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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

勝負勘

2022-05-07 18:58:09 | 読んだ本

岡部幸雄 二〇〇六年 角川oneテーマ21新書
こないだ藤澤先生の本とかといっしょに長くしまって眠っていたのを発見した新書、やっぱ持ってたことすら忘れてた部類にはいる、すいません。
岡部さんは2005年に現役引退したんで、出版はその翌年ということになる、なぜにその時期にこういうタイトルのもの出したのかはわからないが。
ちなみに、角居調教師の著書のなかでは、
>(略)未勝利馬でも500万条件馬でも、1頭1頭、それはていねいにコメントをくれます。馬に対してのみならず、馬場入り後、手綱を放す際、馬を引っ張る厩務員に「こういうタイミングで放さなければいけない」など、一流の考え方を教えてもらいました。
>名ジョッキーの言葉が聞けるため、岡部騎手の騎乗には毎回のようについて回りました。(『挑戦!競馬革命』p.92)
と、その偉大さを称えられています。
「勝負勘」ってのは、字面でなんとなく雰囲気はわかるが、あまり聞きなれない言葉であるような気がする。
>勝敗を分ける「勝負勘」とは何か、といえば、「直感」が占めている部分が大きいはずだ。
>レース中、どの場面で細心の騎乗を心がけ、どの場面で大胆な騎乗に打って出るのか。
>そうした判断も勝敗を分けるポイントになってくるものだが、それだけではない。
>(略)実際のレースにおいては、スタートからゴールまでのあいだに次々と勝負の選択肢が差し出されてくる。
>(略)そうした際には、ただ目の前の状況だけで判断するのではなく、「先を読む姿勢」も求められてくる。(略)
>そんなひとつひとつの局面で、自分がとるべき策を選択していくことが、競馬における勝負勘だといえるだろう。(p.22-23)
ということらしい。
競走中は次々と選択肢が突きつけられても、考える余裕はないので、一瞬の判断が求められる、だから勘という言葉を使ってしまってるんぢゃないかと。
あとからゆっくり振り返れば、あそこではこうこうこうだからこうしたって理屈の説明はできる類の選択なんだけど、レース中はそれは勘といえちゃうレベルのスピードではたらかせていると。
その勘をつくりあげるものについては、
>勝負勘を育てるのは経験である。(p.179)
とズバッと言ってます。
>外国人騎手や地方競馬の所属騎手が好成績を挙げていることに対しては、「馬を追う技術が高い」などと評価する声も聞かれるが、そうした技術の差より大きいのは経験である。
>馬を追うのにしても腕力というのはほとんど関係がなく、それよりはむしろ、いかに腕力に頼らずに馬を走る気にさせるかが問われるものなので、そういうところでも経験が活きてくるのである。(p.178)
と当時の状況についても触れたうえで、ケント・デザーモ騎手は19歳のころは一年間ほとんど昼夜かけもちでレースに乗っていて、西海岸でのトップに駆け上がったという例もあげ、
>こうして経験を積み上げていけば、局面ごとに脳に送られてくる信号の質がそれだけ高いものになるのは当然だろう。(p.179)
という、ご自身が生まれつきの直感をもってるようないわゆる天才型ではなかったという話もしながらの、そういう結論にいきつく。
どうでもいいけど、ときどきトップクラスのジョッキーの騎乗で驚かされるのは、なんかレースを俯瞰してるみたいなとこあることなんだよね、視界に入っていないはずの後ろのほうの他馬の動きまで見えているかのように仕掛けたり、あれはなぜできるんだろうと不思議。サッカー選手でピッチを俯瞰できるひとがいると聞くのでその類かと。
さて、岡部さんといえばルドルフなんだけど、もちろん本書でも一章がさかれています、有名なダービーで動こうとうながしてもルドルフがまだだって動かなかった話とか。
あと、岡部さんといえば「馬、優先主義」なんだけど、それは毎年のようにアメリカに行くうちに理解できたという。
>馬にとっていいことならどんなことでも行い、悪いことはいっさいやらないという姿勢は随所に見て取れる。アメリカでは馬の状態を何よりも優先させているのである。(略)
>どちらが上でどちらが下といった発想などはまったく持たず、自分がしてもらったら嬉しいだろうということを馬に行い、自分がされたら嫌だろうということは絶対にしない。
>そんな様子を間近で見てきたために、私は「馬、優先主義」の気持ちを強くしたのだ。(p.147)
だそうです。
コンテンツは以下のとおり。
第一章 勝負勘と、情報のコントロール
 1 勝つための方法
 2 勝負の世界における情報の意味
第二章 運と転機
 1 必ず迎える「転機」
 2 ビジネスと、妥協なき選択
第三章 忍耐とステップアップ
 1 ゼロからの出発
 2 焦らない「自然体の歩み」
第四章 育成術と、勇気ある決断
 1 トータルとしての結果を考える
 2 「やめる決断」と「馬、優先主義」
第五章 周囲の力と、発想の転換
 1 組織のあり方と、日陰の存在
 2 人と違うことをやる!
第六章 勝つ秘訣と、集中力
 1 コミュニケーション能力と、敵ある戦い
 2 勝負勘は、誰でも手に入れられる
終章 第二の人生
 1 引退と、その後の選択
 2 人生、テイク・イット・イージー


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