『感性創房』kansei-souboh

《修活》は脱TVによる読書を中心に、音楽・映画・SPEECH等動画、ラジオ、囲碁を少々:花雅美秀理 2020.4.7

・最小限のナレーション/NHKラジオ『音の風景』

2014年10月17日 00時02分02秒 | □Sound・Speech

 

 《 リスナーのみなさんを音だけの世界にお連れします。
 想像をかきたて、記憶を呼び覚まし、心を潤す音の数々。
 音響デザイナーが録音機をかつぎ現場に飛び出し、最小限のナレーションで構成する5分間の音の旅をお楽しみ下さい。
 きっと「音に耳を傾ける楽しさ」を味わっていただけます。》

      ☆

  上記は、「NHKラジオ第2」の『音の風景』という番組案内のメッセージ。“5分間のサウンドトリップ” をキャッチコピーとするこの番組は、「再放送」を含め毎日3回、すなわち日曜から土曜まで欠かさず放送されている(※註1)。「FM」でも毎日1回放送されるため、日・金曜を除けば「一日に計4回」というもの。わずか「5分間の番組」とはいえ、いかに力を入れているかが判る(※註2)。

  “最小限のナレーション” というフレーズが、この「番組」の総てを物語る。その「ナレーション」は、中川緑をはじめ、岩槻里子阿部陽子北郷三穂子大沼ひろみの各アナウンサーが担当している。

 さすがにNHKの女性アナウンサー。声だけでなく、各人の「コメント」もなかなか味わい深い(※筆者において一部、省略)。

 

  ◎中川緑(2014年)/『ナレーションもまた「音」のひとつ。それぞれの「音の風景」と響きあうような語りを。』

  ◎岩槻里子(2013年)/『気ぜわしい日常から、まったく違った空間へと誘ってくれる「音の風景」。5分間の旅があっという間に。』

  ◎阿部陽子(2012年)/『「風景」を紡ぎます。雲雀が舞う真っ青な空、澄んだ水が光るせせらぎ、フクロウの声が響く夜の森……脳裏に浮かぶ映像の、ささやかなお手伝いを。』

  ◎北郷三穂子(2011年)/『お届けする「音」が、「風景」を織り成してくれるようナレーションは額縁のような役割をしているのかなと思っています。』

  ◎大沼ひろみ(2010年)/『聴けば聴くほど味わい深い『音の風景』の"風景"をお楽しみください。』

 

  「名前」の後の西暦年は、ナレーションの担当年。巻末紹介の「音の風景一覧」では、2014年~2008年の「放送内容」が紹介されている。しかし、「試聴」(1分程度)」できるのは、2014年~2010年までの5年分だけのようだ(※註3)。

            ☆

 『音の風景』の素晴らしさは、僅かな “音” によって引き出される “その場の情景” の鮮やかさだ。しかもその “情景” の基本は、リスナー自身の “経験と感性に裏付けられたイメージ” によって創り上げることにある。

 そこに、“音に姿を変えた一瞬の滝や川の流れ、雨の気配、鳥や虫や動物の鳴き声、そして粛々と生きる人間の営み” が紛れもなく息づいている。

  まさしく、“生きとし生けるもの” の貴さであり、その持つ “命の切なさ” というものだろうか。だがそれは同時に “逞しい生命力の迸り” でもある。

 ぜひ『5分間のサウンドトリップ』にお出かけあれ。 “不思議な時間” の中に迷い込んだような気がして来る。無論、とても心地よいものだ。

   「試聴」もお勧めしたい。わずか1分程度の “時間” だが、ときに “瞬間” のように感じることもあれば、一つの物語を紡ぎ出しえたような “豊かなときの隔たり” を感じることもある。

           ★

 個人的に好きな「音」となれば、小川というまでには行かない “小さな水の流れ” だ。「水」そのものの素朴な「音」と、その音に限りなく近づいている「人の気配や息遣い」が伝わって来る。

   その次となれば、「波打ち際の海水の引き具合い」だろうか。遠くの方で、「波と戯れるはだしの子供たちの声」があれば申し分ない。それに、「木々や草花に触れる風音」も捨てがたい。「有るがままの天地自然が創り出す造形」であり、“音を超えた音” とでも言うべきだろうか。

   しかし、実はもっとも好きな「音」は、「ひたむきに生きる人間の営み」であり、「日本人らしいごく平凡な生活の音」だ。それが「水の流れや風を背景」としたものであればなおいい。方言が飛び交う「朝市」などには、すぐにもその場に入って行きたい衝動にかられる。      

            ☆

  こういう番組を制作する “クリエーターとしてのNHK” には、心からの尊敬と賞賛の気持が湧いてくる。その秀逸な企画コンセプトや編集のセンスには、民放の追随を許さない圧倒的な “絶対差” を感じるからだ。

            ★ 

 1996年、当時の「環境庁」(現・環境省)は、「全国各地の人々が地域のシンボルとして大切にし、将来に残していきたいと願っている音の聞こえる環境(音風景)」として一般から公募した。それを「日本の音風景検討会」の選定審査により、『日本の音風景百選』として、100件が選定されている。

 

 ◆音の風景とは/NHKラジオ『音の風景』 の番組案内

 ◆『音の風景』の番組表(1週間単位)

  ◆NHKラジオ『音の風景』2014年

  ◆NHKラジオ『音の風景』2013年

  ◆NHKラジオ『音の風景』2012年

  ◆NHKラジオ『音の風景』2011年

  ◆日本の音風景百選(wikipedia)

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  ※註1 「金曜日」は、2回。

  ※註2 「ラジオ第1」での放送があることも。

  ※註3 夕方4時20分の「再放送分」は、上記2008年以前のものもあり、昨日は『もぐさ屋さん――滋賀』。ナレーターは『軍師 官兵衛』でお馴染みの「広瀬修子」アナウンサー。

 


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