叙事詩 人間賛歌

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人間は何をしに来て、どこえ行くのか 十四

2008年06月29日 | 人間は何をしに来て、どこえ行くのか

 朗読続き、

 ロスは気落ちして死後の世界の研究をやめようと思った。
そのような時に、ひとりの婦人がロスを訪ねてきた。

 婦人の名はケイト夫人で、ロスがケアした末期患者のひとりであり、
彼女が亡くなってからすでに相当の月日がたっていた。
部屋に入ってきた婦人を一目見て、ロスはおどろいた。

 「あなたはまさか、ケイト夫人ではないでしょうね? 」

婦人は、

 「はい先生、おどろかせてごめんなさいね。
 以前先生のお世話になりましたケイトです。今日は先生にお願いがあっ
 てやってきました。」

婦人はロスの座っている机の前に立ったまま、落ち着いた声で言う。

 「キュブラー先生、あなたがなさっている研究をやめずに、
 これからも続けてください。みんな期待していますから、それを言いたくて
 やってきたのです。」

おどろいて口もきけずにいるロスに婦人は、

 「助手のロバート先生にも、そのようにお伝えください。」

と付け加えたのである。

注、 助手のロバート先生は牧師で、死後の世界の研究をしているロスの
理解者であり、よきパートナーであった。

ロスは、

 「私にはまだよく信じられないが、もし本当にあなたがケイト夫人であっ
たら、助手のロバートあてにメモを書いてください。
 あなたが今日訪ねてきたことを、私がロバートに話しても信じてもらえない
でしょうが、
 あなたのメモがあれば彼も信じるでしょうから。」

ロスが言うと婦人は、ロスが自分が来た証拠を欲しがっていることを
 すぐに理解した。婦人は笑みをうかべて、

 「承知しました。」

と言って、ロスが差し出したメモ用紙にすらすらと用件を書き、サインをし
てロスに渡したのである。
 ロスが婦人の申し入れを承諾する旨を言うと、婦人は礼を言って部屋を
出ていった。

つづく