碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

週刊新潮で、『半沢直樹』について解説

2020年04月25日 | メディアでのコメント・論評

 

 

またも延期 『半沢直樹』

コロナに倍返しされた3蜜ロケ現場

 

待望の続編。TBSの社長も年頭会見で、「今年は『半沢直樹』に尽きます!」と吠えたほどである。コロナ騒動によって、放映延期を余儀なくされたが、進んでいたロケ現場では、「3密」状態も生じていた。

前作が最高視聴率40%超の大ヒットを記録したのは2013年夏のこと。通常なら翌年にも続編となるところ、再開に7年もの月日を要したのは、さまざまな”事情”があったという。

「主演の堺雅人が所属する田辺エージェンシー側が、堺に『半沢』の色が付くことを嫌がった」

とは、さるスポーツ紙の芸能デスク。

「また、堺と、演出を務めたTBSの福澤克雄監督との間に、演技のことで溝が生まれていたんです。福澤さんは福澤諭吉の玄孫で、学生時代、慶応のラグビー部で日本一になったこともある『体育会系』。ジャイアンにちなんであだ名は『ジャイさん』です。過去、『GOOD LUCK?』や『華麗なる一族』などでヒットを飛ばし、堺同様”こだわり”が強い。揉めに揉めたのでその”和解”にも時間がかかりました」

とは言え、堺もあまりにドラマにご無沙汰していれば、視聴者から忘れられる。局側も局側で再開の機会を失う。ようやく折り合いが付いたのがここ数年のことだった。

”マスクが壊れた”

だから、このドラマに賭けるTBSサイドの力の入れ方は並大抵ではない。

ロケ現場ではコロナなんて物ともしない、こんな光景が見られていたという。

「私が参加したのは、3月19日のことですが……」

とは、エキストラで出演した40代の男性である。

「参加に当たっては、マスクの着用と、事前の体温測定を求められたのできちんと測っていったのですが、朝、品川の現場に着いても確認されることなく、撮影に入ったんです。”あれっ”と思いましたよ。その日は及川光博さん扮する半沢の同期の銀行員が喫茶店で話をするシーンの撮影で、スタッフはみなマスクを着用していましたが、中にただ一人、ずっとマスクを付けていなかった人がいました。監督の福澤さんです! で、大声で指示を出していたものだから、唾がかからないかどうか不安でたまりませんでした」

付言すれば、この3月19日は、その夜、政府の専門家会議によって「オーバーシュートが起こることが懸念される」と警告が発せられたように、警戒感は日に日に強まっていた。むろん小中高校も休校のまま。監督、つい力が入って、ウイルスの存在を失念してしまったのか。

撮影終了後も、

「”記念写真を撮りましょう”と言われて、エキストラが40~50人”密集”させられた。で、監督が”『ハイ、チーズ!』の代わりに、『倍返しだ!』で行きましょう”と音頭を取って、ガッツポーズをさせられました。2~3回は撮ったかな。写真はHPに番宣のために載せられました。その後、熱が出ることもなかったから良かったですが、ちょっと怖かったですね」(同)

コロナからの「倍返し」が気になる。

制作スタッフによると、

「福澤さんはガタイがデカく、身長が190センチもある。顔もデカくて窮屈なんでしょう。”マスクが壊れちゃった”と言って、現場で付けないこともありました」

当のTBSは、

「感染の防止に配慮して行っておりました」

と言うのみ。

「TBSにとって、『半沢直樹』は満を持して送り出した、今年の目玉。視聴率争いで復活のカギとなるドラマでした。開始時期によっては夏クールの冒頭まで食い込ませて放送するか。あるいは、回数を減らして放映するか……」(メディア文化評論家の碓井広義氏)

延期のショックも倍返し。

(週刊新潮 2020.04.23号)