碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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【気まぐれ写真館】 「真夏日」の夕暮れ

2022年05月29日 | 気まぐれ写真館


【旧書回想】 2020年1月後期の書評から

2022年05月29日 | 書評した本たち

 

 

【旧書回想】

週刊新潮に寄稿した、

2020年1月後期の書評から

 

小川 功『昭和四十一年日本一周最果て鉄道旅』

笠間書院 1760円

まだ東海道新幹線も開業していない昭和41(1966)年。20歳だった著者は、友人と2人で列島縦断の鉄道旅に出た。本書はその記録であり回想記でもある。東京から北海道へ。そして大阪へと南下する。車内も車窓も昭和の風景そのもの。紙上のタイムトラベルだ。(2019.12.10発行)

 

尾高修也『「内向の世代」とともに 回想半世紀』

作品社 2530円

「内向の世代」とは1930年代に生まれ、70年前後に登場した作家たちを指す。古井由吉、黒井千次、後藤明生などだ。著者は同世代の作家であり研究者。彼らの仕事を「近代文学の最後のもの」と捉えた、文学論的エッセイ集だ。過去と現在があざやかに交差する。(2019.12.20発行)

 

阿川佐和子『老人初心者の覚悟』

中央公論新社 1430円

『婦人公論』連載のエッセイ集だ。昭和28年生まれの著者は自称・老人初心者。新たな気づきや体験を自分で面白がりつつ綴っていく。初の腰痛。中高一貫女子校の同窓会。運転免許の更新。久しぶりのカラオケなど、日常を「非日常」として楽しむコツが見えてくる。(2019.12.25発行)

 

ケヴィン・ブラウンロウ:著、宮本高晴:訳

『サイレント映画の黄金時代』

国書刊行会 9680円

これまで邦訳がなかったことが不思議だ。サイレント映画に関する古典にして名著である。豊富なインタビューも交え、監督、美術、編集から演技まで、映画作りの本質に迫る研究書だ。原題は郷愁に満ちた「パレードは過ぎ去った」。2段組み、877頁の大著。(2019.12.20発行)

 

野川香文『ジャズ音楽の鑑賞』

シンコーミュージック・エンタテイメント 2640円

昭和23年に刊行された日本初の本格ジャズ評論集、の復刻版だ。明治生まれの野川がジャズ研究を始めたのは昭和5年頃。出版当時44歳だったが、黎明期、ラグタイム時代、ブルースの誕生とたどる発達史は画期的なものだった。70年前の情熱が甦る歴史的一冊だ。(2020.01.12発行)

 

北上次郎『息子たちよ』

早川書房 1870円

平日は会社に泊まり込み、家に帰るのは日曜の夜だけ。それが20年続いたことに驚く。いわば無頼の書評家が、子供としての自分も踏まえて2人の息子への想いを綴った。「家族はけっして永遠ではない」と覚悟しながら愛し続けた家族と本をめぐるエッセイ集だ。(2020.01.15発行)