「黄金の日日」の話が続く。
大河ドラマの見どころはなんといっても豪華俳優陣。
主人公、呂宋助左衛門を演じたのは市川染五郎、今の二代目松本白鸚だ。
この当時はまだ30代、初々しさが残っていたからだろうか、
周りを名だたる俳優陣が固めていた。
例えば、堺の会合衆(長老たち)として登場したのが
丹波哲郎(今井宗久)、鶴田浩二(千宗易)始め、
宇野重吉、志村喬、津川雅彦など、いずれも貫禄十分の俳優たち。
また、助左を取り巻く女優たちも豪華だった。
助左が慕う女性(今井美緒)を演じたのが栗原小巻。
さらに花を添えたのがデビュー間もない若手の女優たち。
竹下景子、夏目雅子、名取裕子たちの、まだあどけなさが残る表情が微笑ましかった。
一方でベテラン舞台女優、李礼仙の演技は目を引いた。
原作にはない遊女役を妖艶に、またある時は不気味にも演じる彼女は
ストーリーテラーとしての役回りながら強烈な存在感を放っていた。
残念ながら、放映中の11月に訃報のテロップが流れた。ご冥福を祈りたい。
さて、配役のハイライトともいえるのは織田信長と豊臣秀吉だった。
それぞれに高橋幸治と緒形拳が起用されたが、
大河ドラマファンにはうれしい第三作「太閤記」(1965年)配役の再演だ。
奇しくも、私が大河ドラマを見始めたのが「太閤記」。
それ以来、豊臣秀吉は立志伝中の人というイメージが刷り込まれていた。
ところが、最近の秀吉像は晩年の狂気じみた所業など、
誇大妄想の為政者として描かれることが多くなった。
そのイメージを最初に作ったのが「黄金の日日」の秀吉ではなかっただろうか。
軽妙で人なつっこさあふれる木下藤吉郎がやがては無慈悲な独裁者へと変貌する。
徐々に変わる人格を緒形拳が好演した。
そして、秀吉はじめ権力者と対峙するのが堺のリーダーとなった呂宋助左衛門だったが、
本当のところでは、実在の人物ながら、出自も来歴もはっきりとはしていない。
城山三郎は、豪商と伝えられるだけの人物像を
権力に対抗する自由経済都市・堺の象徴として描いたのだと思う。
あらためて、第一話のオープニング。
黄金の日日 1話 オープニング
炎上する堺の映像とともにポルトガル宣教師ガスパル・ビレラの書簡が紹介される。
そして最終回、炎上しても尚、受け継がれる堺の心が描かれる。
見終えた清々しさとともに、堺の心がこのオープニングに集約されていたのか、と思ったりもした。
「黄金の日日」がフィクションと承知の上でのことだが、
今、堺という町への興味が募っている。
このドラマに描かれた当時の町の気質がどこかに残っているかもしれない、と思ったからだ。
暖かくなったら、「堺」を探しに出かけようと思う。
原作本を読みながら、のんびりと。