昨日2/2の報告会では、事故に問題意識を持つ多くの方にお越し頂き、
様々な貴重な意見を頂くことができ、 誠にありがとうございました。
2/3 朝日新聞社会面記事 →
*****
報告会での菊地弁護士のレジュメを記す。(私が無断で字を部分的に大きくしています・・) ↓ ↓ ↓
和解条項で明らかとなった豊橋市の法的責任
菊 地 令 比 等
1 和解成立後の豊橋市長の記者会見の内容
2 責任と法的責任
(1) 責任と言う言葉は,政治的責任,倫理的責任,道義的責任等,多義的に使われる。
しかし,訴訟において問題となる責任は,法的責任である。
(2) 責任と損害
損害賠償請求訴訟においては,責任と損害が問題となる。
責任とは,「・・・すべきだったのにしなかった」という安全配慮義務違反又は過失のこと。豊橋市の法的責任を問う訴状も,責任と損害の2本立てで書いている。
3 和解条項の「次の点について,被告豊橋市に責任があったことを認め」に書かれていることと,訴状の「被告豊橋市の責任」に書かれていることとの比較
(別紙参照)
4 法的責任の重みと今後の学校の課題
法的責任以外の責任は,責任を取るか取らないか,責任を取る場合にどのように取るのかについての判断が個人や集団の自由に委ねられているが,法的責任の場合はそういうわけにはいかない。
豊橋市教育委員会は,今後,安全対策や危機管理体制の構築及び運用について各学校任せの状況を放置することは許されず適切な指導助言を行うこと,学校は,実習実施の可否の判断について,学校が独自に安全性に関する検討し,その可否の判断をチェックすることなどが求められる。
このようなことを行わないまま,今後実習などで同様の事故が起きれば,豊橋市は法的責任を問われるという点で,今回の和解において豊橋市の法的責任が認められた意義は大きい。
(別紙)和解条項~一部抜粋
2 被告豊橋市は,本件事故の発生に関し,次の点について,被告豊橋市に責任があったことを認め,原告らに謝罪する。
(1) 豊橋市教育委員会は,豊橋市立の小中学校(以下「各学校」という。)において実施する校外学習に関し,本件事故当時,校外学習における安全マニュアルを策定しておらず,そのため,各学校が校外学習の実施に伴って講ずるべき安全対策や危機管理体制の構築及び運用が各学校任せの状況になっており,安全対策や危機管理体制の構築及び運用について適切な指導助言を行う体制ができていなかったこと。
(2) 豊橋市教育委員会は,各学校において実施する校外学習に関し,各学校の管理職に対する危機管理に関する研修や各学校で起きたインシデントに関する情報を各学校間で共有する体制を十分構築していなかったこと。
(3) 本件実習に関し,学校は,本件実習を委託していた静岡県立三ケ日青年の家(以下「本件青年の家」という。)が作成したカッターボート訓練プログラムの具体的内容を個別的に分析し,その安全性チェックをしていなかったこと。
(4) 本件実習に関し,学校は,指導員が乗船しない自主艇があることについてその危険性の認識を怠り,指導員の乗船を求めなかったこと。
(5) 本件実習に関し,学校は,カッター訓練の安全性の懸念力の当日実施の可否の判断について,青年の家によるカッター訓練の実施の可否基準とそれに基づく可否の判断に全面的に依拠してしまい,学校が独自に安全性に関する検討をし,その可否の判断をチェックすることを怠っていたこと。
3 被告豊橋市は,本件事故発生時の初期対応に関し,次の点について,被告豊橋市に責任があったことを認め,原告らに謝罪する。
(1) 施設・学校の活動本部において,消防・警察の救助本部との連絡・連携体制を十分構築できていなかったため,人員の確認が遅れることになり,また,様々な憶測や誤った情報が流れる事態になったこと。
(2) 学校は,乗船者名簿の作成及びその管理運用についてのマニュアルの不備等により,本件事故発生の際,その名簿を有効に活用できなかったこと。
(別紙)訴状~一部要約の上抜粋
ア (教諭は)下見の際に,教員と生徒のみが乗船する自主艇のことも教諭らは聞いていた。この際に,所員から実施主体が,被告静岡県から被告実施会社に変わったことを伝えられたとき,安全面に疑問を持ち自主艇を拒んでいたら,花菜は救えたと考えられる。
ウ 出港前,本件校長は,天候に関して何らの調査もすることなく,教諭から「この程度の雨」であれば実施される旨の報告をうけて了承している。
しかし,昼過ぎから午後2時30分の出港までに雨量にも変化があり,それは,現場にいた本件校長及び教諭らであれば,分かったはずであるし,天候の変化を調べるべきであった。
したがって,本件校長及び教諭らにおいてハーバー出発前に,現況および予報について最終確認を行い,訓練中止を申し入れるべきであった。
キ 本件カッターに乗船した教諭は,舵の操作を行うのが初めてであり,曳航される際に,舵の操作がわからなくなった。
しかし,舵の経験がないのであれば,曳航の際,所長に舵取りができないことを伝えて,所員に舵取りを依頼していれば,カッターの転覆を回避することができた。
ク 本件青年の家が乗船者名簿を作成していれば,本件消防が,乗船者名簿を基に本件カッターから救助した生徒等の氏名を確認でき,早い段階で行方不明者に気づくことにより,より早期に本件カッターの船内捜索が実施されたはずであるとされている。
しかし,本件中学校が,事前に乗船者名簿を作成し本件青年の家に提出しておくのは,生徒を引率する責任を有するものとして当然の義務であり,これを行っていたら,乗船者名簿が事故後すぐに本件消防に交付され,早期に捜索,救助がなされることにより,花菜の死を回避し得たと考えられる。
ケ 本件カッターに乗船していた生徒は,(中略)教諭及び本件青年の家の所長に,花菜が行方不明であることを伝えている。
その時点で,教諭は,本件消防等にその情報を明確に伝えるのみならず,最後まで花菜の救助を確認していたら,もっと早期に花菜は発見され,花菜の死を回避し得たと考えられる。
*****
上記和解文を受理した時、私と主人は、
主語が「学校は」「教諭は」と、
はっきりと彼らの責任を問う文になっていることに涙した。
様々な貴重な意見を頂くことができ、 誠にありがとうございました。
2/3 朝日新聞社会面記事 →
*****
報告会での菊地弁護士のレジュメを記す。(私が無断で字を部分的に大きくしています・・) ↓ ↓ ↓
和解条項で明らかとなった豊橋市の法的責任
菊 地 令 比 等
1 和解成立後の豊橋市長の記者会見の内容
2 責任と法的責任
(1) 責任と言う言葉は,政治的責任,倫理的責任,道義的責任等,多義的に使われる。
しかし,訴訟において問題となる責任は,法的責任である。
(2) 責任と損害
損害賠償請求訴訟においては,責任と損害が問題となる。
責任とは,「・・・すべきだったのにしなかった」という安全配慮義務違反又は過失のこと。豊橋市の法的責任を問う訴状も,責任と損害の2本立てで書いている。
3 和解条項の「次の点について,被告豊橋市に責任があったことを認め」に書かれていることと,訴状の「被告豊橋市の責任」に書かれていることとの比較
(別紙参照)
4 法的責任の重みと今後の学校の課題
法的責任以外の責任は,責任を取るか取らないか,責任を取る場合にどのように取るのかについての判断が個人や集団の自由に委ねられているが,法的責任の場合はそういうわけにはいかない。
豊橋市教育委員会は,今後,安全対策や危機管理体制の構築及び運用について各学校任せの状況を放置することは許されず適切な指導助言を行うこと,学校は,実習実施の可否の判断について,学校が独自に安全性に関する検討し,その可否の判断をチェックすることなどが求められる。
このようなことを行わないまま,今後実習などで同様の事故が起きれば,豊橋市は法的責任を問われるという点で,今回の和解において豊橋市の法的責任が認められた意義は大きい。
(別紙)和解条項~一部抜粋
2 被告豊橋市は,本件事故の発生に関し,次の点について,被告豊橋市に責任があったことを認め,原告らに謝罪する。
(1) 豊橋市教育委員会は,豊橋市立の小中学校(以下「各学校」という。)において実施する校外学習に関し,本件事故当時,校外学習における安全マニュアルを策定しておらず,そのため,各学校が校外学習の実施に伴って講ずるべき安全対策や危機管理体制の構築及び運用が各学校任せの状況になっており,安全対策や危機管理体制の構築及び運用について適切な指導助言を行う体制ができていなかったこと。
(2) 豊橋市教育委員会は,各学校において実施する校外学習に関し,各学校の管理職に対する危機管理に関する研修や各学校で起きたインシデントに関する情報を各学校間で共有する体制を十分構築していなかったこと。
(3) 本件実習に関し,学校は,本件実習を委託していた静岡県立三ケ日青年の家(以下「本件青年の家」という。)が作成したカッターボート訓練プログラムの具体的内容を個別的に分析し,その安全性チェックをしていなかったこと。
(4) 本件実習に関し,学校は,指導員が乗船しない自主艇があることについてその危険性の認識を怠り,指導員の乗船を求めなかったこと。
(5) 本件実習に関し,学校は,カッター訓練の安全性の懸念力の当日実施の可否の判断について,青年の家によるカッター訓練の実施の可否基準とそれに基づく可否の判断に全面的に依拠してしまい,学校が独自に安全性に関する検討をし,その可否の判断をチェックすることを怠っていたこと。
3 被告豊橋市は,本件事故発生時の初期対応に関し,次の点について,被告豊橋市に責任があったことを認め,原告らに謝罪する。
(1) 施設・学校の活動本部において,消防・警察の救助本部との連絡・連携体制を十分構築できていなかったため,人員の確認が遅れることになり,また,様々な憶測や誤った情報が流れる事態になったこと。
(2) 学校は,乗船者名簿の作成及びその管理運用についてのマニュアルの不備等により,本件事故発生の際,その名簿を有効に活用できなかったこと。
(別紙)訴状~一部要約の上抜粋
ア (教諭は)下見の際に,教員と生徒のみが乗船する自主艇のことも教諭らは聞いていた。この際に,所員から実施主体が,被告静岡県から被告実施会社に変わったことを伝えられたとき,安全面に疑問を持ち自主艇を拒んでいたら,花菜は救えたと考えられる。
ウ 出港前,本件校長は,天候に関して何らの調査もすることなく,教諭から「この程度の雨」であれば実施される旨の報告をうけて了承している。
しかし,昼過ぎから午後2時30分の出港までに雨量にも変化があり,それは,現場にいた本件校長及び教諭らであれば,分かったはずであるし,天候の変化を調べるべきであった。
したがって,本件校長及び教諭らにおいてハーバー出発前に,現況および予報について最終確認を行い,訓練中止を申し入れるべきであった。
キ 本件カッターに乗船した教諭は,舵の操作を行うのが初めてであり,曳航される際に,舵の操作がわからなくなった。
しかし,舵の経験がないのであれば,曳航の際,所長に舵取りができないことを伝えて,所員に舵取りを依頼していれば,カッターの転覆を回避することができた。
ク 本件青年の家が乗船者名簿を作成していれば,本件消防が,乗船者名簿を基に本件カッターから救助した生徒等の氏名を確認でき,早い段階で行方不明者に気づくことにより,より早期に本件カッターの船内捜索が実施されたはずであるとされている。
しかし,本件中学校が,事前に乗船者名簿を作成し本件青年の家に提出しておくのは,生徒を引率する責任を有するものとして当然の義務であり,これを行っていたら,乗船者名簿が事故後すぐに本件消防に交付され,早期に捜索,救助がなされることにより,花菜の死を回避し得たと考えられる。
ケ 本件カッターに乗船していた生徒は,(中略)教諭及び本件青年の家の所長に,花菜が行方不明であることを伝えている。
その時点で,教諭は,本件消防等にその情報を明確に伝えるのみならず,最後まで花菜の救助を確認していたら,もっと早期に花菜は発見され,花菜の死を回避し得たと考えられる。
*****
上記和解文を受理した時、私と主人は、
主語が「学校は」「教諭は」と、
はっきりと彼らの責任を問う文になっていることに涙した。