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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

「蟹工船」ブームから「マルクス」ブームへ!?

2009年06月17日 | 本・新聞・雑誌・活字
7月4日から、映画『蟹工船』が公開される。

SABU監督なので、それなりに期待しております。

それにしても、原作である小林多喜二の『蟹工船』が160万部に達したことに、ちょっと驚く。

買った人、本当に読みましたか?(笑)

『蟹工船』文庫本バカ売れ→映画化、の相乗効果だろうか、本家(?)マルクスまで注目され始めたようだ。

先日、「マルクス」と名の付く新書が2冊、ほぼ同時に発売された。

作家・三田誠広さんの『マルクスの逆襲』(集英社新書)。

そして、元・日本共産党委員長である不破哲三さんの『マルクスは生きている』(平凡社新書)だ。

三田さんの芥川賞受賞作『僕って何』が出たのは1977年。

全共闘運動、というかゲバルトにも、女の子にも、なかなか“突入”できない大学生の青春小説だった。

今回の新書は、三田さん本人も書いているが、マルクスや、マスクス主義や、マルクス思想の「解説書」ではない。

「なぜ昔の若者たちがマルクスを信じ、マルクスのために命をかけようとしたのか。その謎を解くために、大まかに歴史を振り返ろう」というのが趣旨だ。

いわば、三田さんという“フィルター”を通してマルクスを探る。もしくは、三田さんなりの<マルクス総括>みたいなものである。個人史の色合いも強い。

一方、不破さんだが、なんてったって、日本共産党きっての理論家の一人だ。

その不破さんが、一般大衆(って私語?)に向けて、しかも「新書」というカジュアルなメディアを選んだことに、いろんな意味がありそうだ。

この本では、マルクスを、「唯物論の思想家」「資本主義の病理学者」「未来社会の開拓者」という3つの側面から捉えていく。

もちろん、中身はしっかりしているが、「です・ます」調の文章は、意外なほど読みやすい。

こちらは、優秀な先生が、難しいことを、噛み砕いて、分かりやすく教えてくれる・・・そんな感じだ。

さあ、『蟹工船』を読んだ160万人は、次に『マルクスの逆襲』へ向かうのか。

それとも、『マルクスは生きている』を手に取るのか。

いや、その前に、映画『蟹工船』が控えている。

マルクスの逆襲 (集英社新書 494B)
三田 誠広
集英社

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マルクスは生きている (平凡社新書 461)
不破 哲三
平凡社

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