折にふれて

季節の話題、写真など…。
音楽とともに、折にふれてあれこれ。

凍れる音楽  大和路点描2022秋

2022-11-10 | 大和路点描

夜明け前の薬師寺。

    
     2022.10.16  5:13    SONYα7S2  70-200㎜ F2.8G (70㎜ f7.1 10sec  ISO1600 )

タイトルの「凍れる音楽」のこと。

明治初期に来日し、日本の美術を広く世界に紹介したアメリカ人哲学者。

アーネスト・フェノロサが薬師寺東塔の美しさを評した言葉として伝わっている。

その言葉の解釈も、そもそもフェノロサによる表現だったかについても諸説あるようだが

それはさておき、裳階(もこし)を挟む三層の塔に

音楽が持つ韻律にも似た美しさを感じることから

そう形容されることになったらしい。

当時、西塔は存在していない。昭和になって再建されているからだ。

ひとつが再建された塔だとは言え、ふたつの塔が並ぶ姿のほうが

さらに景色の韻律を高めるようで断然美しいと思う。

もし、フェノロサがこの光景を眺めたなら、なんと形容しただろうと

答えのないことを想像しながら、この光景を楽しんでいたのである。

 

そして。

さらに「凍れる音楽」の風景を引き寄せてみた。

    
                   2022.10.16  4:50    SONYα7S2  70-200㎜ F2.8G  (200㎜ f5.6 6.0sec  ISO1600 )

 

その美しさを間近感じていただけたなら幸いだ。


久しぶりの選曲。

のんびりと古都を眺めた気分に美しいメロディと韻律の整った歌詞を重ねてみた。

 
原 由子  花咲く旅路

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室生寺 大和路点描2022秋

2022-11-01 | 大和路点描

 

宇陀、室生寺。

      

ごつごつとした石段を昇ってゆくと

うっそうとした木々の間から次々と伽藍が現れる。

いずれも斜面を切り開いた小さな平地に建造されたれたもので、

この山中の寺が修行の場であったことを物語っている。

真偽はともかく、役行者(えんのぎょうじゃ)や空海が創建したとの伝承にも頷けるというものだ。

この時期、紅葉には少し早かったが、

木洩れ日が織り成す風景は見応え充分だった。

      

自然と一体となった境内の佇まいからは四季折々の美しさも想像できるが、

そんな色とりどりの季節よりも興味を曳くのは厳冬だと思った。

雪に埋もれ色を失った光景から苦行の厳しさが

雰囲気として伝わって来るのでは、と想像したからだ。

そんな室生寺を胸に描きつつ、次に訪れるとしたら冬だな、と思った次第だ。

 

  

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当尾 浄瑠璃寺 大和路点描2022秋 

2022-10-25 | 大和路点描

当尾、浄瑠璃寺。   

    

 

初めて浄瑠璃寺という名前を耳にしたとき、

奈良仏教文化とは異質の歴史の浅い寺を想像した。

浄瑠璃という言葉から三味線に乗せた語り物を連想するとともに

竹本義太夫や近松門在衛門といった作者の名前を思い出し、

さらには男女の悲恋など世俗的な出来事に繋がる印象を受けたからだ。

だが、調べてみると浄瑠璃とはサンスクリットを語源とした

ひとつの浄土を表す言葉であることを知った。

東方浄瑠璃浄土がそれだ。

浄土というと西方極楽浄土のことばかりと思っていたが、

仏教の世界には浄土はいくつもあって

浄瑠璃寺はそのひとつ薬師如来が導く浄瑠璃浄土を具現しているという。

この寺の見どころは阿弥陀堂に鎮座する九体の阿弥陀仏。(現在は二体が修理中)

そのありがたいお姿を拝し、浄土より此岸に戻ったところ...

    

 

「撮ってください」とばかりのしつらえを前に

世俗に戻って「映え」撮りに及んだ次第。

 

 

さらに続く。

 

 

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当尾 岩船寺  大和路点描2022秋 

2022-10-23 | 大和路点描

空倶楽部のCさん、Kさん。そして二科会員のD師匠と訪れた奈良。

奈良というと奈良公園を中心として東大寺、興福寺、春日大社や

西ノ京の薬師寺、唐招提寺などが有名どころだが、

今回は奈良に詳しいKさんのご案内で

郊外の鄙びた(などと書くと叱られそうだが)寺を回った。

題して「オトナの撮影会」

ということで、しばらくは奈良の話題が続く。

 

まずは当尾(とうの)岩船寺から。

    

当尾の厳密な所在地を記せば京都府木津川市。

けれども、ガイドブックなどでは奈良の観光地として収録されているので

当ブログでも大和路点描として掲載させていただくことにした。

 

山間の地。緑にすっぽりと包まれた伽藍が印象的な寺だったが

中でも、深緑に朱色がひときわ映える三重塔が目を引いた。

    

 

今回の奈良。

何をどう撮るか、まったく考えてなかったのだが

Kさんがふと口にした「観光写真にならないように...」を

心掛けるようにした。

したがって、なんでこんなものを撮ったのか、というものもあるし、

しかも大方が「力のない写真」。

だから、「数」で勝負、組み写真で掲載することとした。

それぞれの寺の雰囲気が伝われば幸いだ。

 

続く。

 

 

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薬師寺遠景  By空倶楽部

2022-10-19 | 大和路点描

「9」のつく日は空倶楽部の日。

     ※詳しくは、発起人 かず某さん chacha○さん まで


 

奈良西ノ京、薬師寺遠景。

         
            2022.10.16 6:31AM   Sony α7S2  F2.8G/70-200㎜ (135mm f/13/50sec , ISO100)

 

地元のカメラマンの方に薬師寺絶景のタイミングを教えていただいた。

頃合いにすればゴールデンウィークと盆の期間。

薬師寺のちょうど背後から朝日が昇るのだそうだ。

逆光、つまりは明暗差の激しい条件。ドラマティックな写真が期待できる。

だが一方でたくさんのカメラマンが殺到するのだろう、と

その時期、ここに立つことがすこし億劫にも感じられた。

そう思わせてくれたのがこの日の薬師寺。

日の出から30分あまり。穏やかな光がふたつの塔を包んでいた。

逆光ほどの迫力には欠けるかもしれないが、

やさしい斜光に照らされた薬師寺もいいものだ、と

この光景に見入った次第だ。

 

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薬師寺 悠久の浪漫   By空倶楽部

2022-09-29 | 大和路点描

「9」のつく日は空倶楽部の日。

     ※詳しくは、発起人 かず某さん chacha○さん まで


奈良の話題が続く。

當麻寺での法要に出かけた奈良だったが、

実はもうひとつ目的があって、それがこの景色。

       
        薬師寺 2022.09.25 05:30AM  Sony α7R3   E150-500㎜/f5-6.7(150㎜  f/22,1/50sec,ISO640)    

奈良、西ノ京 薬師寺。

創建時の姿を残す東塔が解体修理に入って10年余り。

昨年春にようやくその修理を終えた。

1300年前、天平の人々も眺めていたのだろう。

その景色が再び戻ってきたのだ。

       
          薬師寺 2022.09.25 05:39AM  Sony α7R3   E150-500㎜/f5-6.7(288㎜  f/22,1/30sec,ISO500)    

 

 

 

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當麻寺

2022-09-27 | 大和路点描

久しぶりの奈良、そして當麻寺。

當麻寺に先祖供養をお願いしていて

年に二回、春と秋の彼岸に追善供養の法要に出かけている。

父が平成17年に他界して以来なので、私にとっての年中行事だったが

ここしばらくはコロナ騒ぎで中断していた。

當麻寺に関わる記事は「大和路点描」というカテゴリに括ってあって

振り返ってみると最後に訪れたのが2019年の9月だった。

それまで通い始めて15年ほどになるから

かれこれ30回は訪れた計算になる。

だから、3年ものブランクは大きいはずだったが...。

いつもと変わらぬ長閑な風景と空気で當麻寺は出迎えてくれた。

それもそのはず、1300年というこの寺の歴史にすれば

3年の月日などとるに足らないものでしかないのだから。

 

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當麻寺 奇跡の光景

2019-09-25 | 大和路点描

 4年にも及ぶ西塔の修理が終わり

二つの塔が並び建つ奇跡の光景が當麻寺に戻ってきた。

 Sony α99  Vario-Sonnar  24-70㎜/f2.8 (60mm f5.6,1/800sec,ISO100) 

 

當麻寺の創建は今から1400年あまりも昔、

推古天皇の御代、聖徳太子の異母弟の麻呂子王によるものと伝えられる。

法隆寺と同時代だからたいへんな古刹なのだが、

法隆寺はもとより、東大寺や興福寺など有名どころに比べ、

正直なところ見劣りはするし訪れる人もまばらだ。

(関係筋から叱られるかもしれないが...)

それでも年に2回、「あいかわらず田舎臭いなあ」と苦笑しつつもここを訪れる。

先祖の追善供養をお願いしているからだが、

その縁は今から60年以上も前に遡る。

年の離れた従兄が学生時代に奈良を放浪するうちに、

どういうわけか當麻寺に転がり込んだ。

そして、この寺の「不思議」に強い関心を持つこととなる。

不思議の謎解きを始めたそうだが、

それはやがて當麻寺への愛着に変わり

さらに、その縁は従兄を自分の子のようにかわいがった父、

そして私へと受け継がれてきたのである。

従兄は事あるごとに不思議を私に話してくれた。

もし、その不思議に興味を持った方がいらっしゃるなら

過去の記事を参照されたい。

當麻寺 不思議の力に引き寄せられて 

ただし、あくまでも従兄と私の私論なのであしからず。

 

さて、あらためて冒頭の光景。

1200年あまりの時を刻む二つの塔だ。

かつて二つの塔が建ち並ぶ伽藍は多かったという。

しかし、その塔のほとんどが今では消失している。

代表的な光景として薬師寺の双塔を思い浮かべる向きもあろうかと思うが 

今修理中の東塔こそ創建当時の姿だが

西塔は昭和50年代に再建されたものだ。

塔が消失する原因の多くは落雷と戦災だという。

だからこそ、1200年の長きにわたって二つの塔が消失を免れたのは

これはもう奇跡としか思えないのである。

そして、その塔たちが當麻寺で繰り広げられてきた

「不思議」を見届けてきたと思うと

それだけでこの寺に対する愛着が倍加するのである。

 

 

 

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明日香、秋日和

2018-10-13 | 大和路点描

彼岸を挟んだ秋晴れの日、のんびりと飛鳥寺周辺の散策を楽しむことにした。

秋の明日香は昨年以来、二度目となる。

昨年は、いわゆる観光スポットを中心に、広範囲に動いたが、

多少、勝手もわかって来たので、

今回は、何かを見てやろうということではなく、

明日香らしい時間と情景に浸ってみたいと思ったのだ。


 Sony α99  Planar 50㎜ (f/8 , 1/320sec , ISO100) 


いたるころに刈り入れ間近の稲穂が実り、また、畦道には彼岸花が咲き誇っている。

青い空を背景に、目の前には一面緑の稲田、さらに赤い彼岸花のリズミカルなアクセント。

「その中に身を置いてみたい」、誰もが、そう羨む明日香の秋の風景が広がっていた。

 

                                         
                                             Sony α99  Planar 50㎜ (f/1.7 , 1/3200sec , ISO100) 

                                    
                      9月終盤とは言え、まだまだ汗ばむような陽気。

                      また、その週は気ぜわしいことが多く、多少の疲れも残っていたのだが、

                      目にやさしい風景は、その陽気を和らげてくれて、

                      さらに、充分に爽快な気分にもさせてくれた。

 

 

                さて...。

                明日香を訪れたことがある人なら誰もが知っている風景だと思うが...。

                
                         Sony α99  Planar 50㎜ (f/3.2 , 1/1250sec , ISO100) 

          
                秋の草花越しに、なにげなく佇む石碑。

                蘇我入鹿の首塚で、さらに背後に広がるのは甘樫の丘である。  

         

                つまりここは、日本古代史にある「大化の改新」の舞台。

                中大兄皇子(後の天智天皇)、藤原鎌足(中臣鎌子)らによって

                蘇我入鹿が誅殺された、いわゆるクーデターと習ったが、

                最近では、「大化の改新」はクーデター後の治世を指し、

                事件そのものは「乙巳(いっし)の変」と教えているらしい。

                その惨劇があった飛鳥板蓋宮(いたぶきのみや)と伝えられる史跡も

                ここからは目と鼻の先。

                さらに、甘樫の丘は蘇我氏の邸宅があった場所で、

                事件の翌日、入鹿の父の蝦夷は邸宅に火を放ち、自決したと伝えられる。

                その後、天智天皇による専制政治が始まり、

                その子と弟、大友皇子と大海人皇子(後の天武天皇)による権力闘争、

                いわゆる壬申の乱を経て、日本は天皇による中央集権国家へと変遷する。

                いわば、この場所から歴史の激しい動きが始まっていくのだが、

                この長閑な風景を眺めていると、感覚と記憶のギャップというか、

                どこか不思議な思いが行き来するのだ。                         

 

             最後に、飛鳥寺の裏手で出会った華やかな秋の風景を。

             ただし、花オンチ。花の名前は知らない。

                        
                           Sony α99  Planar 50㎜ (f/2.8 , 1/3200sec , ISO100) 

             

             


 

ジョン・デンバーの伸びやかな歌声。

邦題は「緑の風のアニー」。

秋の明日香の風に吹かれながら、この曲を思い出していた。 


 John Denver - Annie's Song  

 

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仏塔のある空 By空倶楽部

2018-10-09 | 大和路点描

「9」のつく日は空倶楽部の日。

     ※詳しくは、発起人 かず某さん chacha○さん まで


奈良からの空倶楽部が続く。

 

再建された中金堂の落慶法要と一般公開を間近に控えた興福寺。

「あいかわらず間が悪い」と完成したばかりの中金堂をうらめしく眺めた後、

振り向いて見上げると、さわやかな秋空に五重塔が映えていた。 

 

その姿、個人的にはどの寺の仏塔よりも勇壮との印象をもっている。

さらに今回、その隅々まで目を凝らして眺めてみたところ、

各階の木組み、やわらかく湾曲した屋根、整然と積み重ねられた瓦、

そして、九輪や水煙の精巧なつくりなど、

その勇壮さの中に、しなやかで洗練された美しさがあることに気づいた。

圧倒的な存在感はもちろんのことだが、

この繊細な造形美こそ、国宝の国宝たる由縁と、あらためて感動した次第だ。

 

ところで。

空倶楽部の今月のお題は「鉄塔と空」。

鉄塔ならぬ仏塔でお題クリアとはならなかった。

鉄塔写真を撮らなかったわけではなかったが、

何せ難題、いずれの出来も秋空に映える五重塔の印象には及ばなかった次第だ。

 



土岐麻子 - Another Star

スティービー・ワンダーのオリジナルは

叩きつけるようなラテンのリズムが体を揺さぶるノリの良い曲。

一方で、こちらのアレンジは土岐麻子の愛らしい声をフィーチャーしたしっとりとしたジャズバージョン。

さわやかな秋空を眺めていたら、ふとこのバージョンが持つ浮遊感を思い出した。

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