ぶんやさんち

ぶんやさんの記録

正光の包丁

2009-03-04 17:51:27 | ときのまにまに
熊本県の人吉という町は昔から刃物で有名で、ときどきテレビなのでも紹介されています。人吉に行く機会があったら、ぜひ鍛冶屋さんが昔ながらのやり方で作った料理包丁を一丁買いたいと思っていました。先日、ひな人形を見るために人吉に行きましたが、その時はひな人形のことばかり考えていて包丁のことをすっかり忘れていました。
でも、大丈夫。頭は忘れていても身体が覚えていました。足はひとりでに人吉の中心街”鍛冶屋町”に向かい、気がつくとその店”正光刃物製作所”の前にいました。そこでモクモクと仕事している鍛冶屋さんに出会いました。顔を見て「あっ、テレビで見た人だ」とすぐに気がつきました。この通りには盛んな頃には80数軒の鍛冶屋さんが並んでいたとのことですが、現在ではこの店だけになってしまい、しかもかなり高齢化しておられ、いつ店を閉じてしまうかも知れない状況とのことでした。

        

いろいろ話を伺い、そこで昔ながらの手作りの料理包丁を買いました。すると、「名前を入れましょうか」ということで、「久子」と入れてもらいました。家内嬉しそうな顔をして曰く、「これ一生ものね」。わたし曰く、「あんたは後何年生きるつもり。この包丁なら娘にわたし、孫にまで譲れる」。その時にこそ、「久子」という名前が光る、とわたしは思いました。
わたしたちがまだ若い頃、わたしが関西セミナーハウスの主事をしており、家内はそこの厨房で10年間無給でお手伝いをしていました。その経験を通して京料理の基本を身につけたようです。後にわたしが幼稚園の園長をしていた頃、給食やバザーの関係で、調理師の免状が必要になった時、その時の経歴が認められました。人生一つも無駄はないものです。従って家内はいわば料理のプロですが、今まではまともな包丁を一本も持っていませんでしたので申し訳ないと思っていました。これで、プロに相応しい道具を手にしたことになります。我が家の料理も「普通の家庭料理」から一段と格が上がって、「プロの料理」になります。ただ、これからは「包丁一本晒しに巻いて」出て行ってしまわないように気をつけなければなりません。

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