3月から4月初旬にかけてはサラリーマンにとっては最も忙しい季節のひとつ。
それも先週でようやく一区切りがつき、その解放感をもっと味わいたくて
春の風景を探そうと琵琶湖畔へと出かけることにした。
とは言え、はっきりとした目的もあって、
それは開花期を迎えたノウルシの撮影だった。
ノウルシという聞きなれない名の植物。
それを教えてくれたのは空倶楽部を通じて知り合ったDさんの作品だった。
Dさんは二科会に所属する写真家で
渡良瀬遊水地での自然写真をライフワークにしていらっしゃる。
二科展など何度となくDさんの作品に触れ、その都度に強烈な刺激を受けているが、
その被写体の中でとりわけ惹かれたのがノウルシだった。
ノウルシは湿地に育つ多年草で早春に小さな黄色い花をつける。
Dさんは未明の空を背景にノウルシが息づく姿を生命力豊かに表現されているが、
その様子を直に眺めてみたく、いつかは渡良瀬遊水地へ遠征してみたいとの思いが募っていった。
ところが数年前に、ふとしたことからノウルシが近場の琵琶湖畔でも群生することを知った。
それから琵琶湖での撮影機会を窺っていたのだが
ノウルシの開花時期は案外短く、さらに天候も考慮すると
週末カメラマンにとってそのタイミングを捉えるのは難しかった。
それが今回、長年の思いを叶えるチャンスがようやく巡って来た。
予想される天候も上々。夜明け前の琵琶湖畔を洋々と目指した次第だ。
不測の事態もいろいろとあった。
久しぶりの早朝撮影でカメラ設定など忘れていることがほとんどだったが
何よりもショックだったのは暗闇で近場のノウルシに焦点を合わせること。
今の機材では不可能に近く、あてずっぽうでピントを合わせざるを得なかったが
それでも撮影そのものは楽しく有意義なものだった。
首尾はともかく「来年もまた来よう!」と明るくなった空を眺めながら思ったのである。