Action is my middle name ~かいなってぃーのMorrisseyブログ

かいなってぃーのMorrissey・The Smithsに関するよしなしごと。

モリッシーが序文を書いた「トニー・ヴィスコンティ自伝 ボウイ、ボランを手がけた男」

2017-02-25 21:04:36 | Morrissey Books

年が明けたと思ったらもうすぐ3月!

また間があいてしまいました。

更新していない間、1月にはボウイ展に行ったり、2月には満を持して発売された

「トニー・ヴィスコンティ自伝 ボウイ、ボランを手がけた男」

読んだりしていました。

こちらの自伝、イギリスでは2007年2月に発売、10年を経てやっと日本で

翻訳出版されたのは、昨年からのボウイ・フィーバーの恩恵…かもしれませんが

ありがたいことです!(モリッシーの自伝も、まだ日本で翻訳出版される

望みは絶たれてないかも!?)ヴィスコンティが関わった、ありとあらゆる

アーティストとの逸話はもちろんですが、モリッシー書いている序文だけで

も「買い」です!!


モリッシーはこの序文を「2006年10月」に書いたよう。

2006年と言えば4月に、モリッシーの8枚目のソロアルバム、

“Ringleader of the Tormentors”が発売されました。


このプロデューサーこそが、トニー・ヴィスコンティ。

レコーディングは2005年にローマで行われました。

ヴィスコンティと行ったこのレコーディングを評してモリッシーは

こう書いています。


「いいレコーディングというのは、シンガーもしくはミュージシャンとしての

自分をもっと意識させてくれるものだが、“Ringleader of the Tormentors”は

私にとって楽しみを超えた大いなる喜びとなった。現にヨーロッパではいくつもの

国で、何と1位に躍り出た」


…と、やはり大好きなチャートアクションの話しで締めくくられていますがw

(「いくつもの国」って、多分、イギリス、スウェーデン、マルタ、ギリシャ…で

4国くらいだと思うんですけど。やや盛りッシーw)


「トニー・ヴィスコンティプロデュース」と簡単にレコードには記されていますが、

これはモリッシーにとっては、とんでもないこと。自分のヒーローだった

Tレックスを、デヴィッド・ボウイを、スパークスをプロデュースした、

ヒーロー以上の存在。しかし、憧れを憧れとか、雲の上の人を殿上人で終わらせない

のがモリッシー。


「初期のトニー・ヴィスコンティの名を配したレコードを聴いては、世界に向けて

羽ばたきたいと、どんなに渇望したことか」


と、出会った頃から、「こっち側からそっち側」に行くことを望んでいたのです。

憧れていた人を引き寄せ、その人と仕事までしてしまう…今で言う「引き寄せの

法則」でしょうか?かつて、ネガティブの代名詞みたいに言われていた人は

実はすごいポジティブ確信犯だった…。この序文の出だしは、書いているというより

「刻印」のようです。マンチェスターのスティーブンが「モリッシー」となって

世に出る計画に、多大な影響というより運命づけを与えた張本人の序文を書けるなんて、

なんて、なんて、凄い人。

読んでいると“Ringleader…”1曲目の"I Will See You in Far-Off Places"

の前奏が、脳の奥の方から鳴り響いてくる…。ものすごい「文圧」を、感じます。


そもそもヴィスコンティが、なぜモリッシーの作品のプロデュースを引き受ける

ことになったか。自伝の最後の方に出てきますが、2005年、フランスで新たな

アルバム制作を始めようとしていた矢先にニューヨークのサンクチュアリ・レコード

から連絡があり、社長直々に、すでにローマで制作が始まっているモリッシーの

アルバムのプロデュース依頼があったそうです。アルバム曲を2曲聞いただけで

モリッシーの声に魅了されたヴィスコンティは、決まっていた仕事を延期まで

して、その2日後にローマ行きの飛行機に飛び乗ったそうです!ヴィスコンティは

すでにその時61歳。すごい感性と直感、行動力です。すぐやる課!


…なのにですよ。サンクチュアリ・レコード社長から、ヴィスコンティが

プロデュースを承諾した、と聞いたモリッシーは、ヴィスコンティのことを


「まだ生きてるの?」


と言ったとか(・・;)


(もちろん冗談だと思いたい…)


とちょっとひいてるヴィスコンティ。

でも優しい!相手がヴィスコンティで良かった!

憧れのすごい存在に、冗談でもそんなひどいこと言うな~~!


そして、モリッシーとピザを食べに行ったヴィスコンティ。ピザを食べに

行く前に、モリッシーが自分の曲を聴いてもらいたがるので、夕食の時に曲はすべて

良かったと伝えると、彼は鋭い目つきでヴィスコンティをのぞきこみ


「本当にそう思ってる?」


とと詰めてきたとか。ヴィスコンティは「心からそう思っている」(ブルブル)

と伝えた、って…

憧れのすごい存在に、気を遣わすな~~~!


結局、45日もの間モリッシーと一緒の「楽しい」日々を過ごして、

モリッシーの歌詞と音楽により魅了され、


「私は今では忠実なモリッシー・ファンの仲間入りを果たしている」


とまで言ってくれるヴィスコンティの謙虚さ、器の大きさを感じます。

モリッシーの「ユニークさ」を説明するのは難しいが、「直接的な

質問に遠回しに答えることに喜びを見出しているようなのだ」という

観察もおもしろい(そんなモリッシーの言葉の意味を考えるのが

とても楽しい、だなんて、ヴィスコンティさん、良い人通り越して

ドMなのか…?)


最終的には、ヴィスコンティはモリッシーのことをここまで

持ち上げてます↓


「モズはボウイと同様に、ポップス界においては希有な存在で、

真のジェントルマンだ」


…これを読んだ時のモリッシーの顔が目に浮かびます。。。


(※画像はイメージです)


そんなモリッシーの「尊敬」と、ヴィスコンティの「信愛」がうまく調和して、

2012年のBBC"Studio in Session"で見られる「阿吽の呼吸」みたいなものが

できあがったのだと、自伝を読んで納得もしました。

ここでも、挨拶の第一声が

「生きてる?」

ですよ!生きてるからいるんやないか~

憧れの凄い存在に、笑点における「歌丸師匠いじり」みたいなことすんな~~~!!!


このスタジオセッションでも、1曲、1曲、終わるたびにヴィスコンティ、

褒めます。モリッシーなんて、今までどんだけ人から崇拝されて、褒められて

きたんだよ!と思いますが、グレイト!と言われただけでとても嬉しそう。

愛の「試し行為」的な挑発もするモリッシーw 

1曲終わった後、「ここから聞くと素晴らしく聞こえるね」というヴィスコンティに

「他で聞いたら素晴らしくないということかな」

とか言って困らせてます。

 

こちらの様子、字幕付きのもが“Morrissey 25live”の特典映像として見れますが、

3回に分けたものがYoutubeにも上がっています。

とりあえず、Part 1。

Morrissey - "Studio in Session", Part 1


自分にとっての「あっち側」の象徴だった人に、認められる、という至上の快感を

手に入れたモリッシーの、幸福なレコーディング風景を垣間見られて、こちらまで幸せになります。

ここで歌われる“Action is my middle name”は、彼のここまでのすべてを総括しているようで感無量です。


トニー・ヴィスコンティの自伝、例のごとくこのブログで紹介するとモリッシーに焦点

あたりすぎw ですが、434ページもあるのに、とても読みやすく(誰かさんのとは大違い…)

特にボウイファンの皆さんにも読み応えのある、本当におもしろいものですので

(翻訳者の前むつみさんの丁寧なお仕事には頭が下がります!)

是非お買い求めください!