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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

世界短編傑作集5

2024-03-21 19:34:00 | 読んだ本
江戸川乱歩編 1961年 創元推理文庫
これは先月下旬くらいだったかに買い求めた古本、私にしてはめずらしく買ってすぐ読むことになった。
なんでこんな大昔の本を、しかも5冊あるらしいシリーズの第5集をいきなり、読むことになったかというと、フレドリック・ブラウンがお目当てだったんである。
こないだ読んだ『まっ白な嘘』の巻末解説のほんとおしまいまできたら、
>最後に収録作品の原題を掲げる。原書にはこのほかにもう一篇「危険な連中」Dangerous People が入っているが、これは本文庫の「世界短編傑作集5」に収録してあるので、重複をさけるために省略した。
とあって、椅子からずり落ちそうなくらいショック受けて、そりゃーねーだろーがよーとかブツブツ言って、すぐ探すことにした、ま、それだけブラウン短編集はおもしろかったんだが。
でも、いざこの短編集にとりかかろうかって段になっても、最初にブラウンのくだんの一篇とこ開けたりしないんだよね、律儀に最初から順番に読んでいく、好きなものから先に食べたりしない俺。
でも、そしたら並びは発表年代順にしてるだけらしい、つまらん、コンセプトあるんぢゃないんかい。
一読したなかでは、やっぱ「危険な連中」が一番かな、これはおもしろいっす、サキの何かと並べてもいいんぢゃないかなって気がするくらい、気に入った。
あと「十五人の殺人者たち」も秀逸、ただの殺人事件の探偵小説ぢゃあありません。「証拠のかわりに」は、探偵と、その事務仕事をしてる語り手のキャラがユニークで読んでて愉快なものがあった。
収録作は以下のとおり。どんな話か備忘録しときたいんだけど、内容語るとオチをばらしたりしちゃいそうなので、初めのほうから少し引用しといてみる。
「黄色いなめくじ」 The Yellow Slug(1935) H・C・ベイリー
>石炭酸のにおいが鼻につく玄関に立つと、ベル署長が顔を出した。
>「呼んだそうだが、用件というのは?」
>「女の子のほうも、まだ息はあるんです。ふたりとも、どうやら助かるらしいのです」
>フォーチュン氏は共同病室に案内された。
「見知らぬ部屋の犯罪」 The Crime in Nobody's Room(1940) カーター・ディクスン
>時刻も十時ちょっと前、デナムは千鳥足で、メディチ・コート荘のホールを奥へ進んだ。不寝番のピアソンは、自動エレベーターまでついてきた。
>「楽しいことがおありのようですね」
>ピアソンはわざと声をひそめて言った。デナムは笑ってうなずいて、いつもながら、きみはしんせつでいい人間だと言った。
「クリスマスに帰る」 Back for Christmas(19?) ジョン・コリアー
>「今年のクリスマスも」シンクレア大佐がいった。「ぜひまたごいっしょに祝いたいものですな、カーペンター博士」
>お茶が出るところで、カーペンター家の客間は、博士夫妻に別れの言葉を述べにきた人たちでいっぱいだった。
>博士に代わって、カーペンター夫人が答えた。
>「ええ、ええ。それはもう、きっと帰ってまいりますわ。わたくしがお約束いたします」
「爪」 The Fingernail(1941) ウィリアム・アイリッシュ
>元警部のモロウは、友人のあとに続いて、壁に面したテーブルの一つについた。
>「ここは食い物がいいんで知られている家だがね」(略)「来たこと、あるかい?」
>モロウはどうもはっきりしないといった面もちであたりを見まわした。「ロベール料理店」と口の中で、「待てよ、覚えがある。ぼくが強力犯係から退職する前だったが、殺人犯をここまで追い込んだことがあったよ――そしてまた逃がしちゃったんだが。注文が済んだら、その話をしようか」
「ある殺人者の肖像」 Portrait of a Murderer(1942) Q・パトリック
>マーティンとわたしとは、第一次世界大戦の後半に、あるイギリスの学校でともに学んだ仲であった。十四歳のころマーティンは、(略)べつにこれという特徴もない少年だった。どこといってほかの生徒たちと違ったところもない少年だったが、ただ、彼にはオリン・スレイター卿という父親があった。
>このオリン卿という父親があるだけで、マーティンは悪い意味でとんでもなく有名にされてしまった。
「十五人の殺人者たち」 Fifteen Murderers(1943) ベン・ヘクト
>現代の医学者たちの集まりのうちでももっとも神秘に包まれているのは、ニューヨーク市で開かれる、Xクラブと自称している有名な医学の大家たちばかりの団体の会合だった。この医師たちの小さな一団は、三ヵ月ごとに、イースト川を見おろすウォルトン・ホテルに駆けつけ、近ごろの新聞記者の目さえもとどかない、ドアというドアには鍵をかけた室内で、夜明けまでも続く、えたいのわからない謀議をこらした。
「危険な連中」 Dangerous People(1945) フレドリック・ブラウン
>小さな鉄道の駅のプラットホームのはしに立って、ベルフォンテーン氏は、ちょっと身ぶるいした。空気はかなり冷たかったが、身ぶるいしたのは寒さのせいではない。遠くのほうでまた鳴りわたったサイレンのせいなのだ。夜のやみのなかに、遠くかすかにきこえる物悲しい音――悪魔の苦悶の叫び。
「証拠のかわりに」 Instead of Evidence(1946) レックス・スタウト
>むろん、女ぎらいのニーロ・ウルフは顔をしかめていた。そして、約半インチばかり頭を左右にふった。これは、ニーロ・ウルフにとって、非常にはっきりした否定の態度だった。
>「だめですな」ニーロ・ウルフは力をいれていった。「今までにも、おそらく二百人以上の男女が、現在あなたが腰かけている同じ椅子にすわり、命をまもってくれ、とわたしにたのんだ」ニーロ・ウルフは視線をぼくのほうに切りかえた。「正確にいって、何人だ、アーチイ?」
>おれは調子をあわせて、こたえた。「二百九人」
>「それを、ひきうけたことがあったかね?」
>「いいえ、一度も」
「悪夢」 Nightmare(1950) ディビッド・C・クック
>ポーリンは神経質に暖炉の上の時計に目をやった。針は九時三十二分をさしている。弱々しくため息をついて、彼女は雑誌のページをめくったが、それもあっさりカクテル・テーブルの上にほうり出してしまった。(略)
>両手を見ると、ぶるぶる震えている。九時を過ぎてからというもの、彼女は電話のベルが鳴るのを、今か今かといらいらしながら待っていた。ラリーはペンシルヴェーニア停車場に到着しだい、すぐに電話をかけると約束した。それなのに、もう三十分も遅れている。
「黄金の二十」 The Golden Twenty(1943) エラリー・クイーン
これは小説ぢゃなくて、エラリー・クイーンが選ぶすぐれた書物のリストなんで、そのタイトルを並べとく。
A 最も重要な短編推理小説一〇
1 エドガー・アラン・ポオ 「小説集(テイルズ)」(1845)
2 サー・アーサー・コナン・ドイル 「シャーロック・ホームズの冒険」(1892)
3 アーサー・モリスン 「マーチン・ヒューイット探偵」(1849)
4 バロネス・オルツィ 「隅の老人」(1909)
5 オースチン・フリーマン 「ジョン・ソーンダイクの数々の事件」(1909)
6 ウィリアム・マクハーグとエドウィン・ボルマー 「ルーサー・トラントの功績」(1910)
7 G・K・チェスタトン 「ブラウン神父の童心」(1911)
8 アーネスト・ブラマ 「マックス・カラドス」(1914)
9 メルヴィル・ディヴィッスン・ポースト 「アブナー伯父」(1918)
10 H・C・ベイリー 「フォーチュン氏を呼べ」(1920)
B 最も重要なる長編推理小説一〇
1 エミール・ガボリオ 「ルルージュ事件」(1866)
2 ウィルキー・コリンズ 「月長石」(1868)
3 アンナ・キャザリン・グリーン 「リーヴンワース事件」(1878)
4 サー・アーサー・コナン・ドイル 「緋色の研究」(1887)
5 E・C・ベントリー 「トレント最後の事件」(1913)
6 フリーマン・ウィルス・クロフツ 「樽」(1920)
7 アガサ・クリスチィ 「アクロイド殺害事件」(1925)
8 S・S・ヴァン・ダイン(ウィラード・ハンチントン・ライト) 「ベンスン殺人事件」(1926)
9 ダシール・ハメット 「マルタの鷹」(1930)
10 フランシス・アイルズ(A・B・コックス) 「レディに捧げる殺人物語」(1932)

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