KADOMIUMTANK ソフビブログ

ヘミングウェイの詩にこんなのがある。
「人生は素晴らしい 戦う価値がある」
後の方は賛成だ byモーガン・フリーマン

マザロン人×マザリュース

2010年08月19日 | 特撮・SF


しかし38・5℃(関東圏計測で話してますが)はちょっと生きてくには
敷居が高すぎるっすね。本日あたりは涼しいけど。。。
暑いとブログで書こうとするとその日はへそまがりにも、そうでもない日に。
毎日更新するかね、こりゃ。
知人の戦争世代である高齢者のヒトも「昔、こんな暑かったことがあったかな?」と
おっしゃっており、不安感もひとしおです。
地球環境変化に伴う異常気象でしょうか。

いや!これこそ全人類を呪うヤプールの仕業にちがいない!!

「♪海は青くない!まっ黄色だ!
山は緑ではない!まっ茶色だ! 見ろ!花はとっくに死んでいる!!

おまえはおーれを信じなさい
ほれ信じなさい、ほーれ信じなさい」(ついに頭いったかタコ)

このフレーズでピンとくるように今回のネタはウルトラマンAの超獣っす。
いや~、こうしてコンビで紹介できるのがうれしい。
トラウマ映像満載の異色作「見よ!真夜中の大変身」に登場した
マグマ超人マザロン人と地獄超獣マザリュース。メーカーはマーミットさん。
何年越しカナ?ようやく2体そろってのお目見えっす。
劇中でコンビや主従関係がある敵が揃うと盛り上がりますね。





マザロン人は以前トイイベントで初めてグリーンの蓄光バージョンで発売されたのですが、
マグマの大海で踊り狂う奇怪な劇中のイメージに即して
マニアとしては塗装版もほしかった一匹。今回通販1期として晴れて
赤い成型色で登場したもの。

彼のスペックははっきりしておらず
かねてからヤプールが、自分が倒された時に作戦継続すべく
地球上に配置していた結託怪人かつ幹部クラスっぽいキャラなのですが
(ヤプール細胞が変身した説もある)
劇中の岸田森氏のナレーションが名状しがたいキャラクターへの
妄想力をいやがおうにも煽りたてます。

「ヤプールは死んだ!しかし、マザロン人は生きていた!」

よくわからない。
このナレーションで当時子供たちもマザロン人の
あやしげな存在は記憶に残ることになった次第。
お話もとにかくウルトラシリーズ屈指のトラウマ度ですが後述。

ソフビもこうやって手を上げると劇中でマザリュースの誕生を見守りつつ
マグマのセカイで「けひゃひゃひゃ」とか奇矯な声を上げて
踊っている悪魔の豊穣の踊りに耽る姿が
ファンの脳裏に浮かぶデキになっております。
いっしょに並べたのはタコが幼少の頃遊んでもらったブルマァクの
超獣たちです。こんな形でマザロン人のかわいい子供たちとして
彼らを使う時がやってくるとは思ってもみなかったな。




そしてマザリュース。実体のない幻影タイプの超獣なのですが
出現と同時に富士山が噴火を開始したところを見ると
ヤプールとマザロン人の目指す天変地異を超獣の姿として人々の目に
映し出した存在のようです。
頭部は中期以降の超獣に多用された弦楽器のネックのような独特の装飾もついて
デザイン的共通性がかもしだされています。
画面上では深夜の公園に出現する幻影風な存在での出番なのでスチール写真も少なく
原型師さんもおそらく造型にあたって資料が少なかったと思います。




メーカーさんのマーミットさんにとっては
このトゲトゲっぷりで抜きも難しい部類に入ってたらしいマザリュース。
これまでたくさんの複雑な形状をした超獣を手がけたスキルをもってしても
こやつは強烈にデコラティブですものね。

見ての通り、劇中の彼のキグルミはサボテンダーの胴体を流用して
新規の首をすげかえたもの。あと、手と背中の突起にも
別の超獣に見えるようディティール改修が入っています。

この頭部のデザインが
動物等の改造モチーフなしなせいか
かなり好きにデザインされた気配で
味のあるストレンジなルックスです。それでいて
「赤ちゃん超獣」というイメージもかもしだされており
Aとじかに戦わない存在ながら、魅力のある超獣ではあります。
彼はヤプールにとっても特別な子供であったのか、
最終回のジャンボキングを構成する超獣の部品の
一匹としてシルエットのみですが再登場しています。










上3枚は23話「逆転! ゾフィ只今参上」下3枚は24話「見よ!真夜中の大変身」より。
24話はウルトラシリーズでも異色作、トラウマ作の担い手として
今も人気の高い鬼才・真船禎監督の演出作。

ヤプールはAに倒されたが、ヤプールの分身として同時刻・世界各地に出現して
地球の破滅を街角で解き子供たちをつぎつぎと誘拐した、
あのおそるべき行者が再び出現し、血の海の中を半狂乱でのた打ち回りながら
人類への呪いと復讐を叫ぶ!!
2話連続登場のこの不気味な行者のシーンはトラウマ度の高いA全編を通しても
屈指。「リング」シリーズや「呪怨」など平成のジャパニーズホラーにも
余裕で勝てそうなハイテンションだ。








本作の主人公、健太少年の父が航海士としての旅先、アフリカで
現地の子供からもらったという、美しい赤く輝く石を送ってきた。

「おかあさんに元気な赤ちゃんが生まれるように」とお父さんの願いをこめて
送られた贈り物の石だが
それはAにより倒され世界に飛び散った邪悪なヤプールの破片だった。。。
血のような雨が降るしきる中、白いシャツを真っ赤に染めて
少年の母親が帰宅してくる…!







その夜、健太は得もいえぬ不安に襲われた。
やさしい母親が自分を置いて突然どこかに行ってしまうのでは、という
不安だ。母親にあまえんぼうと冷やかされながらも
添い寝してもらい子守歌を歌ってもらう。寝しなに見る母親はいつもと変わらない
やさしい母だった。

ここで割って入る岸田森のナレーションが絶妙
「君たちも見たことがないか?どこか知らないところを
歩いてて、そう、それはとってもココロ細い夢だ」

子供たちの脳裏に浮かぶ、母親の消失、離別の恐怖、知らない寂しい場所に
取り残される恐怖、
マタンゴの笑い声と同じ音源の哄笑とともに、誰も居ない深夜の荒野で
ひたすら少年を追いかけてくる鬼女に変貌した母親。。
産みの崇高さと禁忌こそ表裏一体。
おぞましき地獄超獣マザリュースの出産をめぐり、
深夜の公園で奇怪な祝祭をくりひろげる母親を覗き見てしまう健太。

黒真船全開によるバッドブルー&モンド映像が披露され、
ブラウン管の前の子供たちは恐怖とともに
とてつもない居心地の悪さと後ろめたさに包まれる!!



母親の変身した姿は離島の神社などに掲げられていそうな
異形の豊穣神を表現した土俗的仮面のようであり
手に蛇を持っているという見世物小屋の住人のような振舞いを伴う。
そして公園で少年が母親の
変身を目にしてしまうシーンではいかにもメインライター・市川森一のテイストを
継承したかのようにキリスト教的原理主義的な
賛美歌が流れ表現される。さらにマグマ超人・マザロン人の発言には
豊穣さにつながる(彼の言う豊穣さとはイコール人類の滅亡、なのだが)
大地の神に向けた信仰心が込められている点。この回の演出はきわめて
作り手の直感が働きかける、多神教的解釈をはさんで描かれているのがポイント。
でも映像としてはどことなく昭和の見世物小屋風で、なんともいかがわしい。







マザロン人「大地は母なり!輝かしい創造主なり!
汝は母なり!!今こそ力ある子を、産むのだ!
汝の子供だ!」
母「なんてきれいな顔をしているの、かわいいお手手!!いとし子よ
大きく大きく育つのです!!」
深夜の公園に異常な光景が広がる。




本エピソードは成長期特有の子供が持つ本能的恐怖を映像表現したウルトラ屈指の怪作といえる。
昭和特撮の継承作といえる90年代のロボットアニメ「エヴァンゲリオン」は
ウルトラシリーズ、そして「A」からの影響も随所に見受けられるが、劇中で多用される
胎内回帰幻想、出産や誕生、新生といったイメージは、
じつは本エピソードのなまなましい映像表現にこそ学んだ部分が
少なくないようにも思える。

母親役は岩本多代さん。新たな出産を迎えたやさしい母親と
夜の公園を徘徊しあやしげな儀式にいそしみ
産みの妄執に取り付かれ鬼女に容貌を変える母親の
双方を演じ分けた彼女の熱演によるところも大きいと思う。

岩本さんは60・70年代にドラマを中心に活躍していた
女優さん。「キイハンター」や「特別機動捜査隊」「Gメン75」などでも
たびたびゲスト出演。独特のなまめかしい雰囲気を持ち、
男をからめとる悪女や復讐に燃える女などひとすじなわではいかないゲストヒロインを演じると
絶妙な人でしたが、70年代以降は今回のようなやさしいけど
ちょっと陰の部分を持つ母親役も多かった。
今でもケーブルTVなどでよく見かけることができ、
「色っぽいお母さん役の女優さん」とか言われてファンの多い人ですね。





そうだ、マザリュースは円谷がじきじきに作った
サボテンダーのパチ怪獣、みたいな面白さもありますね。
このソフビはブルマァクのサボテンダーソフビと
スーツバリエーションみたいに並べて飾っても、また楽しいかもしれません。

実体のない地獄超獣をもものしてしまった、
立体版超獣図鑑ともいうべきマーミット怪獣天国シリーズ、次は
どんな超獣が実体化してファンを驚嘆に包むのでしょうか。