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ぶんやさんち

ぶんやさんの記録

ラーメンの英語のスペルをめぐって

2009-10-27 11:49:58 | ときのまにまに
先日、天神の280円ラーメンのことを「The basic rahmen of Hakata 」(ブログ「ぶんやさんち」10月16日付)と紹介いたしましたが、その際日本のラーメンを英語で書く場合、どういうスペルにするべきか大いに迷いました。
ラーメンについて,なぜ英語のスペルが必要なのかということについて一言述べておきます。なぜ日本で書いている日本語のブログに英語が必要なのか。何も、博多ラーメンを世界市場に紹介するという訳ではありません。むしろ、問題はラーメンの方にあるのではなく、「 basic 」という形容詞をどうしても使いたかったからです。それなら「ベーシック・ラーメン」とすれば済むことですが、それには一寸抵抗がありますし、「ベーシック」と書こうと、「 basic 」と書こうと、英語のベーシックという単語の意味が分からない人には、どっち道分からないことなので、英語のままにしておくことにしました。いずれにせよ、ブログのタイトルは符号のようなものだと思っています。<注:rahmenの中に「 h 」を挿入したのは、ほんの気まぐれで、わたしの言語感覚としては「 ramen 」より、「 rahmen 」の方がラーメンらしいと思ったからです。ただ、それだけのことです。むかし、伊藤という友人の表札が「Itoh 」とあり、格好いいと思ったことがあります。>
この言葉を使いたいと思った理由は、意味論というよりも美的感覚の問題です。「 basic 」という単語は普通は「基礎」とか「基本」とかいう意味で使われますが、それではわたしが言おうとしていることとは少しずれます。わたしとしてはこの言葉のもっと根本にある「土台」とくに「台」という意味、あるいは「原点」とか、あるいは「基」ということを意味したいと思ったからです。その意味では「The basic rahmen 」という場合、もっとも単純な意味で何も余分なものが付加されていない「ラーメンそのもの」という意味です。日本文化で言うと「素うどん(ス・ウドン)」という感じで「素ラーメン(ス・ラーメン」と言いたいところですが、素うどんには「きつねうどんマイナス揚げ」、「天ぷらうどんマイナス天ぷら」(そのためしばしば天ぷらの代わりに「テンカス」を入れる)というマイナスのニュアンスを感じますが、「 The basic rahmen 」という場合には、その上にいろいろなものをトッピングすることによってチャーシューラーメン、メンマラーメン、葱ラーメン(しばしば「グリーラーメン」とも言う)をプラスしてより豪華になるというプラスの指向性があります。というような訳で、わたしとしてはどうしても basic という英語の言葉が使いたかったのです。
さて、そうなると今度はラーメンの方も英語で書かなくてはバランスが崩れます。それを単純に「 chinese noodles 」としてしまっては「台」無しです。それに何よりも、日本のラーメンは「 chinese noodle 」これの日本語訳は「中華麺」あるいは「中華ソバ」で、これは日本食としてのラーメンの「原形(学術的には『ウル・ラーメン』)」を意味していると考えられます。
というよう訳で先日何人かの友人に次のようなメールを発信いたしました。
≪話は全然変わりますが、どなたか「ラーメン」を英語で書く場合のスペルを教えてください。わたしは一応「 rahmen 」としておきましたが、これでいいのでしょうか。おそらく英語で言う場合は「chinese noodles 」とするのでしょうが、・・・・。≫
このメールに対して何人かの友人が真面目に、ご丁寧に、ご返事をいただきました。(感謝)
一人の友人は、飛びきり上等なジョークを送ってくれました。
≪昔、ニューヨークのラーメン屋さんには、ramen を売る店と、lamen を売る店があり、アメリカ人がどっちなんだと尋ねたところ、ある日本人が「君たちアメリカ人には、r-で始まるラーメンと、l-で始まるラーメンの微妙な味の違いはわからないだろう」と答えたという。≫
このジョークでは、日本人特有の「 r 」と「 l 」の発音の問題がキイワードになっています。しかし、よく考えてみると、英語を母国語にする人たちにとって「 r 」と「 l 」とは全然別な音標文字で、日本人が「ラリルレロ」を発音するときのような混乱はないのではないかと思われます。従って、彼らはにとっては「 r 」と「 l 」とは、日本人にとって「うどん」と「そば」とが違うぐらい違いがはっきりしており、このジョークは通じないのではないかと思います。従って、この冗句は日本発の日本人向けのものだと思われます。
もう一人別の友人から次のようなご返事をいただきました。
≪文屋様 ラーメンは素材を引っ張って細く伸ばして作るので「拉麺」と書きます。したがって中国語で「拉」にどういうスペルでローマ字の読みを付けるか調べたらよいのです。引いてみましたら拉のローマ字は“ la ”でした。お役に立ちましたか?≫
流石に東大の名誉教授、こんな市井の問題にも実に真面目に考え、抜群の「答え」を出してくれました。もうこれで、わたしの疑問はほとんど完全に解決,「一件落着」かと思いましたが、ちょうどその時、アメリカ在住の友人から「現地」の様子をご報告いただきました。
≪ご無沙汰しております。ラーメンの件ですが、―中略―、カリフォルニアでは Ramen です。これは多国籍文化のせいもあると思いますので、日本人があまり住んでい ない所ですと通じないかと思います。その場合、 Noodle Soup でしょうか?ここにはたくさんのラーメン屋さんがあり、白人も、黒人も、ヒスパニッ クも結構上手にお箸を使ってラーメンを食べています。私達も若い間はアメリカンな食事もおいしいと思いましたが、歳を取るご とに日本食しか食べたくなくなってくるように思います。≫
「現地」からの生々しい報告でした。
この報告を読みながら、わたしには「そうかなぁ」という新たな疑問が湧いてきました。
日本人なら「ラーメン」をローマ字書きで「 ramen 」と書くのが普通だと思います。つまり、普通すぎて面白みがありません。日本人が「ラリルレロ」と発音する場合、全部「 r 」なのでしょうか。時には、あるいは単語によっては、「 l 」で発音していることもあるのではないかと思います。例えば、「ドレミファソラシド」の「ラ」は果たして「 ra 」を発音しているのでしょうか。日本人はほとんどそのことについて気にしていないし、意識もしていないことだと思います。しかし、それは決してグローバル・スタンダード(世界基準)ではないでしょう。
ラーメンの問題に戻ります。おそらく、中国人なら「拉麺」を英語で書く場合、「 lamen 」と書くのだと思います。このことについてはまだフィールドワーク(現地調査)をしていないので仮説にすぎません。もし、アメリカに「 lamen 」という店があれば、それは中国系の店で、「 ramen 」という看板があれば、それは日本系ラーメン屋さんでしょう。果たして、それが当たっているか、どうか。これは現地で確かめるしかないと思っています。
もう一人面白い友人が、外国人向けに書かれた日本の観光案内の資料で「めん類( Noodles )」の解説の部分をコピーして送ってくれました。それによりますと、「 How does ramen differ from soba and udon? 」という質問に対して「 Ramen was introduced from China early in the twentieth century. A kind of carbonated water called kansui and eggs are mixed with wheat flour to make ramen. It characteristic ivory color. 」と説明されています。この文章の日本語訳(あるいは日本語原文)では最後の色に関する説明では「黄色っぽい」とあり、日本人ならそれで納得しますが、それが英語になると「 ibory color 」(象牙色)と言われるとそうかなぁ、と首をかしげてしまいます。
わたしが率直に聞きたいことは、日本人が「ラーメン」と発音した場合、アメリカ人には「 ramen 」と聞こえているのか、「 lamen 」と聞こえているのか、ということです。
ついでながら、わたしは中国食 noodles と現代の日本のラーメンとは「全然」とは言いませんが基本的には異なる食品だと思っています。それは日本のカレーライスがインドのそれに似た食品と違うように。それについては後日改めて論じます。
最後にみなさま方のご協力を感謝いたします。

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