KADOMIUMTANK ソフビブログ

ヘミングウェイの詩にこんなのがある。
「人生は素晴らしい 戦う価値がある」
後の方は賛成だ byモーガン・フリーマン

昭和の奇獣ビーチバッグの怪獣

2011年10月28日 | モンド・トラッシュ

 昭和の遺物といえる映像、立体問わずまた有名無名を問わず、
当時活躍した怪獣たちの中から異端ともいえるキャラクターをセレクトして紹介していくシリーズ。
今回も前回のステゴザウルス×トリケラトプスに続き、別に珍しくないアイテムですが
当時の売り場でこんな流通方法もあったんだYOーN的な事例を紹介します。



ご存知ミウラの、恐竜のような怪獣のようななんともボーダーレスな存在感を醸し出した彼らです。
本来は上に掲載した「怪獣シリーズ」っていうヘッダー(でも恐竜の絵柄なんですが。これには
ゾッキードが入っていた)をつけて売られていた販売形式以外に、どうもまったく別な売り方も
されていたようなんで、今回それを物証として紹介しつつ、すっかり見慣れた存在ながら
ほとんど詳細が語られない(顧みるヒトが少ない?)ミウラの怪獣たちを通常とは違った角度から
検証してみたりなんかします。
観光地の海の家や釣具店、はたまた電車の駅の近くの露店なんかで売ってたビーチバッグに
恐竜だか怪獣だかボーダーレスな彼らを詰め込んで販売していた「ビーチバッグの怪獣セット」。

こんな状態で古道具店の軒先で発掘。もうパチ怪獣ファンにはおなじみのゾッキード、
コマツドン、ラードンの3体Death。横のハワイアン娘は、付いていません(笑)
なんとなく今回のアイテムが袋の状態だと殺風景なので
華を添えようということでお招きしたいわき市ハワイアンセンターの娘さん。
現地復旧がたいへんなのでウチで当面踊ってもらいます。
ビーチバッグとハワイアン娘。いやがおうにもリゾート気分を盛り上げますネ!


地震も原発も怪獣も、もう怖くない!わたし、もう泣かない!!ただ、今は踊りたいの!!

トントコトントコトントコトントコ♪ハワイアン娘がハードなダンスで踊りながらリゾートの怪獣
たちを出迎えます。観光地で怪獣セットを買ってもらった子どもみたいな気持ちを脳に
思い描いてみましょう。
うわー、買ってもらって嬉しいな、みたことない怪獣だけど。

バッグのビニールに何か花模様が印刷されているのですが、元はこの怪獣セット用の袋で
なかったのかもしれません。砂遊びセットとかおままごとセットとかの袋かもしれませんね。

袋から出し封印を解かれたパチ怪獣3匹。といってもすぐしまえるのでかなり
ユルい封印ですが。じつはどの怪獣も単体売りで別の個体をタコも持っているんですが
(何度も書きますが全然珍しいアイテムではないです)並べて見ていると気がついたことが
あります。色が違うんですよ。ビーチバッグには言ってるほうのはどうもやや派手めに
ブラシワークがほどこしてあるようなんです。

右がビーチバッグラードン、左が普通に単品で売ってたラードン。若干単品の奴は日焼けして
いるきらいはありますが、同じもの。でも銀が多く吹いてあります。
宇宙ギャオス、じゃない宇宙ラードンですね。ミウラの社長さん「子どもたちは光るものを喜ぶんじゃ!!スペース感を出すんじゃ!!翼竜じゃなくて宇宙怪鳥ということで納得して
買ってもらうんじゃっ!」(想像)ということで
多めにシルバーを吹いているのかもしれません。

右がビーチバッグ版コマツドン、左が単品の。顔も背中も赤を多目に吹いてあり
何かおでかけにおしゃれしようとせっせとメイクしてやりすぎたママのようですね。
ミウラハワイカラーとでもいう感じでしょうか・

すいません、ゾッキードはこのビーチバッグの個体以外に2個持ってるんですが
(1個は昔、友人がタコの家を廃棄物処理場と間違えておもちゃを
段ボールに入れて勝手に投棄していった中にあったもの)
いずれも今回のビーチバッグのゾッキードと色加減は同じでしたので比較は割愛。
ゾッキードは塗装したブツがたくさんあったから新規にブラシワークをしないで
バッグ組にしたのかな。
んでもせっかく載せる機会だから、仲間のゴクドーザウルス(これは単品もの)
といっしょにパチリ。
さらに思ったのは、中古でゴクドーよりもゾッキードのほうがよく目につくのは、
このミウラのビーチバッグ作戦によって多く出回ったからではないか?と思う次第です。
つまりビーチバッグのセットに入ったゾッキード、ラードン、コマツドンの3体のみが多く
出回ったのではないか、という推測です。



ハワイアン娘が観光地と怪獣という昔からの怪獣映画にありがちな記号的風景を盛り立てて
タコ部屋を椰子の木の茂ったリゾート気分に、大いに盛り上げてくれますね!
さすがハワイアン娘だ!

しかしゴクドーザウルス、ゾッキードと2パーツながら力強い造形ですね、これはこれで
悪くない。何か怪獣図鑑の南村さんや梶田達二氏の絵に出てくる獰猛な肉食恐竜を
立体化させたような、パチ怪獣ソフビといいながらこれはこれでアリな2体だと思います。
(そういえば梶田氏は最近亡くなられたんですよね。
自分はターゲットアースさんのバグン発売時にサインをいただいて持っております。
スーフェス会場でお会いした時も、自分が持っている怪獣図鑑の絵のことをうかがったり
したときは闊達に当時のことを振り返っていただき、お年を召してても非常に眼光するどく、
それでいてとってもやさしく接してくださりました。

晩年まで商業画伯として衰えもなく活躍しておられたのが氏の
生涯のお仕事ということを強く印象づけている方でもありました。そして怪獣をモチーフに
最後まで切れ味の抜群な絵を描かれていたことも忘れがたいです。
遅くなりましたがご冥福を。。。)

なんだかんだとミウラの大怪獣シリーズや、ミウラの前身である三浦トーイ時代のぺギャオス、
ゴルゴジラ、トリケランなどは異様に現存数が多いのですが、これはなぜか。
彼らはよく知られているパチ怪獣になっています。なぜこんなに当時出回って
いたのかというと、一説によると何か流行りモノのテーマがあるとトレンドに便乗して
バンバン、パチと言うか時代のテーマにのっかったソフビやポリ玩具などを作って、大量に
売りまくる販売形式で続けていた会社だったようです。それも一回何かの限界があって、
ミウラというカタカナの社名に変えてその後も80年代に入った頃まで、うろんな怪獣ソフビ業に
従事しておられたもようです。

しかし、ほかのメーカー、大協やヨネザワなども怪獣ソフビのブームに乗っかってパチ怪獣を
いろいろ出していたものの三浦トーイとミウラほどには現存してないのは、
同社の販路が他のメーカーより売りさばける範囲(おそらくフックトイや駄玩具系の
ルートにおいて)広かったため観光地や売店なども含めたオールレンジ攻撃のように
なっていたのではないか、という興味深い推測を自分よりコレクター歴が長いマニアの方が
聞かせてくれたことがあります。
その中に今回紹介した水寄りの場所でさばくようなビーチバッグのような商品形態も
おそらくあったんじゃないかと思います。

これも単体のヘッダー売りしかしてなかったと思われるメタボなジメトロドン。
古臭い造形ですが、味があります。
コマツドンと同じ4つ足ラインです。このころのミウラの怪獣は恐竜のような怪獣のような
なんとも曖昧感を持たせているのが非常に作り手の脱法的な「売り逃げ感」を漂わせていて
またそれが往時の怪獣ブームの混沌ぶりを現代でもうかがわせる物証のような存在と
なっています。

 古道具屋や閉店したおもちゃ屋の倉庫などにこんな感じでピッチリとビニールと中身の彼ら
とがくっついて、埃をかぶって何十年も干物のようになって封印されて過ごしてきた、
怪獣・のようなものたち。
彼らは作り主の計画していた観光地や駅やインターチェンジの売店などにたどりつく
こともなく、暗い倉庫の中でじっと春の雪解けを待つ動物のように
コールドスリープしながらサルベージの機会を待ちのぞんでいたんでしょう。
恐竜の、じゃなかった怪獣の化石のようですね。
そしてそれは彼らが怪獣ブームの時に自分たちがパチものとして生み出された意味を
セカイに問い存在についての渇望を癒すための眠りのようでもあります。

送り手の脱法的な販売の建前として「ビーチバッグに怪獣いっぱい」の夢を詰め込み
子どもたちの観光地でのささやかな遊びを盛り上げるという
無版権のパチ怪獣たちにはいささか重すぎる使命を帯びた彼ら。
はたして工場から送りだされたうちの何匹が子どもたちの歓声の響く夏の青い海に、
焼きついた白い砂浜に、無事に迷うことなくたどり着き任を果たしたのでしょうか。。。
ミウラの怪獣たちは時間の地層に埋もれていく自らの運命を悟るかのように
うす曇ったビーチバッグのビニールの中で、今はただ物憂げな表情をしてたたずむのみです。

つ【TWO MIX / TRY】

http://www.youtube.com/watch?v=RhtQmOwm1wM