いしかわじゅん 2008年 バジリコ
こないだ同じ著者の『秘密の本棚』読んだあとに、そのまえ読んだ『漫画の時間』の続編があるらしいと知って、9月頃に古本を買い求めた。
あとがきによれば、前著が好評だったので続編を求められたそうだが、前のだって十年分の原稿から編んだものだから、そんなすぐできない、ってことで結局12年かかったそうだ。
初出は週刊誌とか月刊誌とか新聞とか単行本の解説とかいろいろらしい。
NHKのテレビ番組でマンガをとりあげるのをつくったのも、『漫画の時間』に起因してるんだそうだ。
テレビでの発言には反響も多くて、よく言われるのが「いったいなに様のつもりだ」ということらしいが、まあ、そう言われるんぢゃないかと。
>(略)みんなさんざん口を極めて罵っているようにも見えたかもしれないが、それは違う。みんな、あまりに面白くて、我を忘れてその面白さをいい募っているので、一見誉めてるようには見えなかっただけなのだ。(p.149-150「最高の人」)
という調子で一歩もひかないから、そりゃあ絵が下手だとか言ったら怒る相手もいるだろう。
面白いのを見つけるのはたしかなんだけど、面白くないものに容赦なく面白くないって言うからね、退屈だとか、弱いとか、センスがないとか、悪口のボキャブラリーもけっこうあるし。
>読者が気づかなかっただけなのだと思う。
>こういう一見普通の漫画のふりをした新しい漫画は、気づくのに時間がかかるのだ。そして、読者が気づくころには、もうそれは当たり前のこととなってしまっていて、読者は自分が新しい存在に気づいたことにすら気づかないのだ。(p.327「カッコいい木葉」)
みたいな言説を駆使するところが、ともすれば「私だけが知っている」というふうに聞こえちゃうのではないかという気がする。
それが、ひとによっては、「俺様>>>一般読者」みたいな位置にいるのか、って受け取っちゃうのかもしれない、しょうがないですよね、プロなんだから。
>ぼくは、誰かの才能を測る場合、ふたつの基準でもって考える。
>ひとつは、その作品が僕の発想の及ぶ範囲であるかどうか。そしてもうひとつは、自分の生活が脅かされるかどうかだ。(p.356「よしもとの謎」)
というように書いてあるのは、ずいぶんと正直だなと思って、印象に残ったけど。
私は幅広く手を出すことはしない怠け者なんで、採りあげられてる作品は読んだことのないものいっぱいなんだけど、特に今回、次これ急いで読まなきゃ、ってものは見つからなかった。
坂口尚『石の花』は、たしか米原万里がホメてたんで、読んでみたいと思ってはいるけれど。
どうでもいいけど、本書のなかで、数人と一緒に歩いてた著者が、少年ジャンプの編集者にバッタリ会ったときに、「この子が、高橋留美子さん」と紹介したら、その編集者はすぐに近所の中華料理屋に全員を誘って、個室をとって料理をどんどん運ばせた、っていうエピソードがあるんだけど、出世する編集者はそうでなくちゃならんのかと、感心した。
第一章 漫画は冒険する
第二章 BSマンガ夜話
第三章 愛の漫画
第四章 彼らの肖像
第五章 秘密の花園
第六章 美しい物語
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