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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

魔障ヶ岳

2012-06-18 16:20:48 | 諸星大二郎
諸星大二郎 2005年 講談社
副題は「稗田のモノ語り」ということで、妖怪ハンター。
いま改めて気づいた、これ出た当時意識しなかったんだけど、妖怪ハンターったら「ジャンプ」・集英社だったのに、これ講談社だ。
いま講談社・モーニングで西遊妖猿伝やってるわけだが、いつのまにかそういうことになってたのか。ちなみに、この単行本は小説現代「メフィスト」に掲載された作品をまとめたもの。
さて、この妖怪ハンター本は、一冊をとおして一つのテーマになってるんで、一本の長編と呼ぶことができるでしょう。
魔障ヶ岳(ましょうがたけ)という、山岳信仰の対象になってる山のなかにあるという遺跡を、主人公稗田とその後輩の考古学者という赤井がたずねる。
物の怪がでる山道をたどって行きついた先は、天狗の秘所とか呼ばれてんだけど、そこには、なんだか分かんないモノがいる。
そのモノと対面できたのは、稗田と赤井と、“天狗の宝器”というなんだかわかんないモノが伝わっていて赤井に相談した家の岩淵翔子と、霊場巡りを繰り返していた修験者の信田昭一の四名。
そこで見たモノに、それぞれが名前をつけるが、稗田だけは何もつけない。
この名付けがテーマになってるんだけど、心の中ででも名を付けたり呼んだりしてはいけない、その名を呼べばそれが現れる、恐ろしいことが起きるというコンセプトがなんとなーくでも分かってくると、それはおもしろい。
わかりやすいイメージでいうと、ゴーストバスターズで、最終の敵が登場するときに、何も考えまいとしたんだけど、ダン・エイクロイドがなんかの姿をイメージしちゃったもんだから、巨大なそれが現れちゃったっていう、あの感じに近いんぢゃないかと。
「魔」とか「神」とか「人」とか、考えちゃったひとは、それを山から持って帰ってきちゃう。
「人」の名を呼んぢゃったひとの顛末は、『黄泉からの声』に入ってる「蟻地獄」で、最後に望みがかなうなら或る人をとりかえしたいと願った女性のストーリーを彷彿とさせるね。
で、それはいいんだけど、このシリーズには、直接モノに会った以外の登場人物でも、ひとり面白いキャラが出てくる。
岩田狂天という元は信田の弟子で、狂天騒神会っていう若者に人気の新興宗教を開いた教祖がそれなんだけど、ライヴでラップの御託宣をしたりする魅力的なキャラなんだが、最後に稗田といっしょに謎解きに加わってくる。この先も準レギュラーになれそうな存在かもしれない。
コンテンツは以下のとおり。
序章 魔障ヶ岳
一章 魔に遭った男
二章 神を連れた男
三章 苧環の男
四章 名を付けなかった男
終章 再び魔障ヶ岳へ

おもに一章と三章で、苧環(おだまき)っていう古事記の伝承が題材にとられてるんだけど、神話と現実を重ね合わせていくストーリーの感じが、妖怪ハンターの基本っぽくてイイですね。

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