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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

ヤマトの火

2024-10-09 19:12:42 | マンガ
星野之宣 1984年 集英社ジャンプ・コミックスデラックス
これは、ついこないだ9月の古本まつりで見つけて、ちと迷ったけど買ってみたマンガ。
特に、絶対集めるとか、読んだことないものは読むとか、決めてるわけぢゃないんだけど、私にとっての星野之宣、なんか古いもの見つけると気になって買っちゃう。
お話のなかみは、父親が独自に研究してた「火の民族仮説」ってのを、運命に導かれるまま引き継ぐというか確かめようとしていく、北海道出身の青年が主人公で。
縄文時代から日本列島に住みついた、火山を信仰する民族ってのがいて、活動中の火山を求めて列島のなかを北へ南へ移動してたとしたもんだが。
その痕跡としての火焔土器は、関東から北陸にかけての中部火山帯のまっただ中でしか発見されていない、とか言って、縄文・火の民族の最古の遺物だったのではって力説する、いいですね、炎のごとく激しい情念の造形。
沖縄で火の女神を祭るのを見に行ったら、大昔からその信仰をつづけてる巫女たちってのは、もともと古代に日本本土から来たはずだってことになって。
九州の阿蘇へ行くと、折しも大噴火が始まるんだが、古代にも阿蘇の大噴火があって、このあたりに火山を信仰する火の民族が存在したのだ、って遺跡をめぐったりして。
そんで、古代阿蘇の大噴火に、このへんにあった邪馬台国と卑弥呼のほんとうの秘密が隠されてるんだ、って仮説はどんどんエスカレートしていく、楽しい。
物語のなかで、銅鐸が出てくるんだけど、実際のところ銅鐸ってのはモノは出土してるけど何に使ったかわかんないはずなんだが、火の民族が火山信仰の祭祀に使ったんだってことにして、こともあろうに、古代には高さ10メートルくらいの超巨大銅鐸が作られていたはずだ、みたいな展開になってく。
いいですねえ、神話とか伝説とか宗教とか民俗とか全部ぶちこんでつくりあげる、壮大なウソ、好きです、そういうの。
それはそうと、おはなし盛り上がってきたなあと思ってたところ、途中で終わっちゃってます、最後のページには「第1部―火の民族仮説/完」ってあるんだけど、この単行本は第1巻とかって表記されてるわけでもなし、おいおい続きはどこ行くのと思うんだが。
困ってしまって、しかたないんで頼れる資料の『総特集星野之宣』で調べてみると、年譜の1983年のところに、
>「週刊ヤングジャンプ」9月8日号より『ヤマトの火』の連載を開始するも、緻密な作画が週刊ペースにおいつけず14回で中断となる。
って、ある。なんだあ、そりゃ。
で、作者へのロングインタビューの記事のなかを探してみると、
>本来は卑弥呼を主人公にして『妖女伝説』のひとつとして描くつもりだったんです。ただ、『妖女伝説』というシリーズの中で描くにしてはテーマが大きすぎる。
と、きっかけにふれたあとで、中断については、
>『ヤマトの火』を描くまでに2年ぐらいかかってるんですよね。その間、ほとんど仕事しないで準備してたんですよ。ただ、結果的にちょっと力が入りすぎちゃって。「ヤングジャンプ」という週刊誌に連載したんですけど、最初から14回ぐらいで終わるつもりというか、そこまでしか下描きの原稿がなかったので、それをペン入れしながら連載するという状況で。それすらも最後はペン入れが追いつかなくて途中で終わっちゃってるんですけど。
と語っている。
うーん、とくにジャンプ系は壮大なもの描くのにいい環境ぢゃないかもしれないしなあ、そもそも私が星野之宣に興味もった最初の『ブルーシティー』も、時間に追われたのか途中で終わっちゃったしねえ。
で、本作のつづきを知りたかったら、1986年から1991年までかかって月刊誌に連載して、コミックス全6巻になった『ヤマタイカ』を読めということらしい。
どうすっかなあ、わざわざ探しまわるってほど入れ込んでる感じでもないし、揃いの古本でもたまたま見つけたら買っちゃうのかもしれない。
本書「第一部―火の民族仮説」の目次は以下のとおり、各話のタイトルみると、なんか雰囲気あっていいでしょ。
序章 北海道
第1章 沖縄
 仮説(1) ニライカナイ・祭(マテイ)
 仮説(2) 女神再臨
 仮説(3) 古代巫女団
 仮説(4) 火・焔・銅・鐸
 仮説(5) 阿蘇火山
第2章 火の国
 仮説(6) 超古代銅鐸・オモイカネ
 仮説(7) 邪馬台国
 仮説(8) 火山列島
 仮説(9) 起源・火の国
 仮説(10) 卑弥呼=アマミキヨ!?
 仮説(11) 火の巫女王(シャーマンキング)
 仮説(12) 阿蘇大噴火
 仮説(13) 邪馬台国滅亡
コメント
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