うたたね日記

アニヲタ管理人の日常を囁いております。

Shots!

2023年04月29日 21時13分06秒 | ノベルズ

それは何の変哲もない午後のある日―――
<パン、パン、パパァーン!>
「よし!」
防音用の耳当てとゴーグルを外しながら、シンがえらく上機嫌に声を上げた。
「6発中、5発命中っと♪」
ここはオーブ国内に設けられているZAFT軍出向所内の一角にある射撃訓練場。
そこには二人の赤服が並んで研鑽を積んでいた。
「いいなぁ~シンは。私なんて、6発中4発よ。しかも静止対象で。」
「ふぅ~」とため息をつきながら、同じようにゴーグルを外すのはルナマリア。
射撃訓練には固定された的を狙う静止型と、動く対象の的を撃つ動作型がある。だが、アカデミーTOPの証である赤服でさえ、なかなか静止対象でも正中に当てるのは難しい。
事にルナマリアは、MSの腕はともかく白兵戦での射撃訓練は苦手としていた。
「ま、練習しかないだろ?ルナはMSの操縦の腕は凄くいいんだし、白兵戦のナイフ訓練は男子だって敵わないやつが多かったんだから、自身を持てって。」
「うん、ありがとう、シン。」
(これでも一応彼氏だし、励ましてくれているのかも…)
そう思ってシンが差し出してくれたタオルを受け取り、苦笑交じりに顔の汗を拭きとっていると

「お前たち、精が出るな。」

この国でテレビ越しにすっかり聞き慣れた声が、リアルで聞こえて二人は振り向く。するとそこには幾人かのSPを従えたカガリ・ユラ・アスハ、その人がいた。
「っ!何でこんなところにいるんだよ!アスハ!」
戦争が終わり、ナチュラルとコーディネーター、地球側の先頭に立つオーブとプラント、双方の歩み寄りが着実に進む中、相変わらずこの二人、いや主にシンが今だ彼女とは距離ができたままだった。
「シン!敬礼!!」
慌てて彼氏を諫めるルナマリア。だがカガリは違う。シンが噛みつこうが全く平静を保ち(※それがますますシンは苛立つらしい)「大丈夫だ」という意味で両手で押さえるよう受け流している。
(すっかり、あの頃とは別の人になっちゃったな…)
第二次ヤキンドゥーエ戦において、終戦に導いた三隻同盟。その中で艦長を務めながら、アスラン・ザラと協力してジェネシスの発射を止めた紅の機体を駆る王女。ニュースを聞いた時はルナマリアと、おそらくは妹のメイリンも同じ女性として憧れた。ところが2度目の大戦の引き金となったMS強奪事件で奇しくもミネルバに乗り合わせたときの彼女は、シンに咎められてすっかり意気消沈し、挙句身を売るような形で結婚するという顛末を聞き、その思いが色あせたものだ。
しかしこうして誰より先に先頭に立つ彼女は、いつの間にかすっかり代表の風格を携えていた。ラクス・クラインと並び「二人の女神が支える世界」と称される今の世。あながち間違いではないのだろう。
そんな邂逅するルナマリアにカガリは笑いかける。
「いや、気にするな。こちらもキラからの定時連絡を受けた所用でここに来ただけだから。射撃か…懐かしいな。」
彼女を救助したミネルバでも、こうして訓練は続けていた。あの時アドバイスをくれたのはアスランだったが、その様子を彼女は何処からか見ていたらしい。
それに代表自身もMSに乗っていたくらいだ。拳銃の扱いも一応心得くらいはあるのだろう。
しかし、今や自分の護りはSPに任せている彼女だ。「懐かしい」という一言に、どうにもシンのマウントセンサーが反応したらしい。
「はん!どーせアスハが撃ったところで1発くらいだろ、当たるの。まぐれで2発ぐらい当たったら、この俺が直々に褒めて差し上げますよ♪」
「シーンーっ!!」
全く、ここで国際問題を起こされたらこっちも困る!慌ててシンを諫め続けていると、
「いいのか?撃ってみても。」
興味深そうにカガリの金眼が輝いた。
自ら墓穴掘りに来た、チャース☆とばかりにシンの口角が上がる。
「どうぞ。ま、手首痛めたとか後で文句言わないで下さいよ。」
そう言いながら、手持ちの拳銃をカガリに手渡す。と
「わかった。」

<パン、パパン、パパパァーン!>

「「え!?(゚Д゚;(゚Д゚;)」」
シンとルナマリアが絶句する。
構えるや否や速攻撃ち出したカガリの弾は、一発しか正中に当たらなかったと思ったが、コーディネーターの目はしっかりととらえていた。

正中に―――全ての弾丸が命中していることを。

しかも構えてからの初発までの速さは、コーディネーターの、しかも軍事訓練を受けた者であっても、ここまで速い人は二人の記憶の中でも数えるほどだ。
口を開けたままポカーンとしているシンとルナマリアに、カガリは「ほら」ときちんとバレルを持って、銃をシンに返す。そして出口に向かって歩き様
「久しぶりだけどこのくらいの距離の静止対象なら、軍人経験者なら当たるだろう。ありがとうな、シン。あ、それから―――」
「な、なんだよ…」
カガリは振り返りながら拳銃を指さし
「その銃のシリンダー、固くなってきているから、ちゃんとグリース塗っておけよ。あとルナマリア、」
「は、はいっ!」
「撃つときに手首捻っているから、そこは止めた方がいいぞ。カップ&ソーサーより掌底でグリップを固定する方が安定するから。じゃ!」
そう言って片手をあげると、そのまま威風堂々と二人を背に彼女は立ち去った。

「「…(゚Д゚;(゚Д゚;)」」
呆然実質と固まった二人が我に返って、慌てて駆け出す。走り込んだのはZAFT指令室への直接コール。
<あれ?二人とも、なんかあったの?>
そこには白服のキラ・ヤマトがそこにいた。
「よかった!アンタに―――じゃない、ヤマト司令にお伺いしたいんですが」
<何?>
「アスハの…アイツMSだけじゃなく、銃も使えるんでありますか!?」
言葉遣いが変だと、ここでいつもならつっこむルナマリアも、今はその余裕すらない。そして画面の向こうのキラは、ごく自然な表情でスルリと答えた。
<え?カガリの銃の腕前?うん、僕より凄いよ。だってバクゥの関節駆動系にバズーカ撃って、一発で身動き止めてたもん。>
「嘘だろ…」
シンが言いよどむのも無理はない。開発時、駆動系に優れた高速型MSとして名高かったバクゥが、バズーカの一発で仕留められてしまっていたとは。
<あ、ちなみに僕はその頃、銃を蹴っ飛ばすくらいしかできなかったんだけど、今は成長してね!セフティー外せるようになったんだ!凄いでしょ!?✨>
((この人に聞いた俺(&私)が馬鹿だった…(_ _;(_ _;)))
MS戦闘においてもはや全宇宙でも一人を除いて敵うものは無しの、ZAFT軍きっての勇将は、白兵戦において全くの役立た…いえ、素人同然なことをすっかり忘れていた。
<ねー、聞いてるー?>
目を輝かせながら「褒めて♥」をおねだりする上官との通信を、一刀両断でスイッチを切り、二人は考える。

もっと正確に彼女の腕前を知っている人といえば―――この人しかいない。

「え?カガリの銃の腕前?」
白で揃えたオーブ軍軍令部には、不釣り合いな赤の制服が二人。
面会を強く申し出たシンとルナマリアに、流石に国家機密の溢れた本部内では無理だったが、それでも別室を用意してくれたのはアスランだった。
早速二人は我先にと身を乗り出しながら
「はい、どうしても正確な目で見てどのくらいの腕前なのか知りたくてですね。」
「アカデミーでも教官すら敵わなかったという、右に出るものがいなかった、伝説クラスになっているアスランさんの目なら間違いないかと。」
「右に出るものって…」
国外の軍人がこんなところまできて、一体どれだけの重要事項なのかと思えば…アスランは半分呆れつつも、だが、どこか嬉しそうに答えた。
「そうだな、俺はアカデミーの教官でさえ、傷一つつけられた覚えがないが、父を除けば、敵だった時に唯一カガリにだけ2か所も銃創付けられたよ。」
そう言ってどこか愛おし気に右肩を摩る彼。すると対面に坐した二人は逆に表情がみるみる固まって―――

―――翌日。
「え?二人が面会を希望?うん、まあいいや。通してくれ。」
これまた行政府に不釣り合いな赤服二人が、カガリの執務室に押しかけてきた。
いつものように不遜な顔をして…と思いきや、二人とも畏まって敬礼する。
(へ…?)
違和感を隠し切れないカガリの前で、二人は
「アスハ代表、その…」
「なんだ?」
瞬間、二人は並んで一斉に土下座した。
「「お願いです!弟子にしてください!<(_ _)<(_ _)>💦」」
「え!?Σ( ̄口 ̄|||)」

***

一方同じ頃、アスランはわき腹を摩る。
「…そういえば、カガリにつけられた銃創の一発は、オープンボルトの暴発を止めたからだったな。…でもまぁいいか。これも俺がカガリの物だという所有の証だしな♪」

1人満足そうに微笑むアスラン。

・・・この後、彼にカガリから「お前の後輩なんだから、責任もって二人に徹底的な拳銃のレクチャーをしろ」という特別任務が加わり、カガリと過ごす時間が削られたことで、二人にフレッド教官以上の恐怖の特訓が行われたことは言うまでもない。

 

<終>

***


ということで、滅茶苦茶短いワンカットSSをお届け。
実は一昨日の夜、珍しく種の夢を見まして。その内容が↑だったんです^^;
多分「明日、オフィシャルブックが届くよ!」という配送案内のメールを見たからでしょう✨
かもしたの夢に出演するのは何故かシンちゃんが多くって、潜在的に「姫と仲直り」若しくは「姫の凄さを知って、ちょっとだけでもいいので見直す」シンちゃんを見てみたいんだと思います。それが極端に歪んで(苦笑)こんな形に♥(´∀`*)ウフフ
Twitterで概要だけUPしてみたんですが、想像以上に反応があったり、息子から「是非とも短編を」との希望もあったので、チャラチャラ~っと書きなぐってみました。

ともかく、劇場版では↑みたいな形じゃなくていいので、姫とシンちゃんが和解する、若しくはシンちゃんがオーブを助けてくれる展開が見てみたいな~と希望を込めておきます(`・ω・´)ゞ

あとは18日の双子誕生日のネタが降臨してくれないかな~
その前に、ぎっくり腰がまだ痛い( ;∀;)…こっちも早く治って💧

 


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