一時帰国中の妹夫婦と毎夜楽しい時間を過ごしている。
妹のダンナ「K」はイギリス人。
あるグローバル企業の日本法人で技術者として20年ほど働いていたが、
三年前、定年を機に夫婦でイギリスに帰った。
日本には今でも友人知人が多く、その旧交を温めたいと思うのか、
また、妹にもさみしい思いをさせたくないのか
年に二回は夫婦で日本へやってきて一月ほど滞在する。
その滞在先のひとつが我が家というわけだ。
とにかく社交的、それでいて細やかな気づかいもできる。
それがたくさんの人に好かれる所以だろう。
そして、よく食べてよく飲む。
そんなわけで毎夜のどんちゃん騒ぎがやがて一週間は続いている。
あやしい日本語にあやしい英語で応えながら、
イギリスでの生活ぶりや先方の家族のこと、
最近出かけた旅行のことやちょっぴり政治の話など、
話題は多岐にわたる.
それら話題も決まって落ち着く先があって、それは音楽の話だ。
同年代の K と私はともに古い洋楽(彼にすればただのナツメロだが)が大好きで、
youtubeやディスクなど、音楽映像に歓声をあげながら酒宴が続くのである。
ずいぶんと前置きが長くなってしまったが、
この記事のタイトル『Wembley Or Bust』は K と私が酒宴のサカナにしている音楽ライブのことだ。
ジェフ・リンと彼を支える音楽ユニットELOがロンドン郊外のウェンブリー・スタジアムで行ったコンサートの映像が収録されている。
ちなみにこのユニットはジェフ・リンがかつて率いたバンド『エレクトリック・ライト・オーケストラ』(ELO)とは
別物と捉えたほうが良いかもしれない。
同じ楽曲であってもバンド時代の気負いがまったく感じられない。
メンバーの違いは当然として、ひと年廻ったジェフ・リンによる音楽は
親しみ易さはそのままに、洗練された演奏とコーラスからオトナの雰囲気が伝わってくる。
『Wembley Or Bust』を昨今のワカモノ言葉で表現するなら
「ウェンブリーでやるっきゃない!」もしくは「ウェンブリーに行くっきゃない!」とでもなるのだろうか、
タイトル通り、ステージも観客も大盛り上がり。
ジェフ・リンの50年を超えるキャリアもあって観客の年齢層は高め。
会場は同窓会さながらで、映像を通してもその懐かしさ、さらには
ほのぼのとした雰囲気も伝わってくる。そして、掛け値なしに楽しい。
十代、二十代にジェフ・リンとエレクトリック・ライト・オーケストラの音楽に親しんだ方必見のライブ映像だ。
二時間近い収録のうち、いくつかの曲がyoutubeでも見ることができる。
その中から Evil Woman を取り上げてみた。
Jeff Lynne's ELO - Evil Woman (Live at Wembley Stadium)
さて、私が退職したら、K はイギリス各地を巡る旅に連れて行ってくれるらしい。
それはナロウ・ボートというキャンピングカーのような小さな客船を借りて
運河をのんびりと航行する旅だという。
そして、その旅にジェフ・リンのコンサートも盛り込むそうだ。
そんな夢のような旅が今から楽しみだ。
けれども、気がかりなこともある。
退職まであと二年。そして、ジェフ・リンはすでに75歳。
その時まで元気に頑張っていてくれることを心から祈るばかりだ。