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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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日曜劇場 「ラストマン―全盲の捜査官―」 全体として楽しんで見られるが、 多少の難点はある

2023年05月24日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

日曜劇場

「ラストマン―全盲の捜査官―」

全体として楽しんで見られるが、

多少の難点はある

 

福山雅治の福山雅治による福山雅治のためのドラマ。それが日曜劇場「ラストマン―全盲の捜査官―」(TBS系)だ。

主人公の皆美広見(福山)はFBI特別捜査官。全盲であるにも関わらず、必ず事件を終わらせるという意味で「ラストマン」と呼ばれている。

いや、それだけではない。知的でハンサム。能力を誇ったり、威張ったりしない。誰に対しても優しく接するジェントルマンだ。そんな人物、福山にしか演じられない。

このドラマが巧みだったのは、警部補の護道心太朗(大泉洋)をバディとして置いたことだろう。

今や国民的「可愛がられキャラ」となった大泉。自然なおかしみを漂わせる彼の存在が、「ザ・福山」的演技に漂う圧迫感を緩和しているのだ。

また、同じ福山が主演する「ガリレオ」シリーズ(フジテレビ系)の物理学者、湯川学との差別化も上手に行われている。

いい意味で唯我独尊の湯川と比べ、皆美は他者の力を積極的に借りるし、感謝もする男だ。全体として楽しんで見られる作品になっている。

ただし、多少の難点はある。嗅覚や聴覚が非常に優れ、またハイテク装置で視力を補う皆美に、全盲であることのハンディが感じられなさ過ぎる。

実際の全盲の方たちが、「安易に利用しているだけではないか」と感じてもおかしくないのだ。今後の修正点の一つとして挙げておきたい。

(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは!!」2023.05.23)