折にふれて

季節の話題、写真など…。
音楽とともに、折にふれてあれこれ。

もうひとつのおわら風の盆 2

2024-09-25 | 若狭 越前 越中

物悲しいおわら節がどこからともなく聞こえ

やがて漆黒の中から嫋やかな女性の踊り手たちが現れる。

さらに衣擦れの音を響かせながら

キレのある男性の踊り手たちが続く。

菅笠を目深に被り、表情を隠した若い男女の

そんな幻想的なシーンを想像し、

さらに、こんなふうに撮ってみたい、と

構図まで勝手に思い浮かべていたのだが...。

 

「もうひとつのおわら」はまったくの別物だった、という話。

 

深夜の町流しをを見たくて訪れた八尾。

ある踊り手にどのあたりを流すのか聞いてみたところ

「どこで踊るのか、僕たちにはわからないのです。

 地方の人たちが決めて、僕たちはそれについていくだけです。」

という答えが返ってきた。

地方(じかた)とは三味線や胡弓を奏でる人たち、それに合わせおわら節を唄う人たちのこと。

撮影の主題と思っていた踊り手の「ついていくだけ」という言葉に

しばらくはその景色を思い描けなかったのだが...

     

これまで見てきたおわらは若い男女が主役だった。

深夜になると主役は少し年嵩の地方や踊り手に変わっていた。

けれども、決してがっかりした訳ではない。

むしろ、かれらが楽しむ姿こそ、

小説「風の柩」に描かれた「おわら」だったに違いない、と納得したからだ。  

 

     

菅笠を被った若い踊り手たちからは観客を意識した

気負いのようなものを感じていたが、

深夜の主役たちからはそんな気配はまったく感じられなかった。

ただ弾きたいから弾く。踊りたいから踊る。

そんな自分たちのおわらを楽しむ人たちに目が釘付けになったのだ。

そこには長年おわらとともに生きてきた円熟味も加わっていたと思うのだが

その円熟味が若い男女にはない凄みとして伝わってもくる。

そして、それこそが「ほんとうのおわら」なのかもしれない、と思ってもいた。

 

     

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もうひとつのおわら風の盆

2024-09-16 | 若狭 越前 越中

越中八尾、おわら風の盆。

風の盆と聞いてまず思い起こすのは、

ゆったりとしたおわら節に乗せて若い男女が踊る姿だ。

そもそも踊りの所作は収穫に感謝するものなのだが、

互いに菅笠で素顔を隠し、艶やかに踊る姿に

見る人は男女の恋に思いを馳せる。

そこにおわら節の物悲しい曲調もあって、

一様に「哀愁を帯びた」と情緒を感じるものなのだが

一方では、若い未婚の男女が掛け合う姿だから、

哀愁を感じつつも華やかさも伝わってくる。

縁あって、そんなおわらを十数年見てきたのだが、

実はそれとは別に見てみたいおわらがあった。

 

十代の頃の話だが。

当時、五木寛之の小説を読み漁った時期があって

風の盆を舞台にした短編小説「風の柩」には

地元の人しか知らないおわらが描かれていた。

その印象がその後も長く心に残ることになったのだが。

深夜、人通りの途絶えた町。

そこにどこからともなく聞こえてくる胡弓の物悲しい音色。

見物客も帰り、踊り手も引き揚げたあと、

淋しい町になった時がおわらには似合う、とあった。

そんな記憶が勝手に作り出したおわらを見てみたかったのだ。

     

「風の柩」が書かれたのはもう50年以上も前のこと。

その時よりも風の盆はずっと有名になった。

今では全国的に注目を浴び、祭の3日間に訪れる観光客は

20万人とも30万人とも言われる。

つまり、深夜になっても、「風の柩」に描かれているように

人が途絶えてしまうわけではない。

けれども、そこには今まで目にしてきたものとは別物のおわらが

確かにあったのだ。

     

続く。

 

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晩夏 夕映え  By空俱楽部

2024-09-09 | 折にふれて

空倶楽部、9月のお題は映り込みの空で

今回は塩屋港(石川県加賀市)の夕映えで参加。

 

さて、タイトルに「晩夏」といれたものの。

確かに暦の上ではそうだったのだが、

今年の夏の暑さで晩夏という季節感がすっ飛んでしまった。

せめて、真っ赤な景色の中にで少しでも季節感を感じていただけたなら幸いだ。

 

 

「9」のつく日は空倶楽部の日。

     ※詳しくは、発起人 かず某さん chacha○さん まで

 

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土用波の風景 By空倶楽部

2024-08-29 | 空倶楽部

台風10号が迷走している。

発生後、間もなくの予報では

北陸への再接近は27日の深夜から28日未明にかけてのことだった。

それから2日以上も過ぎたにもかかわらず

未だに九州の西岸に勢力を保ったまま停滞している。

不可解なのは報道各社が「進路予想がつかない」と伝えていること。

現に当初予報とは違う進路をたどっているし、

そして、今後についても進路予報円が異様に大きい。

気象予報学が発達し、それが防災に寄与している世の中。

しかも日本の気象予報学の発達は台風の進路予想が起点のひとつだったはずだから

不思議な話だと思いつつ、台風10号に関する報道を眺めているのだ。

 

さて、今日は空倶楽部の日。

2年前の三国海岸から土用波の風景を蔵出し。

古くから漁師の間で知られていた土用波が

遠洋で発達する台風の影響だったことが

これも気象予報学の発達でつい最近になってわかったとのこと。

「つい最近」って?! これまた奇異な話だがそれはさておき。

その遠洋で生まれたいくつかの波がたまに重なり合って

通常の波の2~3倍の大きさになることが千波に一波程度の割合であるのだとか。

「これかな?」と、晩夏の夕空とともに掲載した次第だ。

 

 

「9」のつく日は空倶楽部の日。

     ※詳しくは、発起人 かず某さん chacha○さん まで

 

 

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夕映え基地から By空俱楽部

2024-08-19 | 風の風景 光の風景

夕暮れの塩屋港。

ここは「あること」に気づいて以来「空撮り基地」のひとつとなっている。

塩屋港は一級河川の大聖寺川の河口にある。

一級河川と言っても河口の川幅は100mといったところだから大河ではない。

その河口の両側の一方は塩屋の街並みが、

そしてもう一方には森が迫っている。

その地形が影響しているのかもしれないが

この時期に河口に沿って陽が沈み、

夕焼け空に照らされると川面が真っ赤に染まる。

 

つまり「あること」とはこの真っ赤に染まる景色。

ここは「空撮り基地」のひとつであり、また「夕映え基地」でもあるのだ。

 

 

「9」のつく日は空倶楽部の日。

     ※詳しくは、発起人 かず某さん chacha○さん まで

 

 

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