今日は国民の祝日〝秋分の日〟。〝春分の日〟と同じく昼夜の長さがほぼ等しくなる日です。この秋分の日を中日とする前後3日の7日間を〝彼岸〟というのですが、俳句では春を〝彼岸〟として詠みますので、秋は〝秋彼岸〟とか〝後の彼岸〟といいます。気をつけて使いましょう。
昔から〝暑さ寒さも彼岸まで〟とよく言われますが…あ、いやいや、今年は台風14号のお陰で?お彼岸の前に涼しくなってしまいましたね。日中はまあそれなりの暑さですが、このところのこちらの最低気温は20度前後、朝夕がめっきり…時には寒いぐらいの感じで、〝朝寒〟〝やや寒〟〝肌寒〟〝そぞろ寒〟〝夜寒〟などの季語がぴったりしてきました。
くちびるを出て朝寒のこゑとなる 能村登四郎
下の句にもありますように、人の〝こゑ〟というものは微妙にその時々の季感を伝えてくれるものなんでしょうね。
ひとごゑのさざなみめける秋彼岸 森澄雄
この句では〈さざなみめける〉がよく秋の感じを出しています。やはり風が吹いて川などの水の小さな波の音は秋の感じで、春には似合いませんもの。
一週間後には早10月ですよ。秋らしくなったと思ったら今年は直ぐに寒い冬が来そう。イヤだ!台風だってまだ次々と来るんでしょうし…。こんなイヤな気分の時に追い打ちを掛けるようにショックなことがあったんですよ。
先日ラジオ体操に出かけようとしたとき、ここには詳しく書けませんが…とっても大切なものを私の不注意で無くしてしまったんです。どこを探してもない…よく〝しらみつぶしに…〟と言いますが、その通りに部屋から庭をくまなく…たったこれだけの範囲なのに。その日はそれで一日中が潰れてしまいました。
その日の空の様子は、まるで私の心のようでした…加藤楸邨の〈鰯雲人に告ぐべきことならず〉もそんな気分だったのかしら?人に言ってもどうしようもないことっていろいろ有りますものね。最後は自分で決着付けるしかない!
でも、そう思ってもさすがに心が萎えます。お婆ちゃんに言うと、事故なんかに合って死ぬような目に遭ったと考えればこれぐらいで良かったと思いなさい!だって…。(; ;)ホロホロ…確かにお金で済むことなんですからね。でも、クヤシイ!しばらくは心が立ち直れず、この忙しいときにと…さすがに困りました!でも、台風が来て何もかも吹き飛ばしてくれ、やっと諦めが付きました。そんな私の心を慰めてくれるかように、彼岸花の赤と白が律儀に揃って咲きました。アリガトネ!
さて、さて、先日の教室の兼題は〝無花果〟でした。秋の季語で、栽培果樹としては世界最古といわれているクワ科の落葉樹の果実、西南アジア原産です。日本には江戸時代初期に渡来。食用にされているのは実のように見える花嚢といわれる部分で、小さな花が集まったものです。
いちじくをもぐ手に伝ふ雨雫 高浜虚子
これは雨上がりに無花果をもいでいるんでしょうかね。無花果は「一熟(いちじゅく)」が語源になったともいわれていますように、大体一日ごとに順々に熟れていきます。しかし、熟したものが雨に会うと直ぐに痛んで食べられなくなりますので、もしかしたら雨の中でもいでいるのかも知れませんね。とにかく、今年は無花果の当たり年だったそうな…。
教室へ行くと、机にラッピングされた小さな壜が置いてありました。〝先生、それはYさんからのプレゼント…イチジクジャムですって!〟といわれ、見ればみんなの机にも同じ物が…。〝スゴい!全部自宅のイチジクで作ったの?〟と聞くと、そうなんですって。自分を除いても9人分だから大変だったでしょうに、今月の兼題がイチジクだったので頑張ってくれたんですね。感謝、感謝です。
さて、今年の無花果は豊作だったんですが、俳句の方は?というと、どうも難しかったらしく、残念ながら不作でした。(笑) ジャムをこんなに作ったのなら、それを詠めばよかったのにとYさんに言うと、本人も…。〝後の祭り〟でしたね。
でもおいしいジャムを頂いて、お口の方は豊作、豊作!ゴチソウサマでした。