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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

石の花

2022-03-13 18:44:33 | マンガ

坂口尚 1996年 講談社漫画文庫版・全5冊
これは米原万里さんの『ガセネッタ&シモネッタ』のなかの「芋蔓式読書」で採りあげられてて気になって、ずっと探していた、今年の年明けにようやく5冊そろいで古本を買い求めた。
>『石の花』は、第二次大戦中のユーゴスラヴィアを舞台にした内戦と対独レジスタンスを物語る漫画です。(略)島国のわれわれには何度聞いてもわかりづらい入り組んだ多民族国家の歴史が、手に汗握る波乱万丈の物語と激動期を生きる人間たちの姿を通して、心と頭にしっかりと刻み込まれるんですね。
>あまりに感動したので、二〇セットくらい買い込んで、友人たちに配ったんです(笑)。感動した心は共鳴効果を求めてやまないんですね。わたしが送りつけた人たちが、またアチコチに配るという現象が起きた。(『ガセネッタ&シモネッタ』p.279)
というスゴイ褒めかたされてるんだが、めぐりめぐって当時の外務大臣のところへも誰かが送って、90年代前半のユーゴ情勢に関する理解に役立った、とかまでの尾ひれついた話になってる。
(ちなみに、1992年からのボスニア紛争については『ドキュメント戦争広告代理店』が詳しい。←いま現在戦争やってる地域でも広告代理店が入ってるんだろうなー、と私なんかは思ってしまう。)
まあ私もユーゴスラヴィアの歴史とかに予備知識もないし、特に興味をもつ必要もないんだが、そこまでおもしろいなら読んでみたいと思わされたわけで。
物語は1941年にナチスドイツがユーゴスラビアに侵攻したとこから始まる、三国同盟に加わらないなら戦争だと。
主要登場人物のひとりである16歳の少年クリロは、突然のドイツ軍の攻撃にあい、家族とも学校の友達とも離れ離れになり、やがて山に隠れるゲリラ組織の一員となって、終戦まで戦い続けることになる。
で、ドイツは圧倒的な軍事力でユーゴ国内を抑え、捕まえた人々を強制収容所に送り込んで強制労働させる、働けないやつは処刑。
ドイツのやることはある意味わかりやすくて、優秀な自分たち民族が支配者になり、劣等な民族は奴隷だって、妙な信念で突き進むだけ。
抵抗して戦ってるユーゴスラビアのほうは、実は複雑で、そこんところが単純な敵国対自国の戦いだけの図式になってない。
スロヴェニア、クロアチア、セルビア、モンテネグロ、マケドニアの五つの民族が住み、四つの言語、三つの宗教、二つの字を持つという、複雑な国。
ときには国内で民族が対立して、敵はドイツ軍だけぢゃないって事態になる、はなはだややこしい。
もとは国王のいる王国だったのに、三国同盟に加わるってことに反対した勢力が革命を起こす、ってとこあたりが物語のはじめなんだけど、その後も亡命政府を支持するグループと、共産主義を掲げる勢力とがいて、ドイツに抵抗しようにもなかなか一枚にならない。
イギリスとかも対ドイツとしてユーゴに支援はしたいんだけど、共産主義がひろがるのはちょっととか思惑あって、国際情勢ってやつは難しい。
個人レベルでも裏切りとかいろいろあるし、政府の隠し資産の黄金をめぐる陰謀とかのドラマ要素もあって、なかなか私なんかには一読しただけでは歴史がしっかりと頭に入ってこない、もうちょっと何度か繰り返し読まないと。
初出は「月刊コミックトム」の1983年から1986年の連載だというが、なぜにその時代に日本人が第二次大戦のユーゴ情勢のマンガ描いたんだろうと思うんだけど、最終第5巻に著者による「なぜ漫画でユーゴを描いたのか」という文章がある。
第1巻 侵攻編
 第1話 春のあらし
 第2話 一夜の変転
 第3話 強制収容所
 第4話 激流の中の双葉
 第5話 バラの棘
 第6話 ドブロヴニクの潮風
 第7話 再会
第2巻 抵抗編
 第8話 幻
 第9話 燃える山河
 第10話 炎熱
 第11話 硝煙の中
 第12話 一発の銃弾
 第13話 狭霧
第3巻 内乱編
 第14話 二つの抵抗運動
 第15話 内戦
 第16話 冴ゆる星
 第17話 復讐の炎
 第18話 1943・ビハチ
第4巻 激戦編
 第19話 果てしなき行軍
 第20話 渦巻く風
第5巻 解放編
 第21話 KZ(強制収容所)――第5号棟
 第22話 夜の轟き
 第23話 抵抗
 第24話 まなざし


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