人生にロマンスとミステリを

小説を読むのも書くのも大好きな実務翻訳者です。ミステリと恋愛小説が特に好き。仕事のこと、日々のことを綴ります。

ピエール・ルメートル『その女アレックス』

2016-11-24 21:59:32 | 読書記録(紙書籍のみ)
ピエール・ルメートル著、橘明美訳『その女アレックス』

美容院でファッション誌を読んでいたら、この著者の別の本『悲しみのイレーヌ』が
とてもおもしろい、と紹介されていました。

で、『悲しみのイレーヌ』の前に出版された本から読んでみようと、こちらから読み始めました。

いきなり三十歳の美貌の女性が誘拐されます。しかもひどく手荒で暴力的。狭い木箱に監禁され、
ロープで天井からつるされる、というおぞましい事態に。どうすれば逃げられるの!?
ネズミとの対決など、結構グロテスク。死を目前にしたアレックスの意外な強さに驚かされます。

一方、その女アレックスが誘拐されるのを目撃した男性が通報し、パリ警視庁の刑事、
カミーユ・ヴェルーヴェン警部が捜査を担当することに。

アレックスとカミーユの視点で、ほぼ交互に語られます。ときどき参考人の視点もあったりして、
カミーユたち刑事の人となりが(かなり個性的!)描写されます。

拉致監禁されたアレックスはかわいそうな被害者……かと思いきや、実はある残虐な事件の
加害者で……。

被害者が実は加害者っていうパターンは、ドラマや小説で見たことがありますが、この本はそこでは
終わりません。なぜ加害者がそうなったのか、という謎も紐解かれますが、それがあまりに凄惨で。

なんというか、悲しすぎる。カミーユとずっと対立していた判事の最後のセリフ、
「われわれにとって大事なのは、警部、真実ではなく正義ですよ」(P449 10行目)
という言葉に、ほんの少し、本当にほんの少しだけ心が軽くなる感じでした。

んで。
イケメン刑事もしくは陰のある刑事好きの私としましては、今回のヒーローは異色です(笑)。
カミーユ刑事はもうすぐ五十歳、痩せていて禿げ。身長145センチ(母親のニコチン中毒が原因だそう)。

部下のルイ刑事はお金持ちでイケメンで洗練された振る舞いをします。もう一人の部下はどけちですが、
最後にいい仕事してます。

この本では、カミーユの妻イレーヌが妊娠八ヵ月のときに誘拐され惨殺され、その事件の捜査に
関わった過去から精神を病んだカミーユが立ち直る過程も書かれています。

が! イレーヌ惨殺されるの?
じゃあ、次の『悲しみのイレーヌ』って奥さんが殺される話やん!!

そんなんつらすぎるわ。読むのやめます。読めないんです、そういうの。
コメント
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