「考えるな、感じるんだ」
映画『トップガン マーヴェリック』
【旧書回想】
週刊新潮に寄稿した、
2020年1月前期の書評から
折輝真透『それ以上でも、それ以下でもない』
早川書房 1870円
第9回「アガサ・クリスティー賞」受賞作だ。舞台はナチス占領下のフランス。小さな村に匿われていた、レジスタンスの男が殺害されてしまう。村を守るため、神父は事件を隠蔽しようとする。村人、親衛隊、レジスタンス。錯綜する人間関係の奥にある真実とは?(2019.11.25発行)
小川隆夫『伝説のライヴ・イン・ジャパン』
シンコーミュージック・エンタテイメント 3080円
来日した大物アーティストが行った数々のライヴ。それを通じて1950~70年代のジャズ史を追体験する。セロニアス・モンク、マイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーンなどのレジェンドたちは、どんな曲を、どのように演奏したのか。全30公演への招待だ。(2019.12.12発行)
石原慎太郎、坂本忠雄
『昔は面白かったな―回想の文壇交遊録』
新潮新書 792円
『太陽の季節』で芥川賞を受賞した時、石原は23歳。87歳の今も現役作家だ。そんな石原から回想を引き出す坂本は、85歳の元「新潮」編集長である。作品はもちろん、小林秀雄や川端康成、三島由紀夫といった人々を同時代作家として語る逸話がすこぶる興味深い。(2019.12.20発行)
藤田宜永『ブルーブラッド』
徳間書店 2200円
ブルーブラッドとは貴族や名門出身の人間を指す。戦後の混乱期、復員した貝塚逸馬は旧華族の両親が外国人に殺害されたことを知る。背後にはナチスの隠し財産の存在があった。真相を追う逸馬は、ソ連、アメリカ情報部、超国家主義者たちの暗闘に巻き込まれていく。(2019.11.30発行)
日野百草『ルポ 京アニを燃やした男』
第三書館 990円
昨年7月に起きた、京都アニメーション放火殺人事件。本書では、20代まで「ごく普通の貧乏育ちのフリーター」だった男が、なぜ凶行に及んだのかを探っている。文化を破壊した者への激しい怒り。亡くなったクリエイターたちへの哀悼。私小説ならぬ私ドキュメントだ。(2019.11.30発行)
高崎俊夫、朝倉史明:編
『芦川いづみ~愁いを含んで、ほのかに甘く』
文藝春秋 2970円
デビューから65年。日本映画のミューズ(女神)が再降臨した。日活時代の全出演作品のスチール写真やポスターの収録。初のロング・インタビューも快挙だ。中平康などの監督陣、石原裕次郎や吉永小百合といった仲間とのエピソードには人柄がにじみ出ている。(2019.12.10発行)