力に何ら阻まれることなく、無傷でわが国領土である函館に着陸しました。このうえなく頼りない自衛隊でありました。
事件を知ったとき私は、ソ連やアメリカなどとの政治的関係に注目するばかりでした。着陸後にこんなに緊迫した防衛問題があったことは知りませんでした。そして、これほどの緊急事態に対応する法制が必要だと思いました。自衛隊も緊急出動できる法制が無ければ、基地から不用意に出ることはできないのですから。
以下は手持ちの学研文庫「ミグ25事件の真相」(2001.8.13.初版発行)からまとめました。
1976年(昭和51年)9月6日
13:11 ・空自奥尻レーダーサイト、北海道西方180km地点を東進す
る識別不明機を捕捉
13:13 ・北部防空管制司令所、第2航空団に緊急発進準備指令、千歳基
地でパイロット乗機
13:14 ・識別不明機、自衛隊機の要撃限界線に接近
13:18 ・函館空港上空にソ連戦闘機ミグ25一機飛来・旋回
・空港から航空自衛隊第2航空団(千歳基地)へ電話第一報
・第2航空団から北部防空管制司令室(三沢基地)に速報
・空港から運輸省航空局札幌航空交通管制部へ電話第一報
・札幌航空交通管制部、北海道警察本部に第一報
13:20 ・要撃戦闘機ファントム2機、緊急発進
13:49 ・北部防空管制司令所、スクランブル中のファントム要撃戦闘機
2機に函館確認指示
13:50 ・ソ連戦闘機ミグ25、函館空港に着陸
・函館空港から空自第2航空団に着陸を電話連絡
・空港職員がソ連機に向かうと、パイロットが空に向けてピスト
ル1発発射
13:50 ・空自北部方面隊司令部(三沢基地)の瀬戸3等空佐が陸自第28
連隊本部(函館駐屯地、空港東4km)に緊急電話を入れる
・函館空港職員から28連隊本部に出動要請電話
・28連隊本部から陸自11師団司令部(札幌)に報告
・辰巳3等陸佐、私服で函館空港に情報収集に向かう
13:58 ・ファントム要撃戦闘機、識別不明機を滑走路上で確認
14:00 ・このころ、110番通報を受けて、函館中央警察署板東署長以
下が空港に急行
・パトカーがソ連戦闘機パイロットを保護
・道警函館方面本部機動隊など続々と警察官到着、ソ連機のまわ
りに警備線を張る
14:30 ・このころNHK臨時ニュースで他の連隊幕僚将校もソ連戦闘機
函館着陸を知る
・陸幕-北部方面総監部-師団-連隊の各級情報所開設
14:45 ・新幹線車中の坂田防衛庁長官に第一報届く
15:00 ・28連隊辰巳3等陸佐、函館空港で警察の警備線に追い返され
る
17:24 ・第2航空団野中3等陸佐以下11人の空自調査団先遣隊、函館
空港に到着
1976年(昭和51年)9月7日
00:00 ・機体管理権が法務省に移り、警察から検察に移る
05:20 ・空幕防衛部副部長松井泰夫空将補以下19人の技術調査団、函
館駐屯地に入る
1976年(昭和51年)9月8日
早 朝 ・米政府筋より情報「戦闘機奪回または破壊のためソ連軍ゲリラ
侵入の動きあり」
07:30 ・三好陸幕長、田中北部方面総監に命令
一、函館空港に侵入する敵は、これを、直ちに撃滅せよ
・田中北部方面総監、近藤第11師団長に命令
一、第11師団は道南地区の警戒を厳重にせよ
二、侵入するソ連軍ゲリラは、これを撃滅せよ
・近藤11師団長、高橋第28連隊長に命令
一、駐屯地全部隊は第三種非常勤務態勢につけ
二、函館に侵入する敵を撃滅せよ
このころ ・海自大湊地方総監、全艦艇に総動員態勢を指示、津軽海峡を24
時間警戒
・空自北部航空方面隊、所属する要撃戦闘機全機臨戦態勢
08:00 ・陸幕永野幕僚副長、高橋28連隊長に電話
「函館に直接侵略があったら、28連隊は対処行動を取ってよ
ろしい。連隊長と函館空港長との間にホットラインを作れ」
10:00 ・三好陸幕長、高橋28連隊長に電話「俺が腹をくくるから、函
館にくるソ連兵を生かして返すな」
1976年(昭和51年)9月9日
16:30 ・函館駐屯地作戦会議、4個中隊出撃態勢に入る
・4個出撃中隊、各中隊2時間上番(即応中隊)、全員鉄帽着用、
小銃・拳銃携行の戦闘軍装
・61式戦車2両、高射機関砲L-901門、函館駐屯地に配備
1976年(昭和51年)9月10日
10:00 ・11師団幕僚会議、師団長以下鉄帽着用・拳銃携行
16:00 ・高橋連隊長、駐屯部隊全員を集合させ状況説明・訓辞
「私は、いつも諸官の先頭に立って戦う。我々が戦わずして、
誰が戦うのだ」
1976年(昭和51年)9月11日
15:06 ・ホークミサイル部隊レーダーが識別不明機多数の3目標を捕捉
・L-90高射小隊より電話、識別不明の3目標函館方向に移動中
・高橋連隊長、即座に命令「第28連隊、出撃」
15:09 ・L-90高射小隊戦闘配置、点検射曳光弾発射
15:12 ・出撃中隊、戦車を含む戦闘車列に完全武装で乗車完了・エンジ
ン始動 営門手前で発進命令を待つ
このころ ・L-90高射砲小隊、識別不明機3目標が空自C-1輸送機であ
ることを双眼鏡視認
・連隊長、直ちに命令「連隊、出撃中止」
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