Action is my middle name ~かいなってぃーのMorrisseyブログ

かいなってぃーのMorrissey・The Smithsに関するよしなしごと。

“I'm Not A Man”日本語訳 およびモリッシーとセクシュアリティー

2014-10-02 00:12:58 | Morrissey Lyrics

モリッシーの新譜“World Peace Is None Of Your Business”

を輸入盤で買った方々から、「この歌の歌詞が知りたい、日本語訳して!」

というリクエストをいくつか受けました。

今日は最近「モリッシーとジェンダー」について考えることも多いので

ツイッターのフォロワーさん川本直さんのリクエストにお応えして

“I'm Not A Man”を訳します。

それにしてもこんなに直接的に「性」に関して、モリッシーが歌うとは…

そのあたりのことは、歌詞の後で書きたいと思います。

 

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I'm Not A Man
 
Don Juan
Picaresque
Wife beater vest
Cold hand
Ice man
Warring cave man
Well if this is what it takes to describe...
I'm not a man

Wheeler, dealer
Mover, shaker
Casanova
Beefaroni
A-ho but lonely
Well if this is what it takes to describe...
I'm not a man
I'm not a man
I'm something much bigger and better than
A man

Wise-ass
Smart-ass
Workaholic
Thick-skinned
Two-fisted hombre, olé
Well if these are terms you'd use to describe...

Oh, I'm shaking
Look at me I'm quaking
True grit
True blue
Kill crazy
So very manly of you
You are the soldier
Who won't get much older
You are the slow Joe
Who signed up to go

Wolf down
Wolf down
T-bone steak
Wolf down
Cancer of the prostate

Ways to sit
And of course
Ways to stand
I'm not a man
I'm not a man
No big fat locker room
Hockey jock
Laughing
I'm not a man
I'd never kill or eat an animal
And I never would destroy this planet I'm on
Well, what do you think I am?
A man?
 
ドン・ファン
悪党
ランニング男
テクニシャン
殺し屋
DV男
うーん、男というものの特徴を言うとしたら
こんな感じにならざる得ないから…
僕は男ではない
 
やり手で商売上手
カリスマ的なリーダー
カサノヴァ
ビファロニ食い(牛肉とマカロニのトマトソース和え缶詰)
なんたる寂しさ
うーん、男というものの特徴を言うとしたら
こんな感じにならざる得ないから…
僕は男ではない
僕は男ではない
僕はもっと大きくてもっといい何かだ
男なんかより
 
知ったかぶり
うぬぼれ屋
ワーカホリック
無神経
血気盛んな奴
オーレ!
うーん、男というものの特徴を言うのに
こんな言葉ばっか使いたくなるんなら…
 
ああ、僕は震えてるよ
見てみてよ、 ぶるぶるいってるだろ
ガチ勇気
ガチ頑固
イカれた奴らは殺っちまえ
なんて男らしいんだろう
老け知らずの軍人だ
参加したがりののろま男
 
はやく食べろ
はやく飲み込め
Tボーンステーキ
はやく平らげろ
前立腺がんに一直線
 
座り方
そしてもちろん立ち方も
僕は男ではない
僕は男ではない
でかいギトギト運動部部室にはいない
馬乗りになったり
馬鹿笑いしたりしない
僕は男ではない
けっして動物を殺したり食べたりしない
そして僕のいるこの地球を滅ぼしたりはしない
ねえ、僕をなんだと思う?
僕は男かな?
 
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この歌を聞いてすぐに思い出したのは、2003年2月、アメリカのティーン向け
 
「戦争とは、僕が思うに、男性のヘテロセクシャリティのもっとも負の側面を表して
いるものだよ。もし、もっとたくさんの男性がホモセクシャルだったとしたら、
戦争は起こらないだろう。なぜなら、ホモセクシャルの男性は、他の男性を決して
殺そうとはしないから。ヘテロセクシャルの男性が他の男性を殺すことを好んでいる
のに対してね。彼らはそれで勲章すらもらうんだから。女性は、他の女性を殺すため
に戦争に行ったりしない。戦争や軍隊や核兵器といったものは、本質的にヘテロセク
シャルの趣味みたいなものなんだよ」
 
私はこのインタビューを読んだ時驚きました。
 
90年代、モリッシーは「マチズモ」への憧憬が強いと思っていた時があったからです。
彼のファッションや、憧れている男性性イメージから、「人は自分が持っていなかった
ものに憧れるんだな」と勝手に思っていたのです。
 
恥ずかしながら昔は、モリッシーはホモセクシャルなのだと思いたがっていた
「元祖腐女子」でもありましたし、ホモセクシャルの中にも(男女問わず)マチズモの
求道者はたくさんいることからこんがらがっていました。
 
でもわかってきました。「なんとかセクシャル」でおさまる人ではないということが。
 
2013年10月には、自伝におけるジェイク・ウォルターズとの2年間の交際に関する
「モリッシー=ホモセクシャル」であるという世間の人々の短絡的解釈について
True-to-youに次のようなコメントを掲載しました。
 
「残念ながら、私はホモセクシュアルではない。厳密に言うと、ヒューマ
セクシュアルということになる。僕はヒューマン(人間)に惹かれる。
しかしそれは、滅多にあることではないが」
 
もっと言えば2000年代になってから私は色々なインタビューからの断片的理解から
モリッシーを恋愛感情を持たない「アセクシャル」(無性愛者)かと思っていました。
それにしてはなんであんな歌作れるんだろ?歌えるんだろ?という疑問は
ありました。
 
それが、「ヒューマセクシャル」というモリッシーの造語により色々クリアに
なり、腑に落ちました。モリッシーはよく人間嫌いと言われており、嫌いな人も
たくさんいます。でも、ステージを目にし、歌を耳にしたファンは彼の「愛」を
知っています。彼には愛しかない。そしてその対象は、人間。
 
モリッシーを知らない人が冗談まじりに
「オカマのおじさんが駄々をこねて歌っている」と言っているのを聞いた
ことがありますが、まったく違う。生物学的な男?女?オカマ?おじさん?
性差というものが、まったく関係ないステージで歌っている。
 
改めて“I'm Not A Man”を聞きながら、
そもそもジェンダーとは、「性差」という項目でとらえるのではなく、
そのような区分を作り上げる力学であるという見方である…という文章
をどこかで読んだのを思い出しました。「男」というこの世の中のマチズモに
裏打ちされた陳腐な区分に、モリッシーは耐えられないのでしょう。
 
今回、この“I'm Not A Man”の日本語訳をリクエストしてくださった
川本直さんの著作『男の娘たち』をちょうど昨日読んだのですがこの歌
にオーバーラップしながら「なるほど」と思うインタビュー引用がけっこう
ありました。
 
 
「性別についてはもう考えていない~最後に辿り着いたのは、何かを
決めつけることじゃないということ。(かつて自認していた)
MtX(Male to X:男性から性別を越境するものの
性自認を男性や女性に規定しない人のこと)というカテゴリー自体
を捨てた。全部そういうものはイデオロギーだと思う。音楽のジャンル
みたいなものだよ」(モカさん)
 
「(いつも女装しており)男と両立することはできない。女装していない時も
女らしくすることを心がけているの。だから、自分は一般的には認知され
ていない新しい性だと思う」(芹那さん)
 
…他にもこの本について色々書きたいことはあるのですが…長く
なり過ぎw
 
一番に驚いたのは、「男の娘たち」の「性」の選び方。確信的な自己
プロデュース力。「なれなかったから女の子になりたい」「自分に欠落した
性を埋めたい」という悲壮感や飢餓感(のみ)でやっていることでは
ない(もちろん苦労もあると思いますが!!)
 
…そこにモリッシーも嫌う「マチズモ一辺倒主義世界」への復讐も
見えて「ざまあ」感もあり、本当に読んでいて気持ちよかったです。
 
キャンディ・ダーリン、ミセス・シャフルウィック・・・
モリッシーはジェンダーを超え、自分で自分の道を見つけ誰の目も
気にせず突き進んでいる
人が好きですね。
 
自伝では、ニューヨーク・ドールズのジェリー・ノーランは、
自分が最初に恋に落ちた「女性」であると述べていました…
 
終わらな過ぎるので、ここでモリッシーがライブ前にかける
トランスジェンダー・パフォーマー、リプシンカを貼って終わります。
モリッシーのライブ前にかかる映像ではちょうどこう
言っていました。
 

あたし!あたし!
学もないし才能もない
でも見て!スターよ!
見て!この生き方を見て!
だって初めてなの
これがあたしの人生!
大好き もう全部好き!
あんたに奪わせやしない
あたしでいるのが好きなの
あたしがいやなら今すぐ出てって
出てって!出てって!出てって!出てって!

Lypsinka Has A Glamour Fit

モリッシー新譜Disk 2 “Julie In The Weeds” 歌詞

2014-09-12 00:36:49 | Morrissey Lyrics

ボーナスディスク、5曲目の“Julie In The Weeds”を訳します。

この前の曲の“Forgive Someone”がたゆたうように終わり

遠くからズームインしていくようにこの曲に始まる…そのつながり

が美しく、この2曲をセットで聞くことも好きです。

 

そしていつも何かに「怒」のモリッシーですが、

この“Julie In The Weeds”の中にあるような少しいびつな青春

時代における苦悩…みたいなものへのまなざしは優しいですね。

声の調子や裏声も。スミスにいた若い頃には出せない寛容さがあります。

 

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Julie In The Weeds

 

Julie lie down in the weeds and see something new

Something new
 
Julie from now on all the pain of youth
It will not trouble you
It will not trouble you

North, east, south, west
No one has a clue
Nobody quite knows what to do

Julie lie down in the weeds and see 
How I look at you
How I look at you

North, east, south, west
No one has a clue
Nobody quite knows what to do

There are some people
Who live in order to tell others what to do
Tell others what to do
As long as there remains steel in my veins
They will not trouble you
They will not touch you
Will not trouble you

 

ジュリーは思い悩んで寝そべって

何か新しいものを見つめながら

何か新しいものをね


ジュリーはこれから 若さゆえの痛みを引き受けるんだ

君のやっかいにはならないだろう

君をわずらわせたりはしないだろう

 

東西南北

誰もちゃんとはわかりっこない

何をしたらいいかなんて誰もわかっちゃいない

 

ジュリーは思い悩んで寝そべって

僕を見ていた

僕が君のことをどんな風に見ているか

僕が君のことをどんな目で見ているか

 

東西南北

誰もちゃんとはわかりっこない

何をしたらいいかなんて誰もわかっちゃいない

 

他人に何をやれとかとやかく言うために生きてる人もいる

お前はこうしろああしろと


僕に鋼鉄の血が流れる限りは

奴らに君を悩まさせたりはしない

君に指一本触れさせはしない

君を悩ませたりしないだろう

 

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ケン・ローチの映画を観ているかのようなストーリーのある

歌詞ですね。誰かに指図されたり人の目を気にしたりわずらわされたり

することなんて「くだらないことさぁぁぁ」と別のあの方の声が脳内でも響くし。


モリッシー、隠居的な「優しいまなざし」どころか、脆弱な悩める若者を

力強い自分が守る気まんまん。

自分だって若い頃は、あんなによれよれだったのに…

 

思い悩んで寝そべっていた頃


もう色々あって、はがねの血が流れる…なう


自分も若さゆえの苦悩でボロボロになりながらもそれがあった

からこそここまで続けてきた、誰かに何かをやりなさいと

言われることなんて構うな、自分のやりたいことをやるんだ

という強い応援歌のように聞こえます。

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個人的なことですが、今日誕生日を迎えました。

もう青春の苦悩は何万光年もかなたのはずなのに、

毎日思い悩むことも多く「さらばできない青春の光」な毎日で

あります。モリッシーはそんな心の青二才もずーっと受け容れてくれる

どう進めばいいか道を示してくれるから、これからも好きでいるぞ~

とまた思い新たに年をとることができました。やったね☆

 


モリッシー新譜Disk 2 “Forgive Someone” 歌詞

2014-09-06 23:28:51 | Morrissey Lyrics

ボーナスディスク、4曲目の“Forgive Someone”を

訳します。

 

実は…私、このディスク2の中で1番、このアルバム デラックス盤

全体の中でも1、2を争うほど好きな曲です。

そして、Youtubeで、先日もご紹介したモリッシーファン

TheAmbitiousOutsiderさん作成のあまりにテーマに

ふさわしい映像を見て、ますます好き心がアップ。

これ、毎日毎日、何度見たかわかりません。


Forgive Someone

 

こちらのPVには、2005年のアン・リー監督のアメリカ映画

『ブロークバック・マウンテン』

の映像が使われています。


この映画は1963年夏、ワイオミング州のブロークバック・マウンテンの山中で羊の放牧のために

雇われたイニスとジャックの、20年間に渡る男同士の友情~愛情を描いたラブ・ストーリーです。

秘密の愛を貫く二人が、様々な葛藤と孤独を経て、性別を超越した永遠の結びつきに至るまで

の過程を描いています。


この後夭折したヒース・レジャー、そしてジェイク・ギレンホールの、淡々と

静謐な空気感の中つづられていく痛々しいまでに美しい関係は、性別とか

巷に蔓延?する安っぽくて気休めな「愛みたいなもの」を超越しています。


ネタバレになるのでこれ以上のストーリー説明はさし控えますが、

最後のヒースのこのシーンを思い出すと

私の頭の中にモリッシーの


Our truth will die with me 
Our truth will die with me 
Our truth will die with me


という歌詞が鳴り響きわたりました…


歌詞と一緒にPVをご覧になってください。

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Forgive Someone

 

Use a weapon of words
Or a fight with your fists 
But can you forgive someone?

Stand your ground and persist 
And be the last one to blink 
But can you forgive someone?

And if you do I'll run to you 
Betray you with a word 
I would slit my own throat first of all I will

The black peat of the hills 
When I was still ill 
See this mess and forgive someone

And then recall if you can 
How all this even began
Forgive someone

And if you do I'll run to you 
Betray you with a word 
I would slit my own throat first of all I will

Our truth will die with me 
Our truth will die with me

Shorts and supports and faulty shower heads 
At track and field we dreamt of our beds 
In the bleachers you sit with your legs spread, smiling 
"Here's one thing you'll never have"

Our truth will die with me 
Our truth will die with me 
Our truth will die with me


言葉を武器にしたり
力にものを言わせてみろよ
でも誰かを許すことなんてできるかい?

一歩もひかないで頑固に言い張ってろよ
ひるんだりなんてしそうもないけど
でも誰かを許すことなんてできるかい?

もし君ができたなら 君のもとに走ってくから
もし君を裏切るようなこと言ったなら
すぐにこの僕の喉をかっさばくから 絶対

まっくろな泥炭の丘で
僕がまだ病んでた時だった
このとんでもないありさまをみろよ
そして誰かを許してみてよ

そしてもしできるなら思い出して
すべてが一体どんな風に始まったかって
そして誰かを許してみてよ

もし君ができたなら 君のもとに走ってくから
もし君を裏切るようなこと言ったなら
すぐにこの僕の喉をかっさばくから 絶対

僕らの真実は僕と一緒に死ぬ
僕らの真実は僕が墓場まで持っていく

半ズボンとサポーター ぶっ壊れたシャワーヘッド
陸上競技場で 一緒にベッドで寝ることを夢見た僕ら
観覧席で脚を広げて座ってた君 笑ってた

「ほら、君が絶対手に入れられないものがここにあるよ」

僕らの真実は僕と一緒に死ぬ
僕らの真実は僕が墓場まで持っていく
僕らの真実は僕と一緒に死ぬ
僕らの真実が僕が墓場まで持っていく
 
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あるレビューではこの歌は、人々に対して、許すよう懇願している

優しい歌だと書かれていましたが、果たしてそうでしょうか。

人々に対する懇願でしょうか?

But can you forgive someone?

…それは、モリッシーの自問に聞こえます。

 

過去に何人もの人に失望し、決裂し、最近ではせっかく結んだレコード会社

との契約も色々な経緯はあったでしょうが終了…たったひとりで戦うことも

多々あったモリッシー、人や物事を許せたらもっともっと人生、楽だったでしょう。

 

個人的なことですが…私も数カ月前にある人から、自分が想定できないような

対応をされて、大きな怒りを覚えました。実はいまだに思い出すと

「なんで!?」「信じられない…なんなの?」といらだちを覚えます。

 

それって結局、負の形での「執着」なんでしょうね。。。

「許せない」というのは、自分が勝とうとしていること。

そろそろ「勝ち負け」の呪縛からは抜けなくては、と思いました。

 

『ブロークバック・マウンテン』のような、真実の愛による執着なら美しい。

墓場まで持っていく大事な、シャツを抱きしめて泣くほどの「僕らの真実」

を内包していますが。

 

この歌を聞いて、ふっと肩の張りつめがとれて「許さなきゃいけないな、許せなくても」

と思いました。大切なことは、「言葉を武器にしたり力にものを言わせてみる」

ことではないよなあ、とこの歌を聞いてしみじみ思いました。墓場にまで持っていく

にしろ、「真実」は逃げも隠れもできないのですから。自分の心にあればいいので

あって人を糾弾する怒りの覆いはいらないのだと思いました。


えっと、よく「言葉を武器にしている」モリッシーもよくわかっているのだと思います。

本当はもうすべてを許しているのかもしれないからこんな歌を歌うのかもしれません。


モリッシー新譜Disk 2 “Drag The River” 歌詞

2014-09-06 02:46:18 | Morrissey Lyrics

ボーナスディスク、3曲目の“Drag The River”を訳します。


これは、「歌詞」というより「歌詩」ですね。

脚韻がふんだんに使われており、作詞しながらモリッシーは

楽しんだのだろうなと思います。モリッシーの好きな19世紀の

湖水詩人(ワーズワース、コールリッジ、サウジーら英国の湖水地方に

住んでいた詩人たちの総称)気取りで…?

 

そして詩の内容は難解です。


川底が、死後の世界~黄泉の国と現世の境界になっている感じがします。

私にはジャン・コクトーがギリシャ神話のオルフェウス伝説をベースに

撮った1949年の映画『オルフェ』を彷彿とさせます。

 

不思議な手袋の力で鏡という境界を抜けて生と死の間を彷徨する

詩人オルフェ役のジャン・マレーが水たまりに横たわるのこのシーンは、

スミスの「ディス・チャーミング・マン」のレコードジャケットとしても

あまりに有名ですよね。


水たまり、川、海…現世とあの世の境界線であり、己を映す鏡のような「水」

のイメージが印象的な、この世に対する諦念も感じられるゆったりとした歌

です。


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Drag The River

 

Drag the river and without her you may find a sliver
Of the one of whom you speak and whom they seek

she would gaze into the river as we’d look into a mirror
And her reflection would beckon her to

Join me join me join me join me
Happy we will be

On the coastal shore I’m sure you’d break down if you saw
And abhorrent torrent crashing as it pours

The counter current holds a secret at the rise of tides
And it swells all alone for this heart born too high

So join me join me join me join me
I’m certain I heard her cry

By the river with the soul of submersible stone
Every second of my life prepares to go

She would call into the river as she’d cry out for her mother
So stark, so haunt, deep enough for all I was

Oh join us join us join us join us
And happy we will be


川底をさらってみて 彼女を失った君はそこで
君が心で話しかけていて みんなが探している
あの子の破片を見つけるだろう

鏡を見つめるように彼女は川をじっと見つめるだろう
そして水面に映った彼女の面影が彼女を誘う

こっちにおいで こっちにおいで こっちにおいで
そうしたら僕ら幸せになれるかも
 
海岸でぞっとするようなどしゃぶりに会ったらくじけちゃうはず
潮高の時、逆向きの海の流れは秘密を握ってる

心があまりに高いところで生まれたから 勝手に潮が高く 差した
こっちにおいで こっちにおいで こっちにおいで
確かに彼女が泣くのを聞いたんだ

川のほとり 水の中の石みたいな僕の魂
人生のすべての瞬間がうつろっていく覚悟をしているんだ

彼女は母親を求めて大声で叫ぶ子のように 川を呼ぶだろう
あまりにどうしようもなくて 
あまりにとらわれてて
みんなと打ち解けない僕だった

仲間になって 仲間になって 仲間になって
そうしたら僕ら幸せになれるかも

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

考えてみるとモリッシーは「川」を描くのが昔から好きですね。

スミス時代の川には、鉛色の川に赤ん坊の頭を沈めていました…

(“This night has opened my eyes”)


そして「川底さらい」と言えば、マンチェスターで失業者時代に、

職安で運河の底さらい(おそうじ)バイトをすすめられて激おこして

いましたw


モリッシー新譜Disk 2 “One Of Our Own” 歌詞

2014-09-03 23:11:49 | Morrissey Lyrics

ボーナスディスク、2曲目の“One Of Our Own”を訳します。

調べてみると1975年のアメリカのテレビドラマに“One Of Our Own”

というのがあり、こちらをモチーフにしたのかな、と思いましたが

病院もの??だかであまりストーリーにはかぶりがなさそう。。。


1995年にも捜査官ジャック・リードシリーズの同じタイトルの

テレビドラマがあります。

パートナーを殺された男が事件真相を暴いていくストーリーなので少し

関係あるのかなー。雰囲気的にはモリッシー観てそうな気もするけど

関係ないかー。


他にも1997年にデンバーの警察官が陸軍軍曹の殺人事件調査

に乗り出すサスペンスドラマがあり…とまたストーリーの関連は薄そうですが、

ひょっとしたら70年代後半にデンバーに移住したおばさんメアリー宅に

滞在していたことのあるモリッシーは観ていたのか?

…とああっ!!妄想が進み過ぎてキリがない!!…ので先に進みますwww


今回ハーヴェストが、アルバムの各曲に対して良いPVを作らない

ことをモリッシーは怒っていましたが、腕のあるファンがその不満に

応えるべく?Youtubeにオリジナル作成のPVをアップしています。

“One Of Oue Own”は、ジャン・コクトー撮った1930年のフランス映画

「詩人の血」の映像を使ったものがアップされていました。

美し過ぎて、この歌詞にぴったりです。ちょっと、デレク・ジャーマン的な

処理もあり…歌詞と合わせてご覧ください。

 

Morrissey - One of Our Own


 

One Of Our Own

Standing at the stone
Of one of our own

He died saving my life
He took the lead
Aimed for my head
Such love shown I'd never known

Give me the gun
I love you
A job half done
Isn't done

Standing at the stone
Of one of our own

He took the plug
And he hit the rug
Such love shown I've never known
Now I don't want to know tomorrow

So, give me the gun
I love you
A job half done
Isn't done

Kneeling at the stone
Of one of our own
 
He took a round
And he hit the ground
He took the blast
His very last
I have no use for tomorrow

No use for tomorrow
No use for tomorrow
No use for tomorrow
No use for tomorrow
No use for...
No use for...
No use for tomorrow
No use for tomorrow
No...

彼の墓 僕らの墓の前にいるよ
彼は僕の命を救った
僕の頭がねらわれて
矢面に立って僕をかばった
 
そんな愛、今まで知らなかったよ

銃をよこせ
君を愛してる
仕事ってのは
終わらせなきゃ意味ないんだ

彼の墓 僕らの墓の前にいるよ
彼は僕の命を救った
彼はこと切れた
床にぶったおれて
 
そんな愛、今まで知らなかったよ
今は明日のことなんて 知りたくもない
 
だから銃をよこせ
君を愛してる
仕事ってのは
終わらせなきゃ意味ないんだ

彼の墓 僕らの墓の前に跪いているよ
彼はふらふらして
あおりをくらってぶっ倒れた
それが彼の最期だった
僕には明日はない
 
明日なんていらない
明日なんてない
明日なんていらない
明日なんてない
いらない
いらない
明日なんてない
明日なんていらない
いらない

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

自分のために抗争の犠牲となった「彼」の至上の愛を思い、彼の墓
~それは明日も人生も失う覚悟を決めた僕らの墓のうちのひとつ、
言わば自分の墓でもある~の前にひとり立ち、跪き、「銃をよこせ、
愛してる」と復讐を誓う僕…

こんなに短い歌ですが、一篇のギャング映画のよう。

これはモリッシー版「男たちの挽歌」と解釈します。
 
 
最初と最後にかすかに聞こえる、讃美歌のような
クリスティーン・ヤングのバッキングボーカル、
最後に向かって天から響きが落ちてくるようなピアノの音、
嘆きと決意の高まりをあらわすかのようなギターの音が印象的。

「明日なんていらない」と、果たさなければならない「仕事」に
立ち上がる僕…待ち受ける運命を、このPVの映像が示唆して
いるかのようです。