ゲームホリック

ゲーム大好きぃ!!でゲーム脳なのであること無いこと書き散らします。

シューティングを救え!セガじゃなくて。

2008年11月09日 | ゲーム
よく知られているように、セガを救うと言う題材を扱ったドリームキャスト用RPGである『セガガガ』は非常に安い作りになっています。作りの安さは僕のような素人の目から見ても明らかでした。『おとなのしくみ』での対談で、ゾルゲさん自身述べていたように、エンジンすら積んでいないのです。要は『セガガガ』はRPGではなく形式的にはADVなのです。

基本的にセガ社内というダンジョンだけがあり、章ごとの目的に沿って進めていくと言う手法でなるべくダンジョンの少なさに気付かないように気を使っています。そこへゾルゲ節とで言える目くらましの如く、シミュレーション要素に人形劇や同社のパロディーやゲーム業界ネタ、それはしばしば自虐的に、が多量に投下され、RPGではなくてADVである本質を見事に隠蔽しています。


『セガガガ』こそゲームプロデューサー、ゾルゲール哲こと岡野哲さんのゲーム作りの本質が現れているように思います。



で、「EDGE」の記事です。色々興味深い部分があるのですが、特に気になった『サンダーフォース』開発の部分を引用してみたいと思います。

「Saving Shooters」(EDGE MAGAZINE ONLINE)

記者:『サンダーフォース』の精神を無傷なままにするために、特に何に言及します?

岡野:アイレムの『R-TYPE FINAL』とは異なったアプローチを取りたかったんです。『R-TYPE FINAL』で開発者たちは全てを変える決断をしました。私は(変革よりも※引用者補足)原典に戻ることを好んだんです。メガドライブで『サンダーフォース』シリーズを遊んだプレイヤーに”サンダーフォース”を届けたいんです。3D化が、完全に駄目にしたわけではなくとも、ダイナミックなカメラアングルを含めることでシューティングの楽しさを変えてしまったのだと考えています。 そしてますます多くのシューティングゲームがキャラクターデザインに頼りきってしまっています。私が求めていたものは原初的なシューティングゲーム体験でした。だから私は『サンダーフォースⅥ』を作っています。今XBOX360かPS2のシューティングゲームの多くは気楽に楽しめる物ではありません。ゲームをするには、本当に集中し尽くさなくてはなりません。シューティングゲームを気楽に楽しんでいた時に戻れれば、とても興奮してシューティングゲームを買いに行くでしょう。そうなれば、仕事が終わって家に帰ったら、缶ビールを開けて、すぐにシューティングゲームを楽しめるでしょう。今日、シューティングゲームはあまりに複雑になりすぎたために、かなりの集中を要します。『サンダーフォースⅥ』を作っている時、私はあの興奮を取り戻したかったんです。何も考える必要が無く、ただ撃ち、敵の群やボス達をやっつけ、勝利を成し遂げたことの対価を得る。 異様なキャラクターデザインも洗練されたシステムも要らないんです、純粋に撃つ喜びだけあればいいんです。


この部分を読むと、ゾルゲさんが『TFⅥ』に込めたコンセプトが垣間見れます。ここで「XBOX360かPS2のシューティングゲームの多く」と暗に述べているのはいわゆる弾幕シューティングだと思います。弾幕は集中力を必要とし、複雑に過ぎるため、気楽に楽しめないとしています。気楽に楽しめるシューティングが必要と、ビール片手にシューティングを…ってこれは水口哲也さんが『Rez』の際に述べていたコンセプトそのまんまです。

すこしきつめな言い方をすれば、このインタビューでゾルゲさんが述べているようなコンセプトを持ったゲームはすでに発売されているし、しかもセガから、ただ撃つだけというのはまさに『Rez』であって、普通の、海外で言うところのアーケードシュータータイプのシューティングは撃つだけではないはずです。撃つと避けるのバランスだとシューティング歴4年の人間としては思うのですが。あと『TF』を題材として選んだ割には、演出に関して否定的なことを述べていることには違和感を覚えます。面白さの半分以上が演出にある『TF』を”撃つ”だけのゲームにする必要は無いと思うのですが。


記者:今回の開発で最も難しかった点は何でしょうか?


岡野:あり過ぎて話したくないんですが…しかし…そう…お金ですね!今、シューティングゲームを開発する潤沢な資金を得る方法がありません。『セガガガ』を思い出させますね。予算に大変気を使わなければならず、また開発の間私たちのやり方でクリエイティブであろうとしなければなりませんでした。しかしこの一方で、このプロジェクトにはクオリティという別の問題がありました。『サンダーフォース』のような10年以上作られていないシリーズがあれば、それはもう伝説の域に達してしまいます。それらすべての凄い瞬間、場面やボス云々について話して、皆、旧作を思い出して楽しむんです。『サンダーフォースⅥ』は凄い瞬間も場面もボスもありますが、シリーズの色んな作品からいろんな要素を思い出すようなユーザーの支持を得るのは難しいです。『サンダーフォースⅥ』はPS2のソフトです。XBOX360のソフトじゃないですよ。だから『オメガ5』のようなソフトと比べると、『サンダーフォースⅥ』はキレイに見えないでしょうね。しかし日本での、XBOX360の話です。XBOX360は日本ではあんまり売れていませんし、360でシューティングゲームが出るとは思われてません。

(※訳は適当なので、あしからず)


少し事実誤認があるように思います。特にXBOX360の部分についてですが、XBOX360は売れているとは確かに言いがたいですが、多くのシューティングゲームがリリースされています。それがゾルゲさんが言うところのat home出来ないシューティングかもしれませんが、現在最新のシューティングの多くはXBOX360に移植されます。それはコアユーザーの比率が高いため、STGが届きやすいと考えられている為だと思います。なので普通に考えたらXBOX360が適切なハードだと思うんですが…
(追記:某ブログで全訳が掲載されて気付いたのですが、this is not the platform people wouldのpeopleはtheir arcade shooterから考えたら開発者のことでユーザーでは無かったです。)



他にも色々ありましたが要点をまとめると、ゾルゲさんはシューティングゲームが好きだからシューティングというジャンルを再興したい。取っ掛かりとしてご自身も思い入れのある『TF』を。でも『TFⅥ』だけでは意味が無い。シューティング市場を再構築するために数本のシューティングをリリースする。数本のプロジェクトだからこそセガもSTGプロジェクトを決済した、と。で『TFⅥ』は他のシューティングの呼び水となることを期待している、と。『TF』と言う看板が必要だったということみたいです。


複雑化から脱却し、新しいユーザーを狙っている一方で、注目を取るために『TF』を使うと言うのが良く分かりませんでした。シューティングをやらないような人には一生縁の無いタイトルですし、『TF』なんて名前を出したらコアユーザーは『TF』の要素を期待してしまいます。ご本人もトレジャーを使わなかったことを訊かれて、「トレジャーのゲームになってしまうから」と、トレジャー開発にしなかった理由を挙げているのにです。ちぐはぐな印象です。



結局『TFⅥ』の初週販売本数は9800本です。これはRPGやアクションと言ったメジャージャンルの販売本数でさえ1万本に届かないことがざらであることを考えれば、シューティングと言うジャンルでこの本数は商業的には成功と言える部類のものだと思います。しかしゲームのクオリティの部分としては少し疑問符が付くものだと思います。その精神を無傷に出来たのかということにもです。