人生にロマンスとミステリを

小説を読むのも書くのも大好きな実務翻訳者です。ミステリと恋愛小説が特に好き。仕事のこと、日々のことを綴ります。

伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』

2024-06-19 11:29:38 | 読書記録(紙書籍のみ)
伊坂幸太郎著『ゴールデンスランバー』

仙台でパレード中の首相がラジコン爆弾で殺された!
容疑者とされたのは、以前配達中にアイドルを助けて一躍ヒーローとなった
青柳雅春こと、俺。濡れ衣なのに、警察には犯人だと断定され、
身に覚えがない買い物をしている映像が流され、警察は
後輩を痛めつけたりファミレスでショットガンぶっぱなしたりしてでも
彼を逮捕しようとする(異常)。まさに四面楚歌。

けれど、彼の人柄ゆえか、陽に陰に味方してくれる人たちがいて、
どうにか逃げ続けられている。けれど、その過程で人が傷つき死ぬのが
嫌になり、テレビ局に生放送で自分の音声を流してもらいながら、
衆人環視の中で逮捕される道を選ぶ。そうすれば、この仕組まれた犯罪に
疑問を持ってくれる人が出るかもしれない……。そう思ったのに!
その通話さえ切られ、絶体絶命。結局逃げる道を選ぶことに。

理不尽すぎるやろ。
それまで誠実に生きてきた人生を手放さなあかんなんて!!

大きな闇(?)の勢力と対峙するのではなく、いかに逃げ延びるか、に
焦点が合わせられてるのかな。結局首相暗殺犯は誰なのかわからずじまい。

伏線の回収が見事。さら~っと読めない緻密さがすごい。
どこから仕組まれてたんやろ。アイドルを助けたところから?
でも、アイドルは殺されてないから、そこまでは違ったのかな。

なんか悔しい。ほんまに悪い奴も裁かれずに逃げ延びたってことやろ。
口封じにたくさんの人を傷つけ殺したのに。

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エマ・ジェイムソン『第九代ウェルグレイヴ男爵の捜査録 』

2024-06-11 07:52:17 | 読書記録(紙書籍のみ)
エマ・ジェイムソン著、吉嶺英美訳『第九代ウェルグレイヴ男爵の捜査録 』

SNSでフォロワーさんが感想を上げていて、おもしろそうだったので読みました。

由緒正しい英国男爵家の生まれで、まもなく還暦を迎えるという
ロンドン警視庁のヘザリッジ警視正。結婚をしたこともなく、
恋人もおらず、子どももいない。そろそろ引退か……などと
思っていたら、貴族らしい(?)考え方で、
はねっ返りに若い女性刑事ケイトを部下につけることに。

ケイトはなかなかの苦労人で、大変な家庭環境のもとで育ち、
甥と障害のある弟の面倒を見ている。

ヘザリッジはその経歴ゆえ、上流・中上流階級がかかわる事件を
担当させられるのだが、今回起きた成金男性撲殺事件の現場に、
チャリティパーティから直行したため、タキシードで行く。
んで、男性の妻がかつての婚約者。

捜査を進めるうちに、元娼婦だけど今は中上流階級の夫を持つ
整形美女(お高く留まった嫌なやつ)が、
犯人を知ってるけど、あんたたち(刑事たち)
には言わない、と口走り、否定したものの、直後、銃で撃たれて
殺される。

一方で、ケイトの元カレ(ケイトはなんと彼の子を妊娠中!)が
殺されたり、かつての婚約者の娘が実はヘザリッジの……だったり。

イケオジ刑事と女性刑事のロマンスありのミステリかと思っていたら、
想像していたのとだいぶ違った。

犯人は結構わかりやすかったけど、それ以外の要素がとても新鮮だった。
主人公2人以外のキャラもとても個性的。

訳者あとがきに「ロード&レディ・ヘザリッジ・シリーズ」が4作出てて、
もうすぐ5作目が出るって書いてあったので、ヘザリッジはケイトと結婚した
ということなんだな。なかなかはちゃめちゃになりそうな結婚だと思うけど、
その過程も気になる。
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長浦京『アンダードッグス』

2024-05-10 10:04:54 | 読書記録(紙書籍のみ)
長浦京著『アンダードッグス』

この前読んだ短編集の作品がとってもおもしろかったので、
この作家さんの別の作品を探した。

おもしろかった。スパイアクション映画を見ているみたいに
ハラハラドキドキ。読みだしたら止まらなくて、あっという間に
読み終わった。

上司命令による裏金作りが世間にバレて農水省をクビになり、
現在は証券会社で働く古葉慶太。
香港が英国に返還される直前の時期。
顧客のイタリア人大富豪マッシモに呼ばれて、ある強奪計画を
強要される。一見非力な元官僚なのに、なかなかどうして。
マッシモの指示通り香港の会場レストランに行ったら、直前にマッシモが
殺されていた。屈強なロシア人SPと一緒に。けれど、いろいろあって
今さら引き返せない。

マッシモの指示に従い、強奪計画のチームメンバーと合流する。
メンバーはみな国籍も経歴もばらばらの素人。強奪するのは
世界の政府要人や大物たちの汚職の証拠らしいけど、アメリカ、ロシア、
イギリス、中国の諜報機関から狙われる。それだけのために、ほんまに?みたいな。

チームメンバーには裏切り者もいて、状況は二転三転。
緊迫した中、互いの過去を話して、仲間意識が生まれたところで、
その相手が裏切ったり、殺されたり。仲間になりそうだった助けてくれた
人たちが殺されるのはつらい。諜報機関や殺し屋の殺し方なのでえげつない。

強奪チームは古賀たちだけでなく、ほかに3チーム用意されていたことがわかる。
どのチームが、誰が、裏切り者なのか。

並行して21年後の物語が描かれている。
古葉の娘(実は養女)である瑛美が日本で逮捕されそうになり、連絡を取った
弁護士に言われて香港へ。香港では父(古葉)を知る人物たちを
尋ねて、古葉の過去をたどる。最後はほんのりじぃんとする。

とはいえ! 普通の元官僚の古葉さん、すごすぎやろ。




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呉勝浩ほか『警官の道』

2024-04-30 09:30:10 | 読書記録(紙書籍のみ)
呉勝浩、下村敦史、長浦京、中山七里、葉真中顕、深町秋生、柚月裕子著『警官の道』

短編集。えっ、そこで終わり!?みたいなのもあったけど、総じてスピーディで
おもしろかった。

下村敦史『見えない刃』
すごい考えさせられた。「そんな格好してたら」という言葉が、「未来の被害者への
セカンド」〇〇〇であるという。確かにそうだ。私たちはそんな「呪い」に
慣れすぎている。今の世情をとらえていて、短編なのに本当にすごく深くて
おもしろかった。っていうか、東堂さん、かっこよすぎ。人間できすぎ。
東堂捜査官(肩書や経歴はよくわからない)主人公の作品があったら、
絶対読みたい!!

長浦京『シスター・レイ』
玲かっこよすぎ!! ただの(?)予備校講師と思わせておいて、次々に
明るみになる玲の過去。不条理だな、と思うし、つらいけど、でもそこは
目をつぶって、単純に玲の活躍を楽しんで読めた。現実は母の介護をしながら
予備校の講師で食いつないでいるバツイチ中年女性なのに、その実……
っていうのが、本当に好みのお話だった。

柚月裕子『聖』
千寿と聖がバディになったお話も読んでみたいなぁ。そういう余韻を残すのが
短編なんだろうけど、でも、ほんと、続きを読んでみたい。人情もの、なのかな?

葉真中顕『上級国民』
っていうか、美穂さん、すごすぎん? 全部見抜いてるやん。

許されざる者『中山七里』
現実にありそうで。東京オリンピックに絡めた話。リモートでの事情聴取とか、
コロナの時代。

呉勝浩『Vに捧げる行進』
芸術家の感性??

深町秋生『クローゼット』
そこで終わるの!?

と盛りだくさん。

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似鳥鶏『叙述トリック短編集』

2024-04-15 21:51:21 | 読書記録(紙書籍のみ)
似鳥鶏著『叙述トリック短編集』

もぉぉおおおおおおううううう! ぐやじい! 騙された! ずるい! やられた!

そんな感じです。字面でさっと読んじゃう癖が悪い方に作用しました。
叙述トリックってちょっとした引っかかりや、違和感と言えないほどの小さな
何かがヒントになるんやんね。ん?と思ったのに、見事に引っかかってしまった。
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