KADOMIUMTANK ソフビブログ

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RESTORE/KINGDOMMIND

2012年11月01日 | インディーズソフビ



RESTOREさんのソフビフィギュア第2作、
KINGDOMMIND(キングダムマインド)ヘッダー。




「こいつはいったい何者なんだろう?」とじっくり思案していたソフビがある。
購入してから出来の緻密さやプレイバリューに驚嘆しつつも
記事には載せないでしばらく手元に置いて眺めていたソフビがこのKINGDOMMIND。
可動の形式や個別に成形されたアイテムパーツなどを見ても
ソフビ人形というよりはソフビフィギュアに近いですね。
送り手にしてみれば、これは「動かして遊んでほしい!」と望んでやまない
ところでしょう。
生々しい髑髏の顔を持ちバロック風の荘厳な教会を思わせる建物を
冠のように乗せている。
KINGDOMMIND、彼は自分を手にした人間にいったい何を説こうとしているのか?
それは全身に込められた多彩なギミックによっておそらく
明かされるところになるだろう。
そう、新しい領域のソフビTOYが誕生した。



手にしているのは左手に賢者の鍵、そして右手には片方の表紙にドーマンセーマンの
マークが描かれ、もう片方の表紙には「MIND」とタイトル?が記された本。おそらく
カバル的な錬金術系の魔法の書と見ていいだろう。

とにかく強大なチカラを手にした怪物なのだろう。その表情は老獪にして、
経験と達観からすべてを知り得た者ならでは到着した、
険しくもただならぬ内面を睨まれた者にうかがわせなくもない。







首、腰、腕と手首も動きます。ポージングにより、多彩な表情が生まれます。
顎に手をあてて思案に暮れるといった、けっこうコミカル目な表情もつけられます。








リアビュー。マントも少し伸縮自在な素材を使っているので、
持ち上げると伸びてここちよいです。
背中も胸と同じでミイラのようながりがりの痩身がむき出しになっています。




カンチャクではなく、ボールジョイント形式で胴体とはめ込まれた
首と腰、両腕が可動します。ソフビフィギュアと分類できる
製品としたのはこのため。しかし人体と同じでこのボールジョイントによる
可動を選択したRESTOREさんの意向はこのキャラに非常に合った的確な
ものであり、特に首の動きはリアルに骸骨のジョイント部のようにグリグリと
動かすことが可能になります。



付属のアイテム類もボールジョイントにより自由に脱着が可能。
キーの回す部分や本の腹の部分、頭に載せた教会は
緻密な彫刻が施されておりリアル系フィギュアやガレージキットの作りこみぶりでは
定評のあるRESTORE造形魂がここぞとばかりに注ぎ込まれています。
そして鍵には「RESTORE」と刻印。



魔法の書にもボールジョイントの凸球体が付き、
これを右手の平の凹部にはめ込む形式になっています。あまりはずすことは
通常のディスプレイ時にはないと思いますが、双方の部品にペイントされた
塗料が融着してしまうかもしれないので長期の保存ではパーツをはずしておいた
ほうがいいかもしれませんね。

頭部の教会の尖塔裏手の部分にも魔法系のディティール。
そしてスカートの下(底部にも)これは錬金術系カナ?の図像が
いっぱいに彫られています。






教会のようなカンムリ部分を取り外し可能。冠の端についた装飾で
はめこむ感じです。冠を外した頭部内には、
ドールアイの目が内側から取り付けられています。
ドールアイは可動し、でっぱりを指でグリグリと動かして
目の向きも自由に変えられます。



ちょっとファビョッたような表情もこんな感じで再現できます。
頭部に手を突っ込んで動かすというモンド風味満点なギミックではあります。

また下アゴも別パーツで口が開いた状態と閉じた状態が再現可能。
ずいぶんカクカク小気味よく開閉するので、つられて遊んでいる自分まで
口をパクパクしてあぶなく鍔関節症になりそうです。

とにかくソフビアイテムとしてはできる可動をすべて盛り込んだという感じで
全身のあらゆる箇所の表情が多彩に変えられるのが、作り手のモチベーションの高さを
アピールします。





KINGDOMMIND、脳みそパカン状態。
美食王のハンニバル・レクター博士が愛するクラリス・スターリングとすごす
ための夕食会のメインディッシュとしてつかまり、
生きたまま脳みそを取り出されて料理されてしまった
クレンドラーFBI捜査官のおぞましい最期を思い出しました。

立体解剖図的に各部位で遊べるソフビですね。
このようにいろいろポーズを変えたりしながらKINGDOMMINDのプレイバリューを
楽しんで思ったのですが、デザインと造形からイメージできたことがあります。




賢者の鍵と魔道書といった魔法にまつわる神話的なアイテムで武装して
強大な力を手にしてしまった者なのでしょう。そして頭部に教会という自分を律する
絶対的存在を冠する=理性であると。彼の佇まいは
本能と理性という二律背反したバックボーンの均衡下で
手にした強大なチカラを発揮する者の
バランスの物語という寓話性をも込めたかのようにも見えます。




もちろんRESTOREさんが製作時にどのようなイメージを意識して製品を作ったのかは
わかりませんが、作り手の意向が本人も意識し得ないところで答えを出している
のが造形物というものの面白さであり、またオソロシサでもあります。

先日紹介した、ターゲットアースさんの「双頭原人」の頭部がトンスラだった点や
双頭巨人のBEMON BALLの意味について自分なりの感想として触れたのですが
ストリートソフビに端を発したインディーズソフビムーブメントには
強大なチカラの象徴としてまずキャラクターがあり、そのチカラのコントロールに向けた
神話的要素がディティールとしてキャラクタライズされていることが
製品としてしばしばミリキを放つことが興味深いところではあります。

それは手にした者はソフビを所有することで、
一種の象徴交換として、あたかも強大ナチカラを供されたかのように
怪物たちを自由に動かし、それを制御できる神として
TOYに大して行使できる立場という自己イメージを
ひとたび味わうことができる・ということなのでしょうね。

そうだ、思いおこせばRESTOREさんの1作目「DEBRI JAPAN」は鬼というか
ゴブリンのような怪物の強大なチカラを、顔に貼り付けた護符によって
制御しているといった仕様ではなかったですか。

またRESTOREさんがソフビ製作以前に手がけていたガレージキットには
マッチョな風貌の男性キャラクターがBONDAGE的な服装でその身を
封印されているといったネオベイガニズム的な作風のものがあったのですが、
そこに共通して読み取れるテーマには
「チカラの制御」にまつわる神話の描出があるということです。
その演出上で、可動のないガレキから、さらにソフビというより可塑性の高い素材での
表現へとRESTOREさんが新たな領域拡大を今般果たしたのは当然の流れということ
なのかもしれない。




個人性の高い創作物であるインディーズソフビを楽しむという行為の背景にあるのは
そういう作り手の込めたキャラの内面やバックボーンの物語を造形から
たどっていくことなのでしょう。

ソフビは他の表現手段、たとえば小説のように文章でわからせるモノではありませんし
映画のように音楽も聞こえないし、セリフや俳優の演技で物語を伝えることが
できないのでそれをほとんど製品の造形のみで果たします。
そして作り手のコンセプトが明確に造形に反映されたときに、受け手が手にしたときに
造形物から読み取れるキャラクターの文脈とも呼べるものが背後に
明確に存在しているのだと思います。そしてその作り手の造形という「作劇」が
明確に伝わる製品こそが「よくできたソフビ」なのでしょう。

このKINGDOMMINDは作り手のスキルとキャラクターアイデアが合致して
ひとつのキャラクターのドラマを明確に浮かび上がらせています。
そしてそれを鍵や魔道書を駆使するかのようにして
読み取っていくのは個々の所有者=マスターによって果たされる、
ということなのでしょう。




RESTOREさんのHPにおけるKINGDOMMINDのページを見ると、
「新しいことに挑戦する」宣誓ともとれる言葉が表明されています。

先人の作りあげたものを超えて、「自分の意志で世界を想像することが大事だ。
造られ、与えられたキングダムマインドから
オリジナルキングダムマインドへ」(HPから抜粋)。

その挑戦からKINGDOMMINDは今まで誰も作ったことのない、もちろん
誰も見たことのないソフビフィギュアとして今回、第一歩を踏み出してします。
KINGDOMMINDの手にする鍵は、作り手が今なお標榜し続ける
自らの新たな造形領域へ向けた扉に挿すための鍵であり
製品を手にする者もソフビ表現の新局面へと共にいざなってくれる
パスポートなのではないでしょうか・


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