時間のしずく time drops 

たいせつなもの。すきなこと。

「待つ人」 ふたたび。

2014-10-16 | 展覧会・アート のこと



「生誕200年 ミレー展」 初めての府中市美術館へ。

ミレーは、 やっぱり すきだなあ。

わたしの中では特別な、ミレーの一枚の絵が
間もなく開催される三菱一号館美術館のミレー展ではなく、
府中市美術館のミレー展に展示されているということを
ほんのつい数日前に知ることとなり、慌てて行ってきた。

何故、わたしは両方で同じ作品が展示されると思い込んだのだろう?
同じ東京都内という近距離で移動するわけないのにね。

会期終了は一週間後。ぎりぎりセーフ・・・。

その一枚の絵は 「待つ人」

 (図録より)

この絵は、ミレーが故郷を離れ、帰郷することのないまま
亡くしてしまった母親を想って描いたとされている。
聖書のモチーフを用いながらも、家は自分の生家を描いている。
今回展示されていた、ミレーの生家の古い絵葉書をみると
この戸口や石造りの壁がまさにそのままに描かれていることがよくわかる。


前回、この絵を観たのは、わたしがまだ25歳のとき。

ひどくこころを揺さぶられて、この絵の前から離れ難かったことをよく覚えている。

わたしは東京展を、母は京都展をそれぞれ観に行った。

あれから23年・・・

わたしは「母」となり、
わたしのたいせつな「母」はこの世を去った。

23年前、この絵の中の「母親」に自分の母を重ね、
心情を想像して胸が詰まる想いだった25歳のわたし。

もう今では成長した3人の子の「母」として
この絵の母親の想いを
想像ではなく 実感してしまう。

またもや、この絵の前から立ち去り難い気持ち・・・。

展示された作品をじっくり観終えた後にまたこの絵に舞い戻ってしまった。

絵の右側に立って、このお母さんの背中越しに同じ方向を見やる。

オレンジの夕焼けを背に、ちいさな人影がふいに現れはしないか・・・
と、束の間絵の中に入り込んで一緒に 願いたくなる不思議な感覚。

そして、23年前に観た時のまま、
夕焼けが暮れることなく、夕焼けのままに輝いていてくれたことに
なぜだかほっとするわたし。 

もう150年以上前に描かれた絵の中の夕焼けなのだから
当たり前なことなのにね。

今こうして、再びこの絵の前に立てたこと、
再び、同じようにこころを揺さぶられたこと。。。

なにものかに 感謝する想いです。


今回のミレー展。
ミレーの温かい人柄が温度を伴って伝わってくるような
選りすぐりの作品が盛りだくさんの素晴らしい展覧会でした。

 府中市美術館にて、2014年10月23日まで。

 


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